『僕』とレナ② ※一部性的表現あり
僕とレナさんは、それからよく会うようになった。
レナさんに言わせると僕は「私服がダサい」そうで、ちゃんとすればかっこいいのに、と言って服を選んでもらったこともあった。
僕らの仲はどんどん深まっていった。
ある日ショッピングのあと二人で居酒屋に入った。
一緒にお酒飲むのは初めてだった。嬉しいけどなんだか緊張する。
「僕くん何飲む?」
「うーん、お酒飲むの久しぶりだなあ。ビールにしようかな」
「ふふ、私も久しぶりなんだ。同じビールにする」
僕たちは生ビールを頼んで乾杯をした。
「ぷはー!美味しい!やっぱり冷えた生ビールは美味しいね。しかも、僕くんと飲むビール。」
レナさんはリラックスしているようで、そんなことを言う。表情もいつもより柔らかい。
「僕と飲むビールおいしい?」
ドキドキしながら笑って聞き返すと、レナさんはえくぼのあるあの笑顔になった。
「すごく美味しい。なんだか、嬉しくってさ。僕くんとずっと飲みたかったから。」
何でそんなこと言うんだろう。
僕はうれしいのに泣きそうになった。何で僕に、そんなこと言ってくれるの?
「僕くん?大丈夫?ほら、好きなもの食べようよ」
レナさんにメニューを見せられながら顔を覗き込まれてハッと我にかえる。
まったく、レナさんといるとこんなこと繰り返してばかりいる。
そんなこんなで僕たちは大いに飲んで、好きなおつまみを食べて、本当に楽しく一緒に過ごした。
そろそろ帰る時間になったころ。
「僕くん、今日も帰る家はないんでしょ?海辺で寝るの?」
「うん、今日は浜辺のテントで寝るよ」
「ねぇ…それならさ、その…」
珍しくレナさんがモジモジして顔を赤らめている。
「うちに来ない?今日家族出かけてて一人なの」
お酒でぼんやりする頭にレナさんのセリフがエコーがかって響いた。
う ち に こ な い ?
「変な意味じゃないからねっ…!たまには家でゆっくり寝てもいいんじゃないかなって…い、嫌ならいいから!」
僕は夢でも見てるんじゃないか。
目の前で照れてふてくされたように唇を尖らすレナさん。
僕を、家に誘ってくれてる…
酔っ払ってる力も借りて、僕はいつもより何倍も気が大きくなってる。
「嫌じゃないよ。すごく嬉しい。レナさんの家にお邪魔させてもらうよ」
僕は手を伸ばして、向かい合ったレナさんの頭を撫でた。
「ありがとう」
普段こんなことできないくせに。…お酒のせいだ。
撫でられたレナさんは潤んだ目を細めた。
例えようのないくらい色っぽくてかわいい。僕はもう、彼女を抱きしめたくて堪らなかった。
きっとそんな気持ちが顔に出ていただろう。どんな浅ましい顔してるかとたまらなく恥ずかしかったけど、どうしようもなかった。
僕の思惑も決意も全てが、敗北した瞬間だった。