夫婦で住宅ローンを借りる方法と注意点
執筆者:小山英斗
総務省統計局が2015年に実施した国勢調査によれば、働いている人がいる全世帯のうち、共働き世帯数の割合は約6割となっています。共働き世帯が住宅購入を考えるとき、夫婦どちらかの収入では届かないような物件も、世帯収入で考えた場合は借入金額を増やせることで手が届くことがあります。共働き世帯で住宅ローンを借りるときは、どのような借り方があるか見ていきます。
共働き世帯が住宅ローンを組む方法は3とおり
共働き世帯が住宅ローンを組む方法には以下の3とおりが考えられます。
夫または妻の単独名義で住宅ローンを組む
夫婦どちらかの年収で借りることができる借入額の範囲内での住宅ローンを利用する場合、1人だけの名義(単独名義)で住宅ローンを組む方法があります。希望する物件価格がこの方法でも手に届く場合などは、この方法も選択肢となるでしょう。
しかし、住宅ローンの借入審査の1つに返済負担率があります。この負担率が一定を超える場合は審査に通らないことがあるため、希望する借入額によっては単独名義で住宅ローンを組むことは難しくなります。
また、民間住宅ローンの一般的な審査では審査基準金利があり、実際に借りる際に優遇金利などが加味された金利(適用金利)とは異なることがあります。そのため、適用金利で試算した返済負担率より審査における返済負担率の方が高く見積もられることがあることに注意が必要です。
例えば夫の年収が500万円で希望借入額が3500万円、返済期間35年、審査基準金利が4%だった場合、年間返済額は約186万円となり返済負担率は約37%となります。この場合、夫の収入のみでは返済負担率が高く、住宅ローンを組むことが難しくなる金融機関もあります。
夫もしくは妻が収入合算者となる
夫婦の収入を合算して住宅ローンを組む方法です。収入合算には2つの方法があり、1つは「連帯債務者」、もう1つは「連帯保証人」に収入合算者がなる方法です。方法によって住宅ローン控除の適用に違いが出てきます。
「連帯債務者」の場合
夫もしくは妻が連帯債務者になる場合は、もう一方が住宅ローンの主たる債務者となりますが、夫婦で同等の返済義務を負います。この場合、夫婦で住宅ローン借入額を案分し、その割合に応じて夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けることができます。また、団体信用生命保険(団信)については主たる債務者のみが加入するのが原則となっていますが、一部金融機関では「夫婦連生型」と呼ばれる団信に夫婦で加入できる場合もあります。
例えば、フラット35で収入合算をする場合には連帯債務者となります。しかし、民間住宅ローンの場合で連帯債務の形を選べる金融機関は少ないようです。
「連帯保証人」の場合
夫もしくは妻が連帯保証人になる場合は、もう一方の債務者である夫もしくは妻が借りた住宅ローンを返済できなくなった場合に、その返済を連帯保証人が肩代わりする必要があります。
連帯保証人となっても、住宅ローン控除の適用は受けられず、また団信にも加入することができないことに注意が必要です。
民間の住宅ローンで収入合算をする場合、収入合算者は連帯保証人となることが多いようです。
夫婦それぞれが住宅ローンを組む
一般的に「ペアローン」と呼ばれる方法です。夫婦それぞれの名義で住宅ローンを組みます。この方法では、夫婦とも住宅ローン控除が受けられますし、団信にも加入できます。
ペアローンの方が借入時の事務手数料などの諸費用が、連帯保証や連帯債務などの収入合算の方法に比べて高くなるのが一般的です。
夫婦で住宅ローンを組む場合の注意点
これまでの説明でも一部は触れてきましたが、夫婦で住宅ローンを組む場合(収入合算やペアローン)の注意点を以下にまとめてみます。
- 収入合算では団信に主たる債務者しか加入できない(夫婦連生型を除く)
- 連帯保証人は住宅ローン控除を受けることができない
- 住宅ローン控除を夫婦で適用されるようローンを組んでも、一方が途中で仕事を辞めたりして所得税を払わなくなるような場合、夫もしくは妻のみで住宅ローン控除を受けるようにローンを組んだ場合よりも控除額の合計が少なくなってしまう可能性がある
夫婦の収入合計を基に住宅ローンを組むことは、借入金額を増やすことができるメリットがありますが、一方で、片方の収入が途絶えてしまった場合に返済が苦しくなることがあるなどのリスクもあります。万が一そうなっても返済には困らないよう、無理なく返済できる資金計画をしっかり検討するようにしましょう。
未来が見えるね研究所 代表 小山英斗