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瀉法の大事と邪の触覚所見

2018.02.02 01:03

経絡治療の目的は、生気を補い生気を妨害する邪気を瀉して患者の生命力を強化することであり、これを本治法とします。


◎第1章 瀉法の大事

本証の陰経を整脉力豊かに補うと陽分に邪が浮いてきます。

主訴・愁訴に関連する陽経の脉位に現れやすく、邪を認めたならば邪の現れた脉位の経絡を切経して最も邪の客している経穴に瀉法を加えます。


基本的には患側の陽経に反応が現れますが、症状に偏りのみられない場合は左右を切経して反応のある側を左右差がなければ脉位側から瀉します。


絡穴に邪が客することが多いですが、腑の病であれば下合穴がいい場合もあります、上焦の病には末梢の経穴が対応します、中焦の病には前腕下腿の中程が対応します、下焦の病には体幹に近い肘膝付近の経穴が対応します、病症や反応を考慮して取捨選択します。

臨床的にはやはり絡穴の使用頻度が多いので絡穴の所見を先ずは捉えられるようになるといいでしょう。


陽は積極的にして変化しやすいため、陽経に瀉法を施すと直ちに体に影響します。

“陽経は症状を取る経”と言われる所以です。


また、診脉時は本証に対して相剋する陰経の脉位に実を認めますが、そのほとんどは本証を充分に補えば平らになります。

これは経絡のアンバランスによってシーソーが傾いただけの旺気実だからです。

ただし、本証の陰経を充分に補えているにも関わらず依然として相剋経の脉位に実がある場合は病実であり、陰経の邪として瀉法を加えます。

陰実を見逃したり、認めたにも関わらず陰経だからと瀉すのを躊躇して長期に放置したままにすると、現代医学的な臓病に発展する可能性があります。

肝実を放置すると子宮がん、脾実を放置すると虫垂がんや消化器系のがん、腎実を放置すると腎がんや腎不全、肺実を放置すると肺がんや重い喘息や重症化しやすい肺炎、心実を放置すると心臓病etc.


ということで陽経、陰経とも明らかに邪を認めたならば躊躇せずに瀉します。

よく「心に虚なし腎に実なし」と言われていますが、臨床的には「五臓全てに虚実あり」とした方が治療の幅が広がります。

瀉すべき腎実も確かにあります。もちろん心虚証もあります。

東洋はり関西STYLEでは脉状に応じて瀉法のテクニックを使い分けます。

瀉法の各論です。


◎第2章 邪の触覚所見

邪の所見ですが、硬い、突っ張っている等ですが、中には表面はぶよぶよして一見虚しているように診えるけれども中の方に硬さがある等の所見もあり、多種多様に富んでいるので、邪実の触覚所見を確実に捉えられるようになるには経験豊富な指導者から学ぶのが一番いいです。


画像だけでも参考になるかと思いますので撮り貯めた邪の触覚所見をご紹介します。

胃経の邪 豊隆

小腸経の邪 支正

胆経の邪 光明

三焦経の邪 四瀆

膀胱経の邪 飛陽 委中

大腸経の邪 偏歴 温留 手三里

胆経の邪 陽陵泉

陽陵泉 接写

胃経の邪 豊隆

豊隆接写

肺経の邪 尺沢

尺沢接写

肝経の邪 太衝

太衝接写

脾経の邪 陰陵泉~地機の間

陰陵泉~地機の間接写

心経の邪 神門~通里の間 少海

心包経の邪 内関~間使の間 郄門

腎経の邪 復溜~太谿の間


◎第3章 瀉法の各論を習得するには

経穴を診断と治療の場として、現れた邪の所見に対して瀉法の手技手法を施します。

邪実には3つのカテゴリーがあり、さらに気の変化と血の変化に分かれます。

これに対して瀉法には6つの基本のテクニックがあります。


■実邪

□気の変化には浮実に応ずる瀉法

□血の変化には弦実に応ずる瀉法

■虚性の邪

□気の変化には塵に応ずる補中の瀉法

□気の変化には枯に応ずる補中の瀉法

□血の変化には堅に応ずる補中の瀉法

■気血の滞り

□和法

この使い分けは脉状診によって厳格に運用され、証法一致すれば雲が晴れるが如く症状が快癒していきます。


病体に応じた瀉法のテクニックを使いこなすためには、それぞれの邪実の脉状の鑑別とそれに応ずる各手技の微妙な手さばきを習得しなければなりません。

これらは、触覚所見の勉強と同じで然るべき指導者について手から手への実技指導により初めて習得が可能となります。

独学では中々難しいでしょう。

ここに集団刺鍼研修の必要性があるわけです。

(指導者が)やって見せて、(受講生に)やってもらって、(指導者が)手直しして、(受講生に)またやってもらう。

技術の伝承というのはこれが正解です。

中には見ただけでできるようになる方もいるでしょう。

ただし、それは一部の天才だけです。

昔から鍼灸だけでなく伝統技術の世界は師匠の技を見て覚えろと言われてきました。

素直に見習うことは何より大事です。

師匠につく弟子の心得です。

この技の世界技の道の精神は時代が変わろうとも受け継がなければならない伝統であり、指導法は見て覚えろから時代にあわせてマンツーマンでの手ほどきへと革新すべきです。


指導者から受講生へ、手から手への実技指導で、誰でも技術を習得できます。

本当に治せる技術を身に付けたいのであればこれを充たす学術団体を選ぶべきです。

もうすでにそのような環境に身を置かれているのであればあなたは幸せ者です。

思い切って技術の習得に邁進してください。

独学でできる方はこちらの動画を参考にしてください。


瀉法のテクニック

補法のテクニック