どう病むか
無病息災ならサイコーですが、そんなことなかなか稀なので、一病息災という言葉が生まれたそうです。
一つくらい持病があった方が、かえって健康に気を付けて長生きできる、と。
病気は、人を大切にしようと思うきっかけになり得ますね。
自分のことも、他人のことも。
ケアを学ぶようになってから、わざとではないのですが、あちらこちら痛みを経験します。
ギックリ腰をしたり、捻挫したり、どこそこ筋を傷めたり。
すると、意識していなかった体の連動を知ることができます。
今までは届かなかったところに触れることができるようになったりします。
治療家としては、病んでみる経験はとても貴重です。
病気や困りごとを吐露したとき、さえぎるように
「あなたなんかまだいいわよ。私はもっとこんなで…あんなで…。」
なんて返ってくることがあります。
きっと大変な思いをされたのでしょう。
でも、あぁこの人に話すんじゃなかったと、こちらの気分はドンヨリ。
全く同じ経験でなくても、自分の苦労から想像して相手を思いやることはできるはず。
病気はしないで済むならしたくない。
苦労も買ってまでしなくていい。
でもどうせ経験するのなら、思いやりの引き出しにして増やしたいものだなと思います。
先日、素敵な方にお会いしました。
長らくご無沙汰していたおばぁちゃまをお訪ねしました。
以前はふっくらされていたのに、大病で食事が摂れなくなったとのこと。
30キロ台まで痩せられて、ご主人と杖を頼りに歩いて来られました。
会うなり私の手を握って、涙を浮かべて喜んでくださって、
「こんなになって、人に会うのが恥ずかしい。」
と仰るのですが、マスクの外に覗くお顔はとてもチャーミング。
目にも眉間にも剣はカケラもなく、天使のような輝きでした。
きっと辛い思いも涙の時間もあったことでしょう。
病自体は災難かもしれません。
でも、時にこんなに人を美しくするものかと、大切なものを見せて頂いた気分でした。
どう病むか…自分がジタバタしたとき、こんな風になっていけたらいいなと思うお手本です。