#安倍晋三 vs #財務省 - #西田昌司 遂行する
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2022.07.18
安倍晋三はなぜ「財務省」と戦い続けたのか…知られざる肉声を明かす
「彼らは怖い役所だから」戸坂 弘毅, 週刊現代
「アベノミクス」を推し進めた故・安倍晋三元首相は、国の予算を握り霞が関で「最強官庁」と呼ばれる財務省に対して、強い反発心を持っていたことで知られる。だが意外にも、なぜ安倍氏がそのような考えを抱いたのかについて、生前自ら語る機会は少なかった。
安倍氏を若手議員時代から取材してきたジャーナリストの戸坂弘毅氏が、知られざる貴重な肉声を明かす。
安倍氏が残した足跡
安倍氏が亡くなった日、米英ロ中印など世界各国の要人たちがこぞって安倍氏を悼み、首相在任中の功績を称賛するコメントを出した。インドやブラジルでは国として喪に服することを決めたとの報道にも接し、安倍氏が日本の政治家として前例がないほど、国際社会で存在感を発揮してきたことを再認識した。
安倍氏がその評価は別にしても「自由で開かれたインド太平洋構想」を打ち出し、日米豪印の「クワッド」枠組みを構築するなど、日本の首相としては稀有な「価値観外交」を展開し、欧米諸国の戦略にも一定の影響を与えたことはしっかり記憶しておくべきだろう。
中国・韓国など近隣諸国との関係悪化を招いたとの批判はあるが、中国の習近平国家主席が岸田首相に送った弔電で安倍氏に最大限の弔意と敬意を表したことからもわかるように、安倍氏は日中関係の改善にも一定の足跡を残し、中国側から畏敬の念を持たれていた。
日本の国内事情に精通した中国政府高官は昨年、日本のジャーナリストに対し、「安倍氏の3度目の首相就任も十分あり得るのではないか」と警戒心を込めて語っていたという。
第一次安倍政権「前夜」の酒席で
平成時代に入ってから政治の現場を取材するようになった私は、安倍氏が父親の晋太郎氏の秘書を務めていた時に初めて名刺を交換し、父親の病死を受けて初当選した後の1年生議員の時代に、時々話をするようになった。
その頃は、外相や自民党幹事長だった父親の秘書時代に彼が見聞きした、竹下登元首相をはじめとする自民党及び清和会(自民党安倍派)の大幹部たちに関する裏話を安倍氏から聞くのが大変興味深く、安倍氏のもとをふらっと訪ねたものだ。
同時に、安倍氏の1期上だった衛藤晟一・前少子化担当相ら当時の保守派若手議員たちが、その頃から「安倍晋三は考え方の軸がしっかりしていてブレない。間違いなく将来の総理候補だ」と語っていたことから、「先物買い」の意味もあって安倍事務所を時折訪ねていた。
安倍氏が若い頃から安全保障や歴史認識問題に深い関心を寄せ、岡崎久彦元駐タイ大使らと勉強会を重ねていたことなどは、もちろん認識していた。だが、私が思い出す安倍氏の印象的な言葉は、2006年に第一次政権が発足する1年程前、少人数の酒席で安倍氏が語った「統治機構改革」に関する発言だ。
首相に就任したら何をやりたいか、という話の一環だったと思う。安倍氏が、「これからの時代は、何事も政治主導・官邸主導で物事を決めていかなければならない、それはすなわち、長年続く財務省主導を打破することだ」などと強調したのだ。
その発言に驚いた私が「日本は民主主義国家に相応しく、政治主導で政策決定できるように統治機構を変えるべきだと以前から思ってきたので大賛成だ。予算編成も、財務省ではなく首相官邸で行うことができるよう仕組みを変えるべきではないか」と持論を展開した時のことだった。安倍氏はさらに踏み込んだ発言をして、私を驚愕させた。
「私もそう思っていますよ。それがあるべき姿だと思う。でも財務省は怖い役所だからね。彼らの権限を侵すと、どんな仕打ちをされるか分からない。だから、改革は徐々にやっていかないとね」
著書『美しい国へ』では書かなかった
この会合の直前に出版された著書『美しい国へ』(文春新書)では、安倍氏は「安全保障と社会保障、じつはこれこそが政治家としてのわたしのテーマなのである」と記し、外交や安全保障、少子化対策や社会保障、教育再生などについては詳述しているものの、統治機構改革については触れていない。
衆院への小選挙区制導入など一連の平成の政治改革に伴う首相(党首)権限の拡大・強化を最大限に活用し、官邸主導・政治主導の政治を意識的に行った小泉純一郎内閣。安倍氏はその小泉内閣で官房副長官や官房長官を務め、小泉氏の政権運営を間近で見てきた。後に安倍氏は「とても勉強になった」と述懐している。
だが、小泉首相は政策決定の在り方を恒常的に変えるための制度改革=「統治機構改革」にはあまり関心を示さなかった。私は小泉氏同様、安倍氏も統治機構改革には関心がないのだと勝手に思い込んでいた。それだけに、この時の安倍氏の発言は極めて印象的だった。
なぜ菅義偉をあれほど信頼したのか
現実には、安倍氏は史上最長の政権を築いたにもかかわらず、予算編成については基本的に小泉内閣のやり方を踏襲し、組織の抜本改革には手を付けなかった。ただ、官僚主導を排して政治主導を徹底させることについては意識的だった。
2012年末に第二次安倍内閣が発足すると、安倍氏は内閣の要の官房長官に菅義偉元総務相を起用した。第一次政権時も菅氏起用の構想はあったので、5年越しの「菅長官」の実現だった。
北朝鮮による拉致問題で意気投合したという安倍氏と菅氏だが、菅氏はそもそも、安倍氏が重視する安全保障や外交については全くと言っていいほど関心を持っておらず、関係する党の部会などにも所属したことがない。
それに菅氏は、安倍氏が「『悪い自民党』を体現する政治家」と嫌ってきた加藤紘一元幹事長や古賀誠元幹事長に仕えた経歴を持つ。それにもかかわらず安倍氏が菅氏に信頼を寄せ、内政案件の多くを「丸投げ」してきたのは、戦後一貫して財務官僚らが牛耳ってきた政策決定を政治家の手に取り戻すという点で、菅氏と考え方が一致していたことも大きな要因だったのではないか。
「傍流」からの脱却のために
第一次安倍政権の後を継いだ福田康夫政権下の2008年、各省の幹部人事を首相官邸が一元的に掌握することによって、政治主導の行政運営を実現するための内閣人事局の新設を含む国家公務員制度改革基本法が、当時の民主党との修正協議を経て成立した。
この基本法では、法律施行後1年以内に内閣人事局設置に関する法整備を行うよう定めていたが、その後、麻生内閣での同法を巡る混乱などもあり、施行後6年も経た2014年、安倍首相―菅官房長官コンビの下でようやく内閣人事局が設置され、官邸主導の体制が大幅に強化された。
これも決して偶然ではないだろう。安倍首相の政治主導、すなわち財務官僚主導政治の排除に向けた意思が明確だった故に、こうした結果になったのだ。
安倍氏がこのような考え方を持つに至った底流には、初代の池田勇人以来、歴代会長の多くが財務(大蔵)官僚出身者(池田、前尾、大平、宮沢)によって占められてきた宏池会=現在の岸田派や、財務省(大蔵省)を筆頭に建設省や郵政省など経済官庁のエリート官僚たちを手なずけて政・官・業の所謂「鉄のトライアングル」を築き、昭和の後期から平成の初期にかけて絶大な力を揮ってきた旧田中派・旧竹下派が自民党の「保守本流」とされ、自らが所属する清和会=旧安倍(晋太郎)派が傍流扱いされてきたことへの対抗意識もあったのではないか。
第二次安倍内閣発足以降の安倍氏は、経産官僚出身である今井尚哉氏という異能の人材を首席秘書官に据えて大きな裁量を与えた。それによって安倍政権は「経産省内閣」と言われるほど経産省の影響力が強くなり、戦後最も財務省(大蔵省)の影響力が小さな政権となった。
2022.07.18
安倍元首相が急死直前に語った「岸田首相とのラスト・バトル」と「その黒幕」
戸坂 弘毅, 週刊現代
突如、銃弾に倒れ67歳で死去した安倍晋三・元首相。岸田文雄首相には、昨年の政権発足以来「ご意見番」として折に触れてアドバイスをしてきたが、人事などをめぐって対立する局面も少なくなかった。
そんな中、参院選直前の永田町で安倍・岸田両氏の間に緊張が走る事件があった。安倍氏を長年取材してきたジャーナリストの戸坂弘毅氏が、前編「安倍晋三はなぜ『財務省』と戦い続けたのか…知られざる肉声を明かす」に続いて緊急寄稿する。
安倍事務所での「怒り」
参院選公示直前の6月中旬、防衛省の事務次官人事を巡る騒動が持ち上がった。
安倍氏は、自らの首相秘書官を6年半も務め、厚い信頼を寄せている島田和久前事務次官の留任を強く望んでいた。しかし岸田官邸は「次官は就任2年までの交代が慣例」として島田氏を退任させ、同氏の同期で「上がりポスト」と言われる防衛装備庁長官を務めていた鈴木敦夫氏を後任に据えた。
これにより、「すわ岸田と安倍の決戦か」と永田町・霞が関に激震が走ったのだ。
この次官人事を閣議決定する前日の6月16日、衆院第一議員会館の最上階にある安倍事務所を訪ねた岸田首相は、安倍氏からこの件について怒気を含んだ声で問い質されて驚き、その後、安倍氏がどこまで本気で怒っているのかを探るように、と周辺に指示したという。
安倍氏が挙げた「真犯人」とは?
この年末に「国家安全保障戦略」など安保関連三文書の改訂を控える中、安倍氏が島田氏の留任を強く望んでいたことを、岸田首相自身が全く知らなかったとは考えにくい。安倍氏との会談でも驚いたふりをした可能性もある。ただ、岸田首相本人が安倍氏を激怒させても構わないとして、「島田外し」を強く主導したとは考えにくい。
実際、サシの会談での岸田首相の反応を見ていた安倍氏は、親しい永田町関係者に「やはり財務省の仕業ではないか。『骨太の方針』の意趣返しかな」と漏らし、「島田外し」の真犯人は財務省ではないかと疑っていた。
「経済財政運営と改革の基本方針2022」=今年の「骨太の方針」を巡っては、安倍氏を先頭にした積極財政派の圧力で財政健全化に関する表現が昨年までより弱められる一方、防衛力強化については安倍氏らの主張に沿って「5年以内に強化する」ために「必要な予算水準の達成」に努めることが明記され、脚注に書かれていた「GDP比2%以上」とする目標も本文に格上げされた。
これが財政再建の大きな障害になることを危惧した財務官僚たちが、内閣人事局長を兼務する栗生俊一官房副長官を動かし、政府内で防衛力強化の旗振り役を果たすと安倍氏が期待した島田氏を外したのではないか……安倍氏はそんな見立てを抱いていたのだ。
岸田政権に対する「危惧」
そもそも安倍氏は、いずれも財務官僚出身で「アベノミクス」に懐疑的だとされる木原誠二官房副長官や村井英樹首相補佐官が岸田首相を取り囲み、岸田氏が彼らの意見を尊重していることに危惧を抱いていた。
昨秋の自民党総裁選の最中のことだ。私は安倍氏が首相在任中、一貫して自らの後継候補として考えてきた岸田氏を支援せず、高市早苗氏を全力で支援し始めたことについて、その真意を電話で問い質した。
それに対して安倍氏は、「いろいろ理由はあるけどね。岸田さんの『周辺』が良くないのもその理由だね」と述べ、具体的には木原氏らの言動を危惧していることを明かした。
最終的には、当初最有力と見られていた河野太郎氏を排して岸田氏が首相に就任することが望ましいと考えつつも、その時から、岸田政権が発足すれば木原氏らの主導でアベノミクス路線が否定される恐れがあることを懸念していたのだ。
前編で記したように安倍氏は、父親である晋太郎氏の秘書時代からの長年の経験を通じて、財務省に強い不信感を抱いてきた。第二次政権発足以降は財務省出身の秘書官たち、具体的には中江元哉氏(元関税局長)や新川浩嗣氏(現主計局長)が献身的に自身を支えてくれたとの認識から、いっときは財務省への厳しい見方を変えたとも言われていた。しかし、やはり基本的な認識は変わっていなかった。
防衛次官の人事について、安倍氏はその後も周辺に「(後任次官の)鈴木氏は、そもそも素行の問題で閑職に追われた経歴があるらしいじゃない」と漏らすなど、憤懣やる方ないといった風情だった。
外交・安保は心配ない。だが…
伝統的にハト派である宏池会出身の岸田首相と、保守強硬派が多い清和会の安倍氏。2人の違いを語る際には、安全保障や外交姿勢の違いにどうしても注目が集まりがちだった。
だが実は、安倍政権で5年近くも外相を務めた岸田氏に対し、安倍氏は「岸田さんは外交や安保をよくわかっているので、心配はいらない」と強い信頼を寄せていた。むしろ2人の「火種」は経済政策だというのが、岸田首相周辺と安倍氏周辺の共通認識だった。
岸田首相は「参院選を乗り切るまでは」と、自身のカラーを出すことをじっと我慢してきた。選挙を終えた岸田首相は、来年度の予算編成や税制改正に向け、「新しい資本主義」の具体化など自身の考えに沿った経済・財政政策を推し進めるだろう。
そうなれば、安倍氏を最高顧問として自民党政務調査会に設置された「財政政策検討本部」(本部長・西田昌司政調会長代理)に結集する、安倍氏に近い積極財政派の議員たち、さらには安倍氏本人と激突する場面も出てくるのではないか。参院選の前、そんな懸念が党内にあった。
さらに、アベノミクスを全面的に支えてきた日銀の黒田東彦総裁が来春で任期を終える。次期総裁の最有力候補は日銀の保守本流のエースである雨宮正佳副総裁だと囁かれているが、これについても安倍氏は「『雨宮総裁』では(アベノミクスを終わらせるという)間違ったメッセージを発出することになりかねない」と周辺に懸念を漏らしていた。
「アベノミクス後」の政治
その安倍氏が突然、不在となった。党内最大派閥を率いる安倍氏という大きなハードルは取り除かれたが、果たして岸田政権は容易にアベノミクスを修正し、持論である財政再建路線に舵を切ることができるのか。また、日銀総裁の交代を機に異次元の量的緩和政策の見直しが行われるのかにも注目が集まる。
その一方で、安倍氏の不在によって逆に自民党内で増殖する積極財政派の議員たちを岸田官邸が制御できなくなり、混乱が広がるのでは――そんな懸念の声も漏れる。
まずは8月下旬にも行われると見られる内閣改造・自民党役員人事が、一層注目されることになる。高市政調会長が交代し、後任には高市氏と同様、安倍氏に近い萩生田光一経産相が起用されるとの人事案が安倍氏の存命中から取りざたされてきたが、果たしてどうなるか。
安倍氏が去ったことで、岸田政権の経済政策はこれからどこへ向かうのか。行方は、まだ霧の彼方だ。
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「衝撃…財務省は安倍総理の増税後の経済対策を反故し、国債償還に充てていた!我々は何としても財政出動を成し遂げ使命を全うする」西田昌司の政策議論「西田ビジョン」【週刊西田】
16,234 回視聴 2022/07/14 配信日:2022年7月14日
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