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直販農家のマーケティング思考とは|直販農家のためのFun×Fanマーケティング講座①

2018.01.28 23:00

皆様、こんにちは。大平恭子です。


「直販農家のための、Fun×Fanマーケティング講座」は、今までの実践や講演セミナー内容、指導アドバイス事例を連載ブログ形式でお届けするものです。本編の1回目は、「直販農家のマーケティング思考」について。活動の前提となる考え方や視点についてお伝えしたいと思います。


 私がブランドストーリーとして「食と農を繋ぐ」活動をスタートさせた10年前頃は、生産・流通・消費が分断化され、農家が価格決定に関われない現状であったと記憶しています。今はその頃に比べ、農業や作り手である生産者と食べ手である生活者との距離は縮まっているように感じられます。例えば、週末ごとに様々なところでマルシェが開催されたり、小ロットでもお客様を発掘し配送できるシステムが登場したり。テレビやラジオ、雑誌等でも産地や生産者が主役となって紹介される機会が増加するなど社会的な機運も高まってきています。


 一方、コンサルティングの現場では、農産物であれ、農産加工品であれ、「何を作るか(商品開発)」「どこで売るか(販路形成)」そして「どのように広げるか(販路拡大)」の課題や相談が絶えません。生産者ご自身の「送り手」としての視点でいうと、生産者としての「こだわり」でいいものを作れば自然に売れていく、とお考えになる方も少なくないのですが、実際にはその通りの場合もあるし、そうでない場合もあります。


◆「販売志向」と「顧客志向」


 ひとつ「りんご」を例にとってみましょう。


 「農産物」としてのりんごの「価値」には、ビジネスパートナーとして青果市場や流通バイヤーが大きな影響を及ぼしている場合が多いです。例えば、大きさや色合い、蜜入り具合、糖度、栽培方法や品種特性や希少性、出荷時期等々を巧みに計算し、他にはない農産物としての「価値」を作り上げていきます。そこで生産者に求められるのは、品質の均一化、「モノ」としての基準です(もちろん安全安心おいしいを前提に)。また、作ったものをどのようにして売るかという視点に立ちますので、「販売志向」ということもできます。

 一方、「食べもの」としてのりんごの「価値」は、受け取る人や使う人の視点によって異なります。例えば、贈答用では大きいものが好まれていても、単身者の自家用となると「余さない食べきりサイズ」を求められ、サスティナブルな社会と健康に関心が高い方は、「皮ごと食べられる農薬不使用のもので。理念に共感できる生産者さんと繋がりたい」とお話になります。ここで生産者に求められるのは、私(買い手)にとって魅力的と思う「コト」であり、それによって、自分の生活や気持ちがどう満たされるか、です。仮に前者を「販売志向」というのであれば、後者は「顧客志向」となり、「リンゴ」を通じて、その価値に共感する顧客を増やし、関係性を深めることによって独自性が高く有益な活動が可能になっていきます。


◆直販農家のマーケティング思考とは?


 さて、この連載で直販農家を「生活者と直接繋がり販売する農家」と定義づけています。‘直販’は、農産物そのものの場合もあるでしょうし、6次化関連でいえば農産加工品もあるでしょう。そしてそのマーケティング思考とは、自身が設定した顧客対象層のニーズを掘り起こし、提供する商品サービスを通じて顧客の価値を生み出す活動全体の考え方を指します。そして、その活動の積み重ねは、競争相手がたくさんいる既存の市場(=レッドオーシャン)の中で戦いシェアを高めるのではなく、競争しない、自分の独自性を活かせる領域(=ブルーオーシャン)を作り出して勝負することに他なりません。


 まずは、活動の前提となる考え方や視点についてお伝えしました。これからも連載をお読みいただき、皆様のヒントになりましたら幸いです。


【プロフィール】

ブランドストーリー 代表 大平恭子

食農連携の分野で「売り方・食べ方で人と地域を活性」をミッションに、付加価値化と魅力増大を図る専門家。生産者・農産物ブランディング、食事業者に対する健康食材コーディネートやレシピ開発、加工品開発支援、講演セミナー等を行っている。

健康的でポジティブなライフスタイルを実践するために始めたランニングは1年で10km走れるようになり、2018年3月には名古屋でのハーフマラソンに初挑戦の予定。

6次産業化プランナー、野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター