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嶺井正也の教育情報

『小学校等における医療的ケア実施支援資料

2022.07.14 02:36

 ~医療的ケア児を安心・安全に受け入れるために~』

https://www.mext.go.jp/content/20220317-mxt_tokubetu01-000016489_1.pdf


第7章 血糖値測定・インスリン注射

1 糖尿病とは

  糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病の2つの種類がある。1型糖尿病は、主に自己免疫異常により膵臓のβ細胞が破壊されて、インスリン分泌機能が半永久的に失われてしまった状態であり、小児期での発症が多く、インスリンを体外から補給しない限り、主たる栄養素であるブドウ糖を吸収できず、生命維持に影響を及ぼす病気である。一方、2型糖尿病は、遺伝要因と食事摂取過多や運動不足などの生活習慣が原因とされ、インスリン分泌機構に問題はないが、インスリンに対する抵抗性が増した(効果が弱まった)状態となり、相対的なインスリン不足を引き起こし、高血糖となる。

 インスリンは食事以外の時間帯でも、常に一定量が膵臓から分泌されており、これを「基礎分泌」という。それに対して、食事摂取時に血糖値が上がった際、それを感知した膵臓のβ細胞からインスリンが大量に分泌される「追加分泌」がある。人体は、この2種類の分泌機能で血糖の異常増加を防ぎ、恒常性を保っている。

 治療方法として、作用時間が異なる2種類のインスリン製剤を使い分けて注射することで「基礎分泌」と「追加分泌」を補う「頻回注射療法」(Ⅶ-図-1)と、超速効型インスリン製剤をあらかじめ設定した速度で皮下へ持続的に注入(Ⅶ-図-2)することによって「基礎分泌」を補うとともに、食事摂取時に追加のインスリンを注射(Ⅶ-図-3)し「追加分泌」を補う「持続皮下インスリン注入療法」の2種類がある。

 多くの場合、各食事の前に血糖測定が必要となり、自らが専用機器(Ⅶ-図-4)を用いて、血糖を測定する検査方法を血糖自己測定という。血糖自己測定は、日常生活管理やインスリン投与量の調整、体調不良時の対応として非常に重要な手技である。

  *図は文末にある


2 教職員が教育活動を行うに当たって留意すること

・学校では、対象となる子供の朝食の摂取状況や、活気がなくなっていたり、言葉数が少なくなっていたりしていないかなどの状態を観察する。

・学校では、主に昼食前に皮下注射を行うこととなる。その際には、他の児童生徒の目を気にすることなく、安心して注射できる場所を確保する。

・持続皮下インスリン注入療法の場合、注入器本体を常に携帯(注入器とつながるチューブ先端部が皮下に刺入されている)しなくてはならないが、頻回注射療法と比較し、他者の前でインスリン製剤注射を行う必要がなく、主たる治療方法として選択する患者は増加している。本体及びチューブは1時間程度であれば取り外せるため、例えば、体育の授業(水泳を含む)の参加も可能であるので、事前に医師や看護師等、保護者と対応について確認しておく。

・体外からインスリン注射を行うため、例えば、嘔吐時や喫食時間の遅延などにより、予期せぬ低血糖症状に陥る危険性があるので、あらかじめ医師に対応を相談したり、緊急時に保護者や保護者を通じて医師と対応を確認し合ったりするなどして、速やかに補食できるような体制を構築しておく。


看護師等が医療的ケアを行うに当たって留意すること

~ 血糖値測定・インスリン注射編 ~

・皮下注射製剤の注射部位は、吸収率の面から主に腹壁を選択することが多いが、子供によって各々穿刺しやすい場所が異なり、大腿部や上腕部に注射を行う場合もある。

 近年ではインスリンポンプと連動しながら、自動的に血糖データを記録する皮下連続式グルコース測定、持続血糖モニターなども開発され、多くの子供で使用されている