盛夏に開花!藤原宮跡の蓮
https://narayado.info/nara/hasu-fujiwara.html 【盛夏に開花!藤原宮跡の蓮】より
7月末日に藤原宮跡の蓮を見に行きました。
蓮の花の見学は午前中が相場ということで、朝食を食べた後に一路藤原宮跡を目指します。一年で最も暑い時期に当たりますので、お昼以降はさすがに私自身も太陽の光に参ってしまいます。早めに出かけて正解だったなと思います(笑)
藤原宮跡の蓮
藤原宮跡に開花するハスの花。
向こうに見えているのは、大和三山の畝傍山です。藤原宮跡は菜の花やコスモスの名所として知られますが、盛夏の蓮も実に見事な咲きっぷりです。畝傍山、香具山、耳成山の大和三山に囲まれた場所に、仏教を象徴する清らかな花が見頃を迎えています。
亡き夫である天武天皇を想いながら、この地で日本の礎を築きました。今も世界遺産登録を目指している藤原宮跡ですが、日本という国の根っこを造り上げた持統天皇の功績は計り知れないものがあります。そんな古代に栄えたこの場所に、「古代蓮」という名のハスが咲いていました。
藤原宮跡の古代蓮
藤原宮跡に咲く古代蓮。
花びらが反り返るように開き、その先端にはピンクのグラデーションが見られます。開花した花の向こうにはニョキッと伸びる蕾、さらには朱色の列柱が見えています。
藤原宮跡の古代蓮
奈良県農業総合センターから贈られた蓮のようです。
蓮池の向こうに見えているなだらかな山は天香具山です。つい先日、香具山山中で見学した月の誕生石を思い出します。藤原宮跡周辺は神話の世界ともリンクしており、謎に包まれた古代ワールドがそこかしこに広がっています。
蓮の花は普通十六弁とされます。
天皇を象徴する十六菊花紋ではありませんが、16という数字に完成された美を感じます。
藤原宮跡の古代蓮
実に綺麗な花ですね。
さぁどうぞ、と言わんばかりに顔をのぞかせています。開きっぷりがいいと言うか、花びらの芸術的なラインも目を引きます。
古代蓮は鑑真和上が日本にもたらした蓮の種類とされます。唐から来日し、唐招提寺創建に関わった高僧の鑑真。古い時代の種が見つかって、それが奇跡的に発芽したそうです。唐招提寺も蓮の名所として知られ、毎年ロータスロードで賑わっています。見事に復活を遂げた古代蓮を見ながら、唐の高僧・鑑真を想います。
藤原宮跡の古代蓮
開花する前の、しっかりと閉じた蕾もいいものですね。
どこか凛とした印象を与えます。
藤原宮跡の古代蓮
蓮池の縁にコの字型の石が設置されていました。
同じ形の石が蓮池のあちこちに見られます。その用途は何なのでしょうか。蓮池の縁はぬかるんでいますので、足を取られないように注意が必要です。蓮の花に夢中になって、ついうっかり(笑) なんてことがないように致しましょう。
スイレン科の多年草である蓮は、「はちす」の略と言われます。
仏像鑑賞がお好きな人ならご存知のことと思いますが、仏像が座る蓮華座は正しくハスですよね。極楽往生した人が座る蓮華座のことを 「蓮の台(はちすのうてな)」 と言います。
ハスの花弁が散った後に、蜂の巣のような台(花托)が残っているのをよく目にします。
蓮(はす)の語源とも言われるハチスは、蜂の巣に由来しています。四字熟語の一蓮托生も、蓮をイメージして作られた言葉であることが分かります。
(略)
法華寺蓮に唐招提寺蓮も見頃
藤原宮跡の蓮池ゾーンには、古都奈良のお寺の名前を関する蓮も咲いていました。
もうすぐお盆シーズン到来ですね。
盂蘭盆会の仏壇に蓮の葉っぱを敷く慣わしがありますが、仏教と蓮には切っても切れない御縁があります。
藤原宮跡の法華寺蓮
唐招提寺から贈られた法華寺蓮。
光明皇后をモデルにしたと言われる十一面観音立像で知られる法華寺。平城宮跡にも程近く、数多くの観光客で賑わうお寺ですが、その法華寺にゆかりのある蓮なのでしょうか。
藤原宮跡の法華寺蓮
法華寺蓮と畝傍山。
白を基調にピンク色の縁取りです。
法華寺蓮は一重咲きのようですね。法華寺では象鼻盃(ぞうびはい)の催しもあり、ご住職の挨拶と共に「蓮の花を愛でる会」が開かれています。
694年の藤原京から710年の平城遷都へと歴史は移っていきます。藤原宮跡の法華寺蓮を見ていると、蓮がつなぐ奈良の都がイメージされます。
藤原宮跡の唐招提寺蓮
唐招提寺蓮。
昨夏のロータスロード(唐招提寺)で観賞した唐招提寺蓮ですね。
鮮やかな赤い色をしています。案内板の写真を見れば、八重咲きであることが分かります。
案内板の向こうには香具山を望みます。
天から降って来た山、あるいは国見の山とも言われる天香具山。畝傍山を頂点として、香具山、耳成山をつなぐラインは二等辺三角形を形成します。その中に、今も古代の空気を感じさせる藤原宮跡。意図されたかに見える大和三山の位置的関係と、大和三山を意識して築き上げられたであろう藤原京。壮大な相関図を背景に、蓮の花が見頃を迎えています。
藤原宮跡の唐招提寺蓮
蓮の葉の真ん中に水滴が溜まる光景。
蓮観賞の見所として、写真集でもすっかりおなじみですよね。
香具山と蓮
背比べでもするかのように、すっくと立ち上がる蓮の蕾。
香具山を手前にして、幾重にも山々が重なります。山々がたたなづく風景は、古代より数々の歌を生み出してきました。
畝傍山と蓮
トンボが交尾するように連なる山々ばかりではありません。
向こうに見えているのは畝傍山ですが、ぽつりと盛り上がる単独峰。まるで丘のように低い山が単独で佇みます。名勝・大和三山ならではの風景に、悠久の時の流れを感じます。
藤原宮跡の蓮ゾーン
やはりこれは排水溝の役割を担っているのでしょうか。
藤原宮跡の蓮池には、法華寺蓮や唐招提寺蓮の他にも、実に様々な種類の蓮が花を咲かせていました。
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粉松球蓮、中型蓮、即非蓮、小舞妃蓮の開花状況
藤原宮跡の蓮池には蓮の種類を案内する立札があります。
立札によって開花している蓮の名前を見分けることが出来るのですが、残念ながら100%ではありません。
その理由は、蓮の種類によって厳然と区画されているわけではないからです。
粉松球蓮
粉松球蓮。
「ふんしょうきょう」と読みます。やすらぎの里ましが丘推進委員会から寄贈された蓮のようです。
粉松球蓮
粉松球(ふんしょうきょう)の名前の通り、球状に開花するのが特徴です。
八重咲き品種で、つぼみは濃いピンク色をしています。開花するに従い、やや色が薄くなっていくようです。小手毬のようなかわいい品種の蓮ですね。
畝傍山と蓮
蓮の葉ってなぜこんなに大きいんでしょうか。
藤原宮跡の近くに膳夫(かしわて)という地名が残されていますが、これは柏(かしわ)の葉に食物を盛ったことに由来しています。カシワテの「テ」は人出や働き手を意味し、宮中の食事を司った歴史がうかがえます。蓮の葉は、明らかに柏の葉よりも大きいですよね。蓮の葉をお皿代わりに利用することは無かったのでしょうか(笑) 十分に利用価値がありそうです。
藤原宮跡の蓮
橿原市観光マップを広げてみると、蓮池のあるこの辺りは高殿町(たかどのちょう)に当たるのではないかと思われます。
盛夏のこの時期は、おふさ観音の風鈴まつりも見所の一つです。
藤原宮跡から車で数分、醍醐池近くの駐車場からだと徒歩でも小房観音にアクセスすることができます。
藤原宮跡の中型蓮
中型蓮。
中型蓮もやすらぎの里ましが丘推進委員会から贈られたようですね。
藤原宮跡の中型蓮
立札の周りを見回してみたのですが、開花状況があまりよろしくありませんでした(笑)
やっと見つけたのが、こちらの中型蓮です。花弁の縁が優しく色付き、小ぢんまりした印象の品種です。
蓮の畔
蓮池の間の畦道。
ここに三脚を設置して撮影なさっている方もおられました。
即非蓮
即非蓮(そくひれん)。
一重咲きの在来種系です。
原種に近い蓮で、ややひ弱な品種とされます。他の品種に比べ、栽培が難しいことでも知られます。
即非蓮
鮮やかな色を見せる即非蓮。
在来系という意味では、古代人たちが目にした蓮も即非蓮(ソクヒレン)に近い姿をしていたのかもしれませんね。
藤原宮跡の休憩所
蓮池の脇には休憩所もありました。
ちょっとした屋根が付いていて、その下に木製ベンチが用意されています。急に雨が降ってきた時などは、ここで雨宿りができそうです。
小舞妃蓮
小舞妃蓮。
「しょうまいひ」と読みます。
名前とは裏腹に、非常に性質の強い品種とされます。開花初期に花弁が反り、大きく立体的な花を咲かせます。立札に案内されている小舞妃を探してみたのですが、なかなか見当たりません。
藤原宮跡の小舞妃蓮
やっと見つけたのがこちらです。
花びらの先に、わずかにピンク色が入っています。
小型の一重咲きですが、確かに立体的な花を咲かせています。
畝傍山と蓮
蓮の花の蕾に近付いてみると、どこかチューリップのようでもあります。
藤原宮跡の列柱と畝傍山を背景に、開花の時を待ちます。
香具山と蓮
午前中から十数人の見物客が蓮池に集います。
藤原宮跡は奈良県下有数の蓮の花の撮影スポットなんでしょうね。ツイッターやフェイスブックなどのSNS上でも、連日のようにアップされています。
その昔、日本の都があった場所で蓮の花を満喫致しましょう