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noel's blog

もし1度きりしかシャッターを押すことができないとしたら、何を撮る?

2013.11.19 22:00


Excite Bit コネタ 2013年11月20日 07時00分 (2013年11月21日 06時56分 更新)

   
 そんな疑問から家族写真を撮り始めた写真家がいる。『家族写真は「」である。』の著者、浅田政志さんだ。浅田さんは様々な家族の写真を、その家族のストーリーやテーマにそって作品として撮り続けている。

例 えば、何万人に一人という難病を抱えた子のお母さんからその子に元気や勇気をあげられる写真を撮りたい、という依頼で普段は入院生活を余儀なくされている その子と一日遊び、疲れて寝てしまったその子と一緒に家族4人で寝転んでいる写真などだ。(この写真は書籍に掲載されていて、もっと詳細な内容と共に見る ことができます)

写真家さんがこういった形の書籍を出すのは珍しいなぁと思ったのと、浅田さんの写真がとても好きだったので、書籍発行の経緯などをインタビューさせていただいた。

――浅田さん、写真家さんが文章を書いて書籍を出すのは大変ではなかったですか?
日 頃から文章を書くことがあまりないので…… というかどちらかというと苦手で。けど文章で家族写真の持つ力が少しでも伝わるなら、それはそれでやる意味があるのかなと思いました。僕の人生で文章での 書籍を作ることなどこれからもおそらく無いと思うので、今だー!って思いで作りました。

失礼を承知で言わせていただくと、確かに文章としてたどたどしい部分もあったが、でもそれがまた浅田さんの人柄や温かさを感じさせるいい具合になっている。なんだか勝手にお友達の気分すらしてくる。

内容は、浅田さんが家族写真を撮るに至った経緯や、ご自身のこと、他のご家族の写真を作品として収めるまでの裏話や、東日本大震災で写真洗浄をしたボランティアの話もあり、また解説されている家族写真の作品も掲載されていて読み応えがある。

書籍を通じて一番に感じたのは、写真を撮る楽しさの他にアルバムを作るという行為の楽しさと大切さだ。

どこでどう間違えたのか、まっとうに未婚のプロとして日々の生活にいそしんでいる私などは、旦那さんも子供もいないので家族写真を撮り、それをアルバムにするなんてことが全くないのだが、両親に作ってもらったアルバムを見た楽しさは今でもすぐに思い出せる。
これは従弟のヒロシくんに自転車を取られて泣いているところ、近所のお姉ちゃんに遊んでもらっているところ、家族で行った江ノ島の海、など脳内で今でもい くつもの写真がスライドショーに映し出される。それくらいに小さいときの写真を見せてもらったときは、うれしかった。不細工だったけれど。

い まや未婚のプロである私は友人との旅行や、美味しいご飯、通りすがりの猫など書籍の帯に「犬、猫、カプチーノ上から、を撮る前にこれを見てください。」と 粋なコメントを寄せていただいている小藪千豊さんには怒られそうな写真ばかりとっていて、それをSNSに共有し、後はパソコンにデータとして保存して終わ りだ。

しかし、最近はそんな人が多いように思う。デジタルで気軽に写真が取れるからこそ、プリントアウトはあまりしない。アルバムは作ってみたいけど、イマイチどこから手をつけてはいいかわからない。

――浅田さん、そんな人たちにアルバムを作るきっかけになるアドバイスはありますか?
ア ルバムという形にするには、いくつか手間のかかることをしなければなりません。その手間をどう思うかが大切で、親から残してもらったアルバムを持っている 方なら良く分かると思うのですが、そのかかった手間も含めてもらった人は嬉しいのだと思います。だから一番はその手間を楽しめることが理想というか、手間 を惜しまず形にしたいと思えれば勝手にアルバムは作りたくなるものかな、とも思います。僕が「これだけはやってほしい!」とおススメするのは、とりあえず 自分の気に入った写真はプリントして箱にでもしまっておくことです。プリントにさえなっていればいつの日かその写真を見返して感動することも必ずあると思 います。

写真を貼りだして5枚で飽きたらどうしよう……と超絶飽き性の私は、先のことを考えて躓いてしまっていたが、とりあえず自分の気に入った写真をプリントアウトして何かに保管しておく、ということなら確かに私でもできそうだ。
そしてデジタル機器で見ている写真とプリントアウトした写真では楽しみ方がまた、違うような気がしている。

最後に、「書籍を読んでもらい たい方はいますか?」と浅田さんに質問したところ、「一番アルバムを作る層とされている小さいお子さんがいるお母さんやお父さんたち」という回答をいただ いた。きっと人生で一番家族が濃密に過ごすであろう日々を記録に残す作業は、少し面倒くさくて、とても楽しいものかもしれない。

もし1度きりしかシャッターを押すことができないとしたら、何を撮る?

このテーマを考えることはきっと、自分の中でそのとき一番大切にしているものを再認識する作業と同義語かもしれない。私はきっと、今私の周りにいる大切な人たちをいっせいに集めて写真を撮るだろう。いつの日か、その写真を見て思い出すために。

もし1度きりしかシャッターを押すことができないとしたら、あなたは何を撮るだろうか?そのテーマを胸に『家族写真は「」である。』を読んでもらえたら、少しだけ毎日の過ごし方が変わるような、そんな気がする。