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藤田晋 invitational RTDリーグ

女流戦士・和久津の体術的攻撃性! RTDリーグ2018 WHITE DIVISION 第1節 1-4回戦レポート

2018.02.04 10:00

1/30(月)、2/2(木)21:00よりAbemaTV「麻雀チャンネル」にて放送された、RTDリーグ2018 WHITE DIVISION 第1節 1-4回戦の様子をお届けします。

レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。

▼▼▼1回戦▼▼▼

やはり、注目は初参戦の和久津だろう。

「超攻撃アマゾネス」というキャッチコピーからもわかるように、和久津の麻雀は攻撃に比重が置かれているように言われる。

競技麻雀の世界では、しばしば攻撃に特化したような選手が現れるが、和久津の攻撃はそういったどの選手とも違うタイプである、と私は思うのである。

その違いが、1回戦の東1局にいきなり表れた。

オヤの平賀がスーアンコのイーシャンテンから、7sをポンしてタンヤオトイトイのテンパイを組んだ。

この直後に掴むドラの白。これをどうするか。

平賀の捨て牌は濃く、タンヤオでないこともしばしばありそうである。

そんな状況下で、このドラをどう扱うかが、その打ち手の攻撃性を表すことになると思われる。


まず最初に考えるべきは、テンパイした場合に白を切ってリーチにいく構想があるのかないのかだ。

例えば、昨年までRTDリーグに出場していた滝沢は、テンパイしてもドラを切らない選択も多く持っているため、この時点では白を切らないという選択になりそうだ。

逆に、テンパイ時に白を切る腹積もりなのであれば、もうここでツモ切ってしまう手がある。というより、切るならもうここ!という打ち手が多いのではないだろうか。

一方の和久津はというと、打4m。

いったんドラを手に留める。


局面は進む。

ツモ4sなのだが、その直前に平賀がツモ切った6pをチーしてテンパイを組む選択があった。

前巡の2mチーは難しいとしても、この6pからならチーしても良さそうだ。

かわしにいきながら加点を目指すのであればチーになる。

例えば、BLACK DIVISIONの小林は、この6pに食いつくことがありそうな打ち手として名が挙がるだろうか。

しかし、和久津は6pを鳴いていない。

この6pを鳴かなかったということは、価値の高いテンパイ(=リーチ+欲を言えばタンヤオ)で初めてドラを打ち出すということである。


では、ツモ4s。

ここで白を切る選択があるのではないか。

例えば、昨年の麻雀駅伝で活躍した園田は、「白を切ってリーチにいく気があるのであれば、遅くともここでは白を切りそう」と言う。

ヤマに残っていそうとはいえ6p9pが薄くなり始めた今、この4sを残すと4pや3s6sでも更なる好形+打点(三色やピンフ)が確保できる。

なるほど。攻めっ気の強い園田らしい選択だ。

一方、和久津は、この4sもツモ切っていく。ここでも白を切らない。


最後はこの手牌。

自分の目から6pが3枚見え、9pが2枚見えたため、この8pによるフォローはかなり嬉しい。

よく、和久津を評して「女流ヒサト」と言われることがある。確かに攻撃していることが多い打ち手という意味では同じかもしれないが、私にはこの2人の攻撃性がかなり違うように見えるのである。

例えば、佐々木は、もう白を打っているかもしれないし、少なくともこのツモ8pでは白を打つイメージだ。

それほどに真っすぐで、シンプルに押し続けられる槍のような攻撃性、それが佐々木。

一方の和久津は、それなりに打点が見込める手牌になったときに前に出られるよう、相手との間合いを計っていく。

体勢を入れ替えながら戦況を見続け、はまったときに前に出る。

粘ってファイティングポーズを取り続ける柔軟な体術的攻撃性、それが和久津であるというのが私の見立てである。

すなわち、佐々木と和久津を比較すると、次のようになるのではないだろうか。


【佐々木】 ストレートな手作りであるため、打点は高くなりにくく、終盤に押し返せないことが多くなる。一方で、序盤~中盤の攻撃回数は増える。

【和久津】 打点を見ることで相対的に価値の高い手牌を作るため、終盤に押し返せることが多くなる。一方で、序盤~中盤の攻撃回数は減る。


したがって、和久津を観るときには、終盤の深い踏み込みもそうだが、そこに至る打点意識にもぜひ注視していただきたい。

以上のことを踏まえると、あと1枚しかないとはいえ、リーチ高目ツモでマンガンの手牌ができたという事実が和久津にとっては重い。

そのテンパイこそが、和久津がドラを抱えてファイティングポーズを取り続けて迎えた攻め時なのであり、唯一ドラの切り時なのである。

そして、結果は6p一発ツモ。

最終形が同じになっている打ち手はいるだろう。ところが、和久津のこの捨て牌と同じになっている打ち手は意外と多くない。

それが和久津の個性である。

超攻撃アマゾネスが、らしさ全開のマンガンでRTDリーグ2018デビューを果たした。


しかし、和久津はここからRTDリーグの洗礼を受け、3着で初戦を終えた。トップはたろう。

たろうは、345の三色イーシャンテンに2sを引くと、8sを打ち出した。

これはたろうらしい柔軟な1打。

この手牌、345の三色に決めてしまうと、かなり融通が利かない。

例えば、6pや6mなどを引いたときにツモ切るのかという話である。

それよりは、三色は崩れるが、いったんタンヤオにしておいて、その後の変化という抽選を受ける方がかなり有利だろう。

すると、1s、5pと引き、あっという間にこのアガリ。

三色に固執して2sや9sを切っていると、拾えていないアガリである。

たろうが見事なアガリで初戦をトップで飾った。


▼▼▼2回戦▼▼▼

2~4回戦では、3回連続でオーラスでの逆転が続いた。

2回戦では、まず勝又。

これは5s切りリーチで問題ないように見えるが、勝又の選択は5s切りのダマテン。

5sが3枚見えた使いにくい4s7sで、アガリを取りにいった。

対局後、勝又は「ここで5800でもアガることができればトップの可能性がかなり高くなると思った」と答えたが、その説明では若干足りないのではないかと思われた。

純粋にトップを取りにいくのであれば、やはりリーチの一手だろう。

しかし、例えば暗に「2着以上を確定させながら」トップの可能性を上げるという意味で言ったのであれば確かにその通りで、ダマテンになりそうだ。

結果、2600オールで2着以下を十分に引き離し、目論見通り下位を競らせる点数状況に仕立て、慎重にトップを取り切った。


▼▼▼3回戦▼▼▼

続く3回戦では、石橋がオーラスに3sツモで逆転トップ。

たろうの2連勝を防ぐと同時に、初戦のラスを帳消しにする。


▼▼▼4回戦▼▼▼

4回戦では、平賀がオーラスでオヤ番を活かした逆転劇。

この点数状況でオーラスを迎えると、3軒リーチを制して佐々木から5pで2900。


すると、次局に興味深い手順が出る。

勝又が北をポンしたところなのだが、みなさんならここから何を切るだろうか。

ホンイツを狙うならソウズかピンズ、真っすぐに打つとしても5mといったところか。

平賀の選択は打8m。

平賀「あの点数状況込みで、この手はホンイツでは間に合わない。とすると、切るのは5mか8mになるが、9mが2枚切れで薄くなっているため、役牌をポンしたらどうせ7m8mを外すことを考慮し、無理なく345の三色を狙える可能性を残して打8mとした」

これは面白い選択である。

まず、選択肢に8mが入っていること自体が面白い。

現状9mが薄いとはいえ、今後3s6sや2p5pも薄くなる可能性があり、その場合に6m9mを活かすことも考えれば、5mしか選択肢に挙がらない。

しかし、接戦という点数状況込みで、鳴き三色による1翻アップの価値を高く評価したのである。

その点が素晴らしい。

結果、三色にはならなかったが、達也のテンパイ打牌を捕えた。

確かに、あそこでホンイツに大振りしていては、間に合わなかっただろう。

高打点の印象が強い平賀だが、実はオヤ権をつなぐ1500の作り方が非常にうまい。

そんな一面にも注目だ。

対局後、トップの平賀が私のところにやってきて一言。

平賀「メガチェン(※平賀はラスを引いたら気持ちを切り替えるためにメガネをチェンジする)忘れたのにトップ取っちゃった」

知ったことか。

笑顔でスルーを決め込んだ。

RTDリーグ2018がついに開幕。

初参戦の和久津にとっては厳しいスタートとなったが、この最高峰の舞台でも全く動じないのはさすが。アマゾネスの体術に見惚れよ。


鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)


■2/5(月)21:00からWHITE DIVISION 5、6回戦、2/8(木)21:00からBLACK DIVISION1、2回戦をAbemaTV 麻雀チャンネルにて放送予定