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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

ロマン派の時代47-ボードレール「悪の華」

2022.07.21 11:32

理想に失望したもう一人の男がシャルル・ボードレールである。彼は、1857年に詩集「悪の華」を出版したが、こちらは有罪となり、罰金を払い問題となった6編を削除して許された。この詩集の冒頭で、人間は悪に近いものと宣言されるが、その最たるものは「倦怠」として、読者を「偽善者」と呼ぶ。

彼は、上流家庭に生まれ、エリートコースをたどるが、それに反抗して文学者となり、放蕩の人生を送った。48年革命に参加してブランキやプルードンの無政府主義に影響され、実は無署名ながら社会評論記事も書いている。決して無関心な男ではなく、むしろありすぎる男である。

彼もまた近代資本主義の金ピカの時代に失望した一人である。そして彼はその理想を「交感(コレスポンデンス)」に表している。自然と人間が共感し合う時代に戻れというのである。実はフローベルも愛をそのような描写をしており、音楽ではワグナーが「トリスタンとイゾルデ」で表現する。

ボードレールの「倦怠」とは、理想を失い日々快楽を求めていく自分の姿だが、この詩集はそれを極端に描いただけであり、自由平等友愛の革命の理想がなくなって、日々の楽しみに移ろう近代の堕落を身をもって示したといえる。近代が進むにつれ、芸術家達は新しい理想郷を芸術を通して探していく。