『W旦那+(プラス)』第121話 三代目妄想劇場
2018.01.27 23:00
それから小一時間ほどが過ぎ、
「理愛の店」の扉を開け、慌ただしく隆二と直己が入ってきた。
「理愛ちゃん!がんちゃんは?」
理愛はワンピースの上にコートを羽織り、奥の部屋から出てきた。
何事もなかったように…夢のごとく佇んでいる。
理愛「オーナー、どうかされたのですか?」
「がんちゃんは?」
隆二がそう問いかけるのと同時に奥の部屋の扉が開き、コートを羽織った剛典が出てきた。
隆二「がんちゃん…無事だった?」
剛典「え?…なにかあったの?」
ハッとして隆二は言葉を飲んだ…
悪魔の存在すら、剛典には告げてない。
隆二「あ…いや、二人一緒ならそれで…」
理愛「コーヒーをお出ししてました」
理愛はそう言って、シンクの中にコーヒーカップを置いた。
隆二「そっか…」
隆二がしげしげと剛典の顔を見る。
特に生気をなくしていることもない。
直己も、洗い物をしている理愛の顔を目を細めて見ている。
洗い終わったコーヒーカップを、隣にいた剛典が受け取った。
直己はその隙に隆二の耳元で、
「あの子、何も憑かれてなさそうだ」と告げた。
隆二「そうですか…良かった」
(がんちゃんも無事だったし…)
くんっ…と隆二が鼻を鳴らした。
(あれ?シャワーしてきたのに、まだ栗の花の匂いがする…)
隆二がカウンターの中へ目をやると、剛典と理愛は何気に見つめ合っていた。
サキュバスは完全に去ったようで…
時を待たずして、理愛の身元が判明した。
End