会社法のお勉強 第2日
第二編 総説
第一章 会社の概念
1 会社の経済的機能
※会社とは
・会社法が商法の中に含まれていた以上、会社も企業のひとつとされている。
⇒商法の中にある企業法説から会社も、「一定の計画に従い、継続的意図をもって営利行為を実現する独立の経済単位」であるといえる。そして、この企業については、個人企業と共同企業に区別することができる。
【参考】
※企業法説=今日では商法は企業そのものを対象とし、その生活秩序に関し規制する法規であると理解されるようになった。
※個人企業とは
1、一個人の資本と労力によって経営が行われ、共同経営とは異なり、自己の判断で自由に経営を行うことができること、それによって得た利益を独占できるという利点がある。
2、しかし、一個人の資本と労力には限界があるので、さらに、事業によって生じた債務はすべて一個人で責任を負わなければならないという苦しいリスクがある。
3、また、一個人の病気、死亡等の個人的理由により企業の継続を断念しなければならない等、このようなことから、個人企業は大規模経営に適さない。
※共同企業
1、複数人の資本と労力の結合によって経営がなされるため、大規模な事業を展開することができる。また、事業によって生じた損失は、複数人が分担することになるので、リスクを分散することができる。(資本主義経済の一部分である)
2、さらに、特定の事業者が病気、死亡等の個人的理由により経営に参加を断念せざるをえなくなったとしても、他の者がそれを補えばよい点があるので、企業の存続には影響を及ぼさず、永続性を持続することができる。
※このように、企業には個人企業と共同企業があるが、会社は共同企業である。つまり、会社の経済的機能として、資本と労力の結合、危険の分散、企業の永続性による大規模経営の実現といった特色があるといえる。
2 会社の概念とは
1、日本法上の会社の通有的性質として、「営利を目的とする社団法人」であるという点が挙げられる。会社とは会社法によって設立されたものをいう。
※通有的=同類のものに共通して備わっていること。また、そのさまをいう。
①社団法人
(1)会社の社団性
1、新会社法は、「社団性」を示す規定を削除している。
※商法旧52条、および有限会社法は、会社は営利目的とする「社団」であると明記していた点である。
【参考】
1、旧商法52条では、会社の社団性と、「営利目的社団で商法上の手続に則って設立されたものは、商行為を業としなくとも会社とみなす」ことが規定されていた。
2、すなわち、これまでは営利目的社団については商法の規定で、「法人格が付与され、商事会社として扱われるということが、民法・商法の双方で規定」されていたことになる。
※この両方の規程により、民法上の営利目的社団は、かならず商事会社(法人)として扱われることになっていたということ。
3、ところが、この商法上の根拠条文である商法52条は、会社法制定とあわせた商法改正によって、削除されることになる。
⇒これで困るのは、これまで『民法上の営利社団法人』とされていた社団法人(民事会社)の位置づけである。「こうしたこれまで民事会社、とされてきた社団法人は今後も当然作られていくと思われるが、これは何をもって規律されるかが問題」となるのである。
※社団と組合は対立する概念
1、組合は、組合員の個性が重視され、組合員相互の関係は契約関係として結合する団体である。社団は、構成員の個性が重視されず、構成員は団体と構成員たる社員との関係によって間接に結合する団体ということになる。
2、これまで多数説の見解は、「会社のなかには、株式会社のような社団的性質をもつ会社と、合名会社、合資会社のような実質的組合の性質をもつ会社もあるから、団体の単一性の濃えんによって、実質的意義において社団と組合の区別を前提とし、すべての会社に共通する「社団」とは、社団、組合を包含する上位概念として、広義の複数人の結合ないし団体の意味」と解していた。
3、それは、会社は二人以上の構成員(社員)の存在を前提としていたのである。
※一人会社の設立へ
1、今までは、株式会社設立のためには、設立時から取締役3名、監査役1名の最低4名の役員が必要だったのだが、そのため、役員が足りない場合は家族や知人に無理に頼んで名前だけ入ってもらうというケースも多々見られた。
2、これに対し新会社法では、取締役1名から株式会社が設立可能になり、また今までは、必ず必要であった監査役も任意ということになった。1人で起業を思い立ったらすぐに会社を設立することが可能になったのである。
※有限会社制度の廃止
1、会社法の施行により、有限会社法が廃止されたため、有限会社を新たに設立することはできなくなり、会社法の施行時点で存在した有限会社は、株式会社の一種としての特例有限会社として取り扱われることとなり、商号中に有限会社の文言使用を義務付けられている。
⇒かかる特例有限会社に対しては、原則として会社法の中の「取締役会を設置しない株式会社」の規定が適用されることになるのである。
※民法上の法人
1、民法が、その条文に規定するのは公益法人(社団法人と財団法人)についてのみである。
①社団法人
1、一定の目的で構成員(社員)が結合した団体(社団)のうち、法律により法人格が認められ権利義務の主体となるもの(法人)をいう。
2、社員(構成員)により構成される団体で、法律上、法人格が付与されたものを社団法人と言う。社団としての実態は存在するが、法人格が付与されていないものは、権利能力なき社団(法人格なき社団)といい、社団法人とは区別される。
3、社団法人でいう社員とは、一般に言う会社員・従業員という意味ではなく、
社員総会や株主総会における議決権、剰余金の配当を受ける権利並びに残余財産の分配を受ける権利の一つ以上又は全部の権利を有する構成員(株式会社では株主)のことである。
4、社団法人の具体的なものには、一般社団・財団法人法上の一般社団法人、会社法により設立される営利社団法人(会社)、特別法によって設立される労働組合のような中間的社団法人(中間法人)などがある。
※一般社団法人
※一般社団・財団法人法に基づいて、一定の要件を満たしていれば準則主義により設立できる非営利目的の社団法人である。従来の中間法人もこれに含まれる。
※会社と呼ばれる株式会社などの普通法人とは異なり、社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える定款は有効なものとはならない。
※事業原資は無くても2人以上の社員によって団体として設立ができ、その後活動原資として基金を社員が拠出したり、または外部からの拠出を募ることができるものである。
※公益社団法人
※一般社団・財団法人法に基づいて設立された一般社団法人で、公益法人認定法に基づいて公益性を認定された社団法人のこと。
②財団法人
1、ある特定の個人(大手企業の創業者や皇族が多い)や企業などの法人から拠出された財産(基本財産)で設立され、これによる運用益である金利などを主要な事業原資として運営する法人である。法人格を付与された財団のことをいう。
2、財団法人は、財産のみの存在を必要としている。