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アマゾンを救うために愛を

2018.02.02 10:40

世界最大の熱帯雨林は、私たちが親しみを感じれば感じる程、それを救うチャンスは大きくなるとカリナ・モットーは信じている。

翻訳:斉藤孝子

アマゾン熱帯雨林は世界最大の森林であり、地球の気候調節に極めて重要な働きをしています。それを守る必要性は疑いようもありませんが、その環境的な役割のために守るだけでなく、森林を生き生きした状態に保つ努力が必要です。

 森林とそこに生息する全ての生命には、私たち人間と同じくらい生きる権利があります。これに気づけば、森林破壊を減らす解決策を見出そうとする中で、滅多に語られないことに目を開かされるでしょう。つまり、森林と精神的なつながりをもつことの重要性です。私たちの多くは、この母なる地球という生態系に対し、まだ深い感謝や畏敬の念を抱くに至っていません。しかし森が与えてくれる環境的役割ゆえの保全に重きを置きすぎると、それが妨げになることもあります。

 シューマッハーカレッジのアーストーク (Earth Talks) で、作家チャールズ・アインシュタインはこう語りました。「理屈でいえば、もし私たちが自然に代わる物をなんらかの方法で見つけられるなら、アマゾン熱帯雨林をケアする必要などありません。私たちが今すぐ起こさなければならない変化とは、それより遥かに大きく、そしてそういう奥深い変化、勇敢な変化は、愛からしか生まれません。」

 自然との一体感は、環境問題を扱う上でとても重要です。エモーショナル・アフィ二ティ・トワード・ネイチャー (EATN: Emotional Affinity Toward Nature) のコンセプトによれば、自然と一体感を感じれば感じる程、自然を大事にする行動をしたくなります。もちろんこれは地球上どこでも同じですが、今はアマゾンの例を続けましょう。

 学位論文「アマゾンとのリコネクト: 熱帯雨林への深い感情に目覚める旅 (Reconnecting with the Amazon: a journey of awakening deep feelings for the rainfores)」ー シューマッハーカレッジ (Schumacher College) のホリスティック・サイエンス (Holistic Science) で理学修士として執筆 ー を書くためのリサーチをする中で、アマゾンに対し昔から主に2つの見方があるという研究を見つけました。1つは、アマゾンはエキゾティックで魅惑的だというもの。もう1つは、危険で人を寄せ付けない、というものです。

 これは16世紀に現地に到達した欧州の探検家、科学者、博物学者たちの考えでした。彼らの観察は、被植民地時代及びその後のブラジル文化や教育に吸収され、人々と熱帯雨林がつながることより、分離する方向に働きました。ブラジル政府は1960年代以降ずっとアマゾン一帯を開発する必要性を強調してきました。

 そのような既成概念が根強く続く中で、アマゾンは消失しつつあります。2013年には、森林破壊総面積は762,979 平方キロメートルでした。これがどんなことかを理解する手立てに、科学者アントニオ・ノーブル (Antonio Donato Nobre) が科学アセスメント「アマゾンの未来の気候リポート (Future Climate of the Amazonia)」で、こう説明しています。時間で考えると、この数は驚嘆に値します。つまりサッカー場が、1日当たり12,635個分、1時間当たり526個分、1分当たり8.8個分=36,291平方キロメートル、1秒当たり平方キロメートル、という勢いで過去40年間以上、休む事なしに失われてきたということです。

 私がリサーチで探求したかったのは、人々のアマゾンに対する理解が大きくなれば、このシナリオはどう変わって行くだろうかということでした。人々は、行動を起こすことにもっと関心を持つだろうか、あるいは、少なくとも森林破壊の最大原因である牛肉の消費を減らすだろうか? です。答えは多分「はい」でしょう。

 ホリスティック・サイエンスとは気づきやつながりをより促す道です。主流サイエンスは、可視的で名づけることができ説明できることの数量や証明に集中する一方、ホリスティックはその先を見て新たな考え方を呼び起こすものです。

 ガイア理論により、アマゾンの森林は自己調整有機体、つまりそれ自身が生き物であると考えてよいでしょう。汎心論 [あらゆるものが心的な性質を持つとする世界観]、つまり心と事象を区別しない哲学を学べば森林自身が心を持つと結論づけられるでしょう。

 「自然は、事象であるだけでなく魂でもある。」と、ユングは、その著書「地球には魂がある (The earth has a soul) 」に記しています。これを受け入れると、アマゾン熱帯雨林への私たちの感じ方、ふるまい方に、深く倫理的な変化が起こるでしょう。

 私たちには、このより深い一体感を育てる時間はあまりありません。人類は既にアマゾンの20%を失ってしまいました。40%前後になれば、アマゾンの自己再生力は機能しなくなります。砂漠になるでしょう。

 「アマゾンは極めて特別で他に類を見ない唯一無二のものです。それを失うことは、まさに、母なる源、神との関係の真髄を失うことです。」とスピリチュアル論者マシュー・フォックス (Matthew Fox) は言います。「私にはアマゾンを訪れる特権がありました。それはとてつもない幸運です。森は私たちを愛してくれます。私たちの気持ちの何が森を愛するのを阻むのでしょう?」 偏見、あらゆる類いの怖れ、野望、お粗末な教育、精神的つながりの欠如等も確かに答えの一部です。

 この母なる地球という生命体と私たちの関係がいかに表面的であるかという例をもう一つ挙げましょう。アマゾンについてふつう学校で学ぶことは何でしょう?いくつか例を挙げると、面積は690万平方キロメートルで南アフリカ大陸の9つの国にまたがっているとか、地球上にある真水の1/3を保水しているとか、その流域は600万平方キロメートルに及ぶなどです。

 アマゾンを説明するのにそんな数字がよく使われますが、そういう情報で私たちの心にどんな感情が目覚めますか? 私は、学位論文執筆中に、私たちは表面的なことに留まっていると判断しました。アマゾン熱帯雨林は、そんな数字などで表せるものではありません。「アマゾンは、生きて呼吸する繊細で広大な心なのです。知的で敏感で非常に賢いのです。」とは、環境論者であり哲学者であるデビッド・アブラム (David Abram) の弁です。

 私たちはどこにいようとアマゾンとつながれます。エドワード・O・ウィルソンが提唱した生物自己保存能の仮説は、人は生まれながらにして自然への従属性が備わっていると断言しています。私たちは別々の存在ではなく、内的につながっており、つまり従属していて、「知っている何か」が、一人一人の心の中にあるのです。私たちはこの従属性を持って生まれて来ます。そして、アマゾンは自然界の見事な具現として在るのです。

 以下をやってみて下さい。自然の中で静かな場所に座り、今いる場所と一体になり、そして熱帯雨林について考えて下さい。森が死につつあること、四六時中死に追いやられていることを思い出して下さい。そして森に愛を送り、それがあなたの中でどう感じられるか考えて下さい。

 サティシュ・クマールは、昨年初めてアマゾンを訪れたにも関わらず、それ以前に、私にこう言いました。「私たちが、森や動物、人々、そしてアマゾンの全生物を愛するなら、私たちは全地球と一体になれます。それらは地球の心です。自然やアマゾンを愛する気持ちがない限り、どんな科学も知性も哲学的命題も用を成しません。アマゾンへの精神的一体感が最も基本的なアプローチです。

 ステファン・ジェイ・グッド (Stephen Jay Gould) は、その著書「8匹の子豚: 自然の歴史における更なる考察 (Eight little Piggies: More reflections in Natural History)」でこう書いています。種の保存や環境保全の闘いに勝つためには、私たちと自然との精神的一体感が必要です。「というのは、私たちは、好きでないものを救うために闘うことはしないが、何か抽象的な感覚で真価を認めるから。」

 アマゾンへの愛、慈しみ、感謝、そして畏敬の念を感じるべき時です。私たち自身の意識を目覚めさせる時であり、そのためにとるべき道は、アマゾンについての新しい教育、単に数値的情報を与えること以上に興味づけする教育に投資することです。想いを寄せる時です。つながる時、守る時です。望みを託す大きな理由です。これが、今、熱帯雨林を生き生きと保全するため、そして後に続く世代のための鍵です。

カリナ・ミオッテ (Krina Miotto) : 環境ジャーナリスト、ディープエコロジスト、ホリスティック科学者。人々とアマゾン熱帯雨林を精神的に結びつけるプロジェクト、Reconexão Amazônia のリーダー。

Article - We Need Love to Save the Amazon • Karina Miotto

Why we need to make an emotional attachment to conservation

306: Jan/Feb 2018