バルミューダが教えてくれた物語の大切さについて
カチカチという音がたまらない。
先日我が家にやってきた彼は、毎朝カッチンカッチンと音を立てながら、わずか5分弱でふわふわカリカリのトーストをこしらえてくれる。
私はそこにハムや卵などお好みのトッピングを乗せて、コーヒーやヨーグルトをお供に、にやにやしながらパンをほおばる。幸せな朝食の時間だ。陽がポカポカしているとなおさらいい。
たまにクロワッサンにも挑戦するが、これもやばい(語彙力のなさがやばい)。パンを買ってからそこそこ時間が経っていようとも、彼にとってはまるで関係がない。スチームテクノロジーの魔法で、あっという間に香りと食感が焼きたてのような最高のクロワッサンに出会うことができる。
そうそう、彼の名前は、BALMUDA(バルミューダ)という。うーん、名前まで格好いい。
そんなバルミューダくんには、パンを焼く前に付属の小さなコップで水を入れなければならないという一手間がある。詳しくは使い方を見てほしいが、それは一手間と呼ぶのがおこがましいぐらい小さな小さな作業である。
でも、極度の面倒くさがり屋の私にとっては、その作業はやっぱりちょっとだけ面倒くさかった。「それを面倒くさがるってどうなの」とそれを言った全員から言われるから(周りに愛用者が多いのだ)、多分私だけの問題なのだろう。なんかすみません。
でも、そんな私が心機一転、水を入れるのが楽しみになるという日がやってきた。予想外の事態に株価も変動する勢いだ。実際するかどうかは定かではないが(多分しないが)、自分の中ではそのぐらいの驚きだったということを表現したかっただけである。
はたしてそんなことがなぜ起こり得たのか。
その鍵はバルミューダくんの出生に隠されている。皆様は彼がなぜ生まれたのか、ご存知だろうか。答えはHPに書いてある。読んでみてくれ、だと勿体無いから、ここでご紹介したい。それはバルミューダ社の社長の寺田さんの物語である。冒頭、寺田さんはこう前置きする。
BALMUDA The Toaster が完成するまでの道のりは、発想の原点となった体験から数えると約20年にも及びます。ある思いから製品つくりがはじまり、途中で意外な発見もありました。 その工程を間近で見てきた私が直接、ご紹介します。
20年!歴史がすごい。そんな壮大な物語のはじまりを見てみよう。1991年、寺田さんはスペインのある町に居た。
私が高校を中退して放浪の旅に出たのは、17歳のときでした。スペインやイタリア、モロッコなど、地中海沿岸を約一年間、一人でまわりました。とても楽しく、寂しく、刺激的だった忘れられない旅です。 その初日のこと。 日本から飛行機や列車、バスを乗り継ぎ最後は徒歩で、目的地のロンダにたどり着きました。私は緊張からかあまり眠っておらず、疲れきっていて、かつ空腹でした。街角では香ばしい香りがしていて、探してみると一軒の地元のベーカリーが。話せないスペイン語で焼きたてのパンを分けてもらい、一口かじった時、涙が溢れるように出てきました。緊張や疲労、そして希望と不安。香ばしいパンを食べた時、これらの感情が堰を切ったように体の外に出て行ったのです。 あの時の小さなパン。その香りと味は、今でも忘れられません。
忘れられないパンの味。これこそがバルミューダくんの原点なのだ。たしかに彼のパンも、一度食べてしまったら、なかなか他のトースターに戻れないよね。忘れられない味だ。
そして、ここからが重要である。語られるバルミューダくんの開発秘話。カリカリふわふわの魔法の食パンの秘密は、とある日のバーベキューに隠されていた。物語の続きを追おう。
2014年の5月の事。私たちは、社に程近い小金井公園でバーベキュー大会を開きました。その日は朝からありえないくらいのどしゃ降り。中止も考えましたが、思い出になるからという理由から決行。全員でびしょ濡れになりながら肉を食べ、本当に思い出になりました。 その時、研究心に富んだ開発チームは食パンを持ってきて、肉のかたわらで炭火で焼き始めたのです。そのトーストのおいしさはほぼ完璧。表面がパリッとして中に水分が十分に残っていました。この味を再現できればバルミューダトースターができる! と次の日から再現実験を始めました。しかし、いっこうに再現できません。炭が違うのか、火の距離が違うのか、グリラーが違うのか。試行錯誤を続けていた時、誰かが言いました。「あの時、すごい雨が降ってましたよね?」そう、答えは水分だったのです。
はい!勉強犬、水、入れまーす。
というわけで、バルミューダくんの物語が、私の行動を変えたというお話でした。
そういえば、生徒たちにも「面接では具体的に話すこと。それにはエピソードが効果的。人ってさ、人が物語を話すと聞いちゃうんだよ」って言うもんな。やっぱり物語には大きな力がある。
最後にちょっと塾ブログっぽいことも伝えておこう。ご覧の通り、「面倒くさい」なんて気持ちは、物語一つで簡単に変えられる。もしも「勉強が面倒くさい」って言うあなたに届くなら、こんな言葉を投げかけよう。
物語を知れ。それは例えば、君が主人公の物語のことだ。
あなた自身の物語に勉強がどう関わるのかを知れば、きっと「面倒くさい」を越えて、手が動くよ。それは君のストーリーに必要な困難で、ドラマを盛り上げる山場で、ハッピーエンドのための粋な伏線かもしれない。
君の勉強に物語を。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
色んな意味でありがとう、バルミューダくん。