タイBLドラマ「He's Coming To Me~清明節、彼は僕のお墓の隣にやって来た」(2019年)U-NEXT おすすめ キャストとあらすじ
おすすめ度:★★★★☆ 驚くほど素敵なドラマ
U-NEXTでタイのBLドラマ「He's Coming To Me~清明節、彼は僕のお墓の隣にやって来た」(2019年)を観ました!驚くほど素敵なドラマ。こんなにも透明感のある描写に、どこまでも続く郷愁を感じさせる作品はそうそうありません!
成仏できない「幽霊」がある日墓地で霊が見える男の子と出会うというふしぎなストーリーに、タイ独特の中国系文化が融合し、GMMTVのスターたちが華を添える本当によくできた感動のBLドラマ。8話完結と短く、伏線が多過ぎないのも高ポイント。めちゃくちゃおすすめです!
主人公は、22歳の時に心臓発作で死んだとされる幽霊メット・ウォンサコン・タナルンシリと、幽霊が見える少年タン。メット役を「SOTUS / ソータス」のシントー・プラチャヤー・レァーンロード(Singto Prachaya Ruangroj)、大学生になったタン役を「Dew / デュー あの時の君とボク」のオーム・パワット・チットサワンディ(Ohm Pawat Chittsawangdee)が演じています。
終始爽やかで好青年なシントーと、笑顔があどけない可愛さ満点のタンの演技が、ストーリー設定とみごとにマッチして、光りまくってます。
年に一度の晴明節
ストーリーは、幽霊になったメットが墓地に埋葬されるも、誰にも供養されずに成仏できず、荒れたお墓でいつか来るかもしれない誰かを待ち侘びるところから始まります。
幽霊になったメットには生前の記憶がなく、覚えているのは「メット」という名前と心臓発作で亡くなったということだけ。その時に聞いていたカセットテープのプレーヤーとヘッドフォンだけを握りしめて、毎年毎年、清明節のたびに誰かが訪れてくるのを待っていました。
「晴明節」とは、二十四節気の第5にあたり時期は毎年4月の上旬。日本で言う「お彼岸」に相当するもので、中国では、春節(旧正月)、端午節、中秋節とあわせて四大伝統祝日と言われているそうです。
果物や紙のお金(紙銭)などを持って先祖などのお墓参りに行き、紙銭を燃やしたり、お供物をして、最後に食事をする伝統があるそうで、中国系の家族の多いタイでも、この習慣が今も続いているんですね。
ドラマでも、タンが中国語を勉強したり、メットが中国語を話すシーンもあります。タンの誕生日にはタンが中国の幽霊「キョンシー」のコスプレをする場面も。
ドラマのOSTも前編とおして中国テイストなものが多く、中国文化を受け入れるとともにさまざまな影響を受けてきたタイの文化的多様性を垣間みることができます。
幽霊メットと人間タンの友情からのBLというなかなかない展開がベースですが、このほかにもさらに生前のメットがタンのお母さんが若い頃に付き合っていた相手だったり、メットがタンの女友達プライの叔父さんだったり、人間関係が感情的に複雑。
メットの姿(魂)が死んだ当時の22歳のまま現実世界の時間だけが過ぎていくため、こうしたおもしろいことが次々と起こります。
明日が最後の日でも忘れないで
メットが「明日が最後の日でも忘れないで」「君に出会えてよかった」というセリフが非常に心に響きます。
誰も供養に来てくれない荒れ果てたお墓で待ち続けた幽霊メットの日々。生きていようと、死んでいようと、やはりいつか出会う誰かのために、そこにいるんだなと思わされます。
最終的に、メットの死は「心臓発作」ではなく、「意図的に引き起こされた死」(おそらく殺人ということになるのだと思いますが、時効だし、そこまでの訴求はない)だったことがわかるわけなんですが、昔を振り返った時、誰しも心残りや未練はあるもの。それを今からどうかできるわけでもないけど、それを受け入れて、最後には許すしかないんですね…。
目に見えなくても、そこにいる
最終回でメットがタンの実家を訪れた夜、タンが幽霊のメットと一緒に撮ったスマホの写真を見せるシーンがあります。もちろんメットは幽霊なので写真には写っていませんが、そこにタンは「ここにいるよ」とスマイルマークを書きます。
人が存在することや、いろいろな人生や思いがあったこと、その場にいたこと、この世界に生きていたこと、それが誰であれ、そんなことはいつか消えてなくなり、時間とともに誰の目にも見えなくなる。でもそれは、共に時間を過ごした人の心にいつまでも色褪せず、生き続ける。
そんな「生きること / 死ぬこと」の普遍的な価値が、あのシーンに凝縮されているような気がして思わず涙が…。そう、大切な誰かはたとえ「目に見えなくても、そこにいる」。
メットが成仏するラストシーン
今回星5つのおすすめをつけたかったのですが、唯一の残念ポイントは、最も大事な最終回のラストシーン。プライの計らいで、メットの供養とお母さんと仲間とで行った後、20年以上の時を経てメットがようやく成仏できた…と思ったら!
「まだ早すぎる」という声が聞こえて、メットがタンの前に戻ってくる…。このシーンは絶対にそのまま成仏したほうがよかった!最後をハッピーエンドにした工夫が、作品全体の郷愁のある雰囲気を壊してしまい、なんだか急に安っぽくなったと思います。
そもそも、メットとタンのBLドラマにせずとも2人のブロマンスや時間を超えた友情でもよかったような…。それでもストーリーはとてもよかったので星4つです!
最終回のみに流れるエンディングソング↓ 子どもたちの声がこれでもかと感動を誘います!
というわけで、タイのBLドラマ「He's Coming To Me~清明節、彼は僕のお墓の隣にやって来た」、とってもおすすめです。
あわせて観たい作品
ちなみにこのドラマと設定がよく似たドラマがあります!「死んだのに成仏できずにこの世に止まっている幽霊」を主人公にした「Happy Birthday」です。ストーリー自体はまったく異なるのですが、幽霊がカセットレコーダー(ウォークマン)を持っているところや、何度も流れる生前聴いていた曲が同じだったりします。こちらもとってもいい話でかなりおすすめ。