Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

「雲の祭日」立原道造 山中現

2018.02.01 08:27

もう二月ですね。

立原道造の詩に「浅き春に寄せて」という詩があります。

早速ですが引用させて下さい。


今は 二月 たつたそれだけ

あたりには もう春がきこえてゐる

だけれども たつたそれだけ

昔むかしの 約束はもうのこらない


今は 二月 たつた一度だけ

夢のなかに ささやいて ひとはゐない

だけれども たつた一度だけ

そのひとは 私のために ほほゑんだ


さう! 花は またひらくであらう

さうして鳥は かはらずに啼いて

人びとは春のなかに笑みかはすであらう


今は 二月 雪の面につづいた

私の みだれた足跡……それだけ

たつたそれだけ――私には……



24歳で夭折したこの詩人(建築家でもありました)の、澄んだ冬の空のような感性で綴られた詩たちは、今なお多くの人に愛されています。

立原道造の詩に画家の山中現さんが絵をつけたこの詩画集「雲の祭日」もそんな完成に貫かれている美しい本です。

山中さんの木版そして水彩で描かれた絵は、例えばジョルジョ・モランディ、恩地孝四郎、そんな画家たちとも共通するような静かな、透き通った詩性を持ったもので、見るものの心を静かに震わせます。

この画家、この詩人の作品について、多くの言葉を使えば使うほど、陳腐なことをしている気になってしまうので、是非見てみてください。

先に引用した詩はこの詩画集には掲載されていないので、最後にこの詩画集の詩を少し。


「溢れひたす闇に」


美しいものになら ほほゑむがよい

涙よ いつまでも かはかずにあれ

陽は おおきな景色のあちらに沈みゆき

あのものがなしい 月が燃え立った



当店在庫はこちらです。

雲の祭日」立原道造 山中現