雑談:マイナーリーグの年齢と中堅国の代表チーム
どんなプロスポーツでも、クラブの編成チームにとって獲得する選手の年齢は非常に重要なファクターです。とりわけメジャーリーグの場合は年齢に対してシビアです。メジャーリーグのファーム組織は多層構造になっていて、最大6軍(ルーキー、1A-、1A、1A+、2A、3A)まであり、競争を勝ち抜いてメジャーリーガーになれる選手はほんの一部です。ステップアップできない選手に戦力外を通告するかどうかの大きな基準になっているのが“年齢”でしょう。そこでマイナーリーグの各クラスの選手を年齢別に分類してみました。
【マイナーリーグと年齢】
マイナーリーグの各クラスに属している選手は、ある一定の年齢層に限られています。例えば1Aのリーグ平均年齢は21.8歳ですが、約2年後の24歳を超える選手は全体の1割しかいません。1A+に上がれるのか、それともクビになるか判断が下ります。2Aクラス辺りまでは、そのリーグで過ごす日数は1シーズンか2シーズン分程度です。3Aクラスはメジャー予備軍ということで、比較的年齢の幅が広いですが、それでも日本のプロ野球やメキシカンリーグのそれと比べればだいぶ狭いです。
ここで、お金の話に少し触れると、日本のプロ野球で外国人がもらっている年俸に比べれば、3Aクラスのサラリーは大変少ないです。日本で活躍すれば数百万ドル(=若手メジャーリーガー程度のお金)は貰えます。アメリカの場合、メジャー球団のレギュラークラスが強力だと、実力があっても中々メジャー昇格できないマイナーリーガーが結構いたります。そういう選手からすると、30歳手前で日本から声がかかることは非常にラッキーなケースです。投手の場合は、日本経由メジャー逆輸入のケースが最近は増えています。
【年齢と代表チーム】
年齢の話に戻します。このマイナーリーガーの年齢の話と、各国の代表チームとの関係を考えてみます。
日本の場合、ほとんどの選手が高校/大学/社会人/独立リーグのどれかを経由してプロ野球(NPB)入りを目指します。そしてNPBでトップクラスの成績を残した選手が、次の高みを目指しポスティングシステムや海外FA権を取得することでメジャー入りをします。田澤純一投手(マイアミ・マーリンズ)のように、NPBを経由せず直接メジャーリーグを目指すケースもありますが、メジャーまでたどり着くのは稀なケースです。侍ジャパンの強さを支えているのは、このNPBというハイレベルな国内リーグの存在が大きいです。マイナーリーグと違い、シビアに若い年齢で切られることもありません。
一方で、野球がマイナーな国(欧州やカリブを除く中米のいわゆる“中堅国”)は、自国の国内リーグはレベルが低いため、やはりアメリカを目指します。メジャー球団からすれば、これら中堅国であろうとも素質のある若手有望株ならば、どんどんマイナーリーグに投入し“篩(ふるい)”にかけ、最終的にメジャーリーガーに成長してくれれば御の字です。しかし上述の通り、マイナーリーグは年齢でクビを切られてしまう側面があります。マイナーでクビになった選手は、運が良ければ米の独立リーグでプレイを続けられ、更に運が良ければそこから日韓台のプロ野球に道が繋がることもあります。しかし、多くは自国のリーグに戻るケースです。
強豪のドミニカ共和国やベネズエラあたりは選手数が多いので、メジャーリーガーが次から次へと出てきますので代表チームの強さは変わりません。しかし野球中堅国にとって、アメリカでプレイできる選手は限られています。アメリカでクビになっても彼らは自国の有力な代表候補です。クビになっても彼らの年齢は、20代半ばから30歳辺りまでの脂の乗った時期です。代表チームでの中心的存在であることが求められます。もし、自国リーグのレベルが高ければ、アメリカ帰りの選手の実力もある程度保つことができます。
【オーストラリアの場合】
3月に対戦するオーストラリア代表は、自国のリーグを高めることに成功しているケースと言えます。同国にもアメリカ帰りの元メジャーリーガー/マイナーリーガーがたくさんいます。オーストラリア人選手だけのリーグでは選手層も薄くなりどうしてもレベルは低くなりますが、ウィンターリーグの形ながら海外の選手を召集することで1A程度のレベルを維持することができます。ベテラン選手でもプレイできる場があることは大きいです。
シビアに年齢で切っていくマイナーリーグの存在が、むしろ野球中堅国にとっては国内リーグのレベルが代表チームのレベルと直結する構図になっています。マイナーリーガーが多い時期ならばよいですが、そうでない時期でも安定して戦うためには、国内リーグの強化こそ重要なのだと思います。