喜布
おはようございます。
暮らし、味わう。
民藝と発酵をモノサシに
食を通して暮らしの豊かさを提案する
古民家セレクトショップ&カフェ テマヒマ
プロデューサー,バイヤーの太田 準です。
先日の美術館巡り東京出張、二件目は大倉集
古館で明日31日まで開催されています特別展
・芭蕉布~人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手
仕事~を観に行きました。沖縄本土復帰50周
年記念であり、人間国宝・平良敏子さん百寿
の記念でもあります。
喜如嘉の芭蕉布は、糸芭蕉からとれる天然繊
維を原料に、手紡ぎし、天然染料で染め、手
織りした布。薄く軽く、風を通す心地よい生
地、肌触りの良さは高温多湿の沖縄の暮らし
にもフィットするものでした。
今時こんな美しい布はめったにないのです。いつ見てもこの布ばかりは本物です。その美しさの由来を訪ねると理の当然であって、どうしても美しくならざるを得ない事情にあるのだとさえ云えるのです。
という表現から始まる柳宗悦「芭蕉布物語」
の中で、
女達は只務めとしてのみ機を織ったのではありません。織ることが一つの悦びでした。誇でさえあったのです。寄り合ってはどんなに柄や織りのことで話題を賑わせたでしょう。模様は一々名前をつけて呼びました。
という文章があるのですが、平良敏子さんは
新しい柄を考えるのが一番楽しいと仰ってい
るようです。感覚のようで、感覚だけでなく
絣の柄は緻密な計算が必要なので、両方を兼
ね備えてらっしゃるのでしょうね。また、
「夜がこなければいいのに」(正確は表現は違ったかもしれませんが)それほどに仕事が心の
底から好きでらっしゃるというのが素晴らし
いですね。
戦争中「女子挺身隊」の一員として岡山県倉
敷市で働いていた平良敏子さんは、戦後、倉
敷紡績に就職します。大原総一郎社長のすすめで元倉敷民藝館館長の外村吉之介に師事。織りや染めの基本を学び、また外村吉之介か
らは「織は心」「ものを見る目を養いなさい
」と教えられたと言います。1946年に沖縄に
戻り(その頃は沖縄はアメリカ統治下)、芭蕉布
復興を決意します。
平良敏子さんが考案した絣柄が沢山ありますが、その代表作の一つと言われるのが小鳥(トゥイグヮー)。バーナード・リーチをして、
「このツバメはまるで翔んでいるようだ」と
言わせしめたこの柄の前で、しばらく釘付け
になっていました。ツバメをモチーフにした
模様はこれまでも色々見ていたはずですが、
これは何か惹きつけられる、心揺さぶられる
感じがありました。そしてあるアイディアが
浮かんで頭から離れませんでした。うまくい
った暁にはまたこのブログでも披露させてく
ださい。うまくいったらいいなぁ。
抽象化され、リズム感をもって配置される模様の美しさとともに、天然染料ならではの色
合い、そして気の遠くなるほどの工程を経て
生まれる極細の糸、そこから作られる繊細な
布こそが魅力だと思います。テマヒマの庭に
芭蕉を植えているだけに特に糸を作る工程に
ついては信じられない思いです。
「あれは何ですか?」
「沖縄とかに生えてる芭蕉といってバナナの
一種です。あそこから芭蕉布言われる布が作られるのです」
といった会話が開店以来何度となく繰り返さ
れてきましたが、芭蕉布は知ってる人は知っ
てる、でもほとんどの人はご存知ないという
感じがあります。これからは、今回の展示会
のカタログや喜如嘉の芭蕉布保存会のリーフレットを使って伝えていければなぁと思います。
今日も11時オープンで皆様のお越しをお待ち
しております。週末にも関わらず、ランチの
ご予約が0件ですので、ご予約無しでもご案内
出来るかと思います。お客様が少ないとそんな芭蕉のこと、古民家の建物のこと、などを
お話出来たりしますね。あとメインディスプ
レイになっている石獅子についても。
それでは、好いモノ、好いコト、好いトキを
テマヒマで。今日も好い一日を!
喜如嘉の芭蕉布、略して喜布とブログタイト
ルにしましたが、平良敏子さんにとって、芭
蕉布は、喜布をなのかもしれませんね。