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【2022年夏特集】④地下水を空調等の熱源として利用するシステムの運転管理を効率的に~東邦地水

2022.07.12 04:05

◆東邦地水:自動逆洗技術により還元井の目詰まりを防止する地下水循環型地中熱利用冷暖房システムを開発◆

◆環境省2021年度ETV事業実証報告書の承認受け、ETVマーク取得◆


地下水を空調等の熱源として利用するシステムの運転管理を効率的に――。三重県四日市

市に本社を置き、地中熱・地下水熱利用システムの普及に取り組む東邦地水(三重県四日

市市東新町2番23号、伊藤重和社長)は、「自動逆洗技術により還元井の目詰まりを防止

する地下水循環型地中熱利用冷暖房システム」を開発。このシステムが、環境省の2021年度の環境技術実証事業(ETV事業:気候変動対策技術領域 地中熱利用システム技術区分)に基づき実証が行われ、このほど実証機関であるNPO法人地中熱利用促進協会が実証報告書として取りまとめ、環境省に同報告書が承認されました(実証番号052-2101)。地下水の熱利用で課題である井戸の能力低下を解消する逆洗(逆流洗浄の略:水の流れを一時的に下流側から上流側に流すことで、ろ材に溜まった汚れを洗浄する)技術の自動化を確立し、地下水熱利用システム導入のハードルを下げる技術として注目されます。

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◆手間がかかる井戸の逆洗を自動化して運転管理をしやすく◆


年間を通して水温が一定の地下水を熱源にする空調システムは、熱交換効率が高く、省エネ効果が大きいことが知られていますが、地層の透水性や地下水の水質によっては、特定の還元井(地下水を地下に戻す井戸)で還元を続けると目詰まりを起こして還元できなくなるほか、揚水した地下水を地上に放流すれば処理費用の負担や放流水による環境問題の原因にもなる可能性があります。さらに、還元がスムーズにいかなければ地下水が減少して地盤沈下の一因にもなりえる点も課題とされています。


このため、地下水の熱利用では、“いかに地下水を還元するか”がポイントの1つになります。


還元井戸の目詰まり防止には逆洗が効果的ですが、逆洗を適切なタイミングで実施するためには、人手による継続的な状況観察と逆洗装置の運転操作が必要で、手間がかかる点が課題になっていました。


こうした課題を解消するために同社は自動逆洗技術を組み合わせた地下水熱利用システムを開発。


◆冷房期間のSCOPは3.91、暖房機関のSCOPは3.97…目標とする性能を超える試験結果◆


「地下水熱利用による冷暖房の省エネとそれによるCO2排出量削減」と「自動逆

洗技術による還元井の目詰まり防止による地下水保全とコスト削減」を技術の目的とし、同社本社に導入。「自動逆洗技術により還元井の目詰まりを防止する地下水循環型地中熱利用冷暖房システム」全体として冷房期間のシステムエネルギー効率(SCOP) 3.3以上、暖房期間のシステムエネルギー効率(SCOP)2.2以上を目標に同社本社屋で実施。(コスト削減は実証の対象外)


その結果、冷房期間のSCOPは3.91、暖房機関のSCOPは3.97となり、目標とする性能を超える試験結果となっています。


◆実証で自動逆洗の効果も確認◆


また、自動逆洗技術の確認については、実証報告書において「目詰まり発生を示す強制排水量の発生はなく、また目詰まりが発生した時に起こる還元井の水位の急上昇もなかった」とされ、「これにより目詰まりが発生していないことが確認され、自動逆洗技術の効果が確認された」と評価されているほか、地下水保全の観点からの確認でも、「観測井での水位モニターによる異常な水位低下等はなかった」と評価されています。


実証での逆洗運転プログラムは、システム稼働時間が72時間を超えない範囲で逆洗を行うため、システムの累積稼働時間が48時間を超えた翌日の午前3時に逆洗運転を行うもので、逆洗運転は揚水ポンプの最大流量(100L/min)で、(10分×5回+インターバル10分×4回)の90分間実施。逆洗運転の後には揚水井と還元井を交換し次の逆洗まで交換後の配置で運転。逆洗中に揚水した地下水は目詰まり物質を含み大気に触れていて目詰まりしやすい水質であるため、還元井に戻さず下水等に排水することとしています。下水等に排水する地下水の量は5kL(100L/minで50分間)であり、72時間の揚水量170kL(40L/minで72時間)を全量排水することに比べると非常に少なく、環境への影響は極力抑制したものになっています。なお、自動運転プログラムは実証を実施したサイトに適用するもので、地域が変われば「72時間」や逆洗の最大流量等の自動運転プログラムも変わるものとしています。


◆実証機関による考察◆


実証機関による考察によると、『技術としての新規性』については、「地下水をくみ上げて利用する場合、地層の透水性や地下水の水質によっては、特定の還元井で還元を続けると目詰まりを起こして還元できなくなり、揚水した地下水を地上に放流すれば放流水による環境問題の原因ともなり、また地下水が減少して地盤沈下の原因ともなる。本実証対象技術はこの還元井の目詰まり問題を逆洗の自動化により解決する手法と装置を一体化したものであり、新規な技術である」と評価されています。


『期待される導入効果等』については、「この技術は地中熱利用に限らず揚水・還元を伴う全ての地下水利用に適用できるものであり、その適用可能範囲は広く、大きな導入効果が期待できる」と評価されています。


『比較可能な技術に対する優位性(経済性等)(実証対象外)』については、「目詰まり防止には逆洗が効果的なことは従来から知られていたが、逆洗を適切なタイミングで実施するためには人手による継続的な状況観察と逆洗装置の運転操作が必要で、手間がかかる仕事である。本技術はこれを自動化したことにより、その手間を省くことが可能になった。また、還元井は一度目詰まりを起こすとその回復には掘削機等の機材を用いた工事が必要となり多大な費用がかかるものである。本技術はこれらの費用を大幅節減するので経済的効果は大きいと考えられる」と評価されています。


『技術開発の可能性』については、「本技術は逆洗後に毎回揚水井と還元井を交換することを標準手順としている。毎回交換する標準手順は目詰まりの危険性を極小にするためであるが、本試験で確認したように定期的に逆洗を実施すれば逆洗後に毎回井戸を交換する必要はなく、交換頻度を減らせば冷暖房のエネルギー効率(COP)を向上できる。揚水井と還元井の交換は冷房と暖房の切り替え時に行うのが最適と考えられるので、目詰まり防止と高いエネルギー効率を両立させる井戸交換のタイミング設定の技術開発をさらに進めれば高い効果が期待できる」と評価されています。


さらに、『普及拡大に向けた課題』については、「本技術を普及拡大するためには、適用する場所の透水性や水質の特性に応じた最適な逆洗運転プログラムを設定するノウハウが重要である。透水性と水質に応じた運転プログラムを設定するためのノウハウの改善が課題と考えられる」とされています。


同社は今後、実証で挙げられた課題に対応すべく、引き続き技術のブラッシュアップを図っていく考えとしています。

(記事中写真、図は東邦地水提供)


地下水還元の課題を克服した同技術は、地下水の利用が可能な地域で地下水熱利用システムの普及拡大を加速させる可能性を秘めており、今後の展開が注目されます。

環境省の報道発表:https://www.env.go.jp/press/111131.html

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