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えんとつ町のプペル 方言版

えんとつ町のプペル博多弁版

2018.01.25 09:12

後編

 つぎん日、ルビッチはアントニオたちにかこまれてしもうた。

「やい、ルビッチ。デニスがかぜでたおれたくさ。

ゴミ人間からもろうたバイキンが原因やろ?」

「プぺルはちゃんと体ば洗うとーばい。バイキンなんてなか!」

「とんだうそばつきやがる! きのうもあんゴミ人間はくさかったろうが。

おまえん家は親子そろうてうそつきたい」

たしかにプぺルん体はいくら洗うてん、つぎん日にはくさくなっとった。

ルビッチにはかえすことばがなか。

「なんでゴミ人間なんかとあそんでんばい。空気ばよめや。おまえもコッチに来んか」


かえりみち、トボトボとあるくルビッチんもとにプぺルがやってきた。

「ねえ、ルビッチ。あそびにいこうや」

「……またくさくなっとーやんか。そのせいで、ぼくはきょう、学校でイジメられたんや。いくら洗うてんくさくなるキミん体のせいで!」

「ごめんよ、ルビッチ」

「もうキミとは会えんばい。もうキミとはあそばん」


それから、ふたりが会うことはのうなった。

プぺルはルビッチと会わんくなってから体ば洗うことものうなり、

ますますよごれてゆき、ハエがたかり、どんどんきたのう、どんどんくさくなっていきよる。

プぺルん評判はわるうなるいっぽうやった。

もうだれもプぺルにちかづこうとはせん。


あるしずかな夜。

ルビッチのへやの窓がコツコツと鳴った。

窓に目ばやると、そこには、すっかりかわりはてたプぺルん姿があった。

体はドスぐろく、かたほうん腕もなか。

またアントニオたちにやられたんやろう。

ルビッチはあわてて窓ばあけた。

「なん、プぺル? ぼくたちはもう……」

「……イコウ」

「なんばいいよっと?」

「いこう、ルビッチ」


「ちょっとまたんね。どげんしたとか?」 

「いそがな。ぼくん命がとられるまえにいかんと」

「どこいくと」

「いそがな、いそがな」


たどりついたんな、ひともよりつかん砂浜。

「いこう、ルビッチ。さあ乗って」

「なんいいよっと、こん船はこわれとーけんすすまんばい」

おかまいなしにプぺルはポケットから大量ん風船ばとりだし、

ふうふうふう、と息ばふきこみ、風船ばふくらましよる。

ふうふうふう、ふうふうふう。

「おいプぺル、なんしよっと?」

ふうふうふう、ふうふうふう。

「いそがな。いそがな。ぼくん命がとられるまえに」

プぺルはふくらませた風船ば、ひとつずつ船にむすびつけていった。


船には数百個ん風船がとりつけられた。

「いくよ、ルビッチ」

「どこね?」

「煙のうえ」

プぺルは船ばとめとったロープばほどいていった。

「ホシばみにいこう」


風船ばつけた船は、ゆっくりと浮かんでいく。

「ちょっとだいじょうぶかい、コレ !?」

こげん高さから町ばみおろすんな、はじめてやった。

町ん夜景はばりきれいやった。

「さあ、息ばとめて。そろそろ煙んなかにはいるばい」


ゴオゴオゴオゴオ。

煙んなかは、なんもみえん。ただただまっくらやった。

ゴオゴオちゅう風ん音にまじって、プぺルのこえが聞こえる。

「しっかりつかまるくさ、ルビッチ」

うえにいけばいくほど、風はどんどんつようなりよった。


「ルビッチ、うえばみてごらん。煙ばぬくるばい! 目ば閉じたらつまらん」

ゴオゴオゴオオオオ。

「……父ちゃんなうそつきじゃなかった」

そこは、かぞえきれんほどん光でうめつくされとった。

しばらくながめ、そして、プぺルがいわした。

「かえりはね、風船ば船からハズせばよか、ばってん、いっぺんにハズしちゃつまらん。

いっぺんにハズすと急に落っこちてしまうけん、ひとつずつ、ひとつずつ……」

「なにいってんばい、プぺル。いっしょにかえるっちゃろ?」

「キミといっしょにいるんは、ここまでばい。

ボクはキミといっしょに『ホシ』ばみることができてほんとうによかったばい」


「なんいいよっとか。いっしょにかえらんね」

「あんね、ルビッチ。キミが失くしたペンダントば、ずっとさがしとったんよ。

あんドブ川んゴミはゴミ処理場にながれつくけん、

きっと、そこにあるとおもったったい」


「ぼく、ゴミ山で生まれたゴミ人間やけん、ゴミばあさることには、なれっこなんや。

あん日から、まいにちゴミんなかばさがしたんやけど、ぜんぜんみつからんで……。

十日もあれば、みつかるとおもったんやけど……」


「プぺル、そのせいでキミん体は……ぼく、あれだけヒドイことばしてしもうたのに」

「よかよか。キミがはじめてボクにはなしかけてくれたとき、

ボクはなにがあってんキミん味方でいようと決めたっちゃん」

ルビッチん目から涙がこぼれた。

「それに、けっきょく、ゴミ処理場にはペンダントはなかった。

ボクはバカやったばい。

キミが『なつかしかニオイがする』ていったときに気づくべきやった」

プぺルは頭んオンボロ傘ばひらいた。

「ずっと、ここにあったとよ」


傘んなかに、銀色んペンダントがぶらさがっとった。

「キミが探しとったペンダントはココにあった。ボクん脳ミソさ。

なつかしかニオイんしょうたいはコレやったんやなあ。

ボクんひだり耳についとったゴミがのうなったとき、ひだり耳が聞こえんくなった。

同じごと、こんペンダントがのうなったら、ボクは動かんくなる。

ばってん、こんペンダントはキミんもんや。キミとすごした時間、

ボクはほんとうにしあわせやったばい。ありがとうルビッチ、バイバイ……」

そういって、プぺルがペンダントばひきちぎろうとしたときやった。


「つまらん!」

ルビッチがプぺルん手ばつようつかんだ。

「なんしよっとか、ルビッチ。こんペンダントはキミんもんや。

それに、こんままボクが持っとっても、そのうちアントニオたちにちぎられて、

こんどこそほんとうにのうなってしまう。

そげえしたらキミは父さんの写真ばみることがでけんごつなる」

「いっしょに逃げればよかやんか」

「バカなこというもんじゃなか。ボクといっしょにおるところばみつかったら、

こんどはルビッチがくらわさるかもしれんぞ」

「かまわんばい。痛みはふたりでわければよか。せっかくふたりいるっちゃろ」


エンディングに続く……