学習指導要領改定、主権者教育と領土問題の充実に期待
2022年度から実施される高校の新学習指導要領の概要が明らかになり、主権者教育や安全保障、領土問題などのような現状の国際情勢や日本が抱える多くの問題を扱うことが、今回の大きな特徴となった。
現実を直視した教育改革
学習指導要領は小中高の学習基準を文部科学省が定めるもので、10年ごとに改定されている。教科書編集などの指針となり、法的拘束力を持つ、大変重要なものである。
今回は全面改定の予定で、文部科学省は2月中旬から意見公募を行う予定だ。
今回の改定での大きなポイントは主に高校教育において非常に意味のある改定になりそうだ。「公民」の中で必修科目として新設する「公共」は、将来の政治参加に向けて基礎知識を養う内容になりそうだ。討論や模擬選挙を通して政治に参加する資質を養う。
歓迎すべきポイントは、現実に起こっている国際情勢での動きや、安全保障問題、領土問題、国際貢献などについての事象を基に、情報の公平な判断力を磨く「メディア・リテラシー教育」も実施する。
さらに近代日本史と世界史を融合した「歴史総合」を新設。「世界から見た日本」はどのような国で、どうあるべきか、広い視野で歴史を学ぶ狙いがあるようだ。
今後はさらに教育の充実が欠かせない
今回の指導要領改定をJILは歓迎したい。「国の宝」である子供たちの教育充実は待ったなしの状況であるとともに、現実の事象を公平に捉え、考える力を養うことは不可欠である。特に今日のようなグローバル化した社会では、状況に適応した判断が必要とされるので、こうした教育を実施することは前向きなことである。
学習指導要綱には法的拘束力がある。ということは法律の制定機関である国会に大きな責任が生じるとは言うまでも無い。つまり、「政治が教育の充実に左右」するということだ。安定した政治と国家観がしっかりしている指導者でないと、教育改革は逆に危うい側面もある。
安倍首相は「戦後レジームからの脱却」として教育基本法を制定した。そのなかで、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」という記述がある。
上記の内容は一部の論者では「愛国心」に関する記述だという主張があるが、それはあまりにもお粗末な分析だろう。「伝統と文化を尊重する」その言葉は言うのは簡単であるが、では全ての日本人がそのように生きているかは疑問である。
日本にはどのような伝統があり、日本人の精神はどのようなものなのか。先人たちが築き上げたこの経済大国・技術大国はどのような道を辿ってきたのか、その答えの先に日本人としてのプライドや誇りがあるのではないだろうか。
今回の改定で、安全保障や領土問題についての授業が増えていくことになる。その時に正しく公平な目線で、なおかつ国際的な視野で生徒に指導する教育者自身の教育も必要になる。
「子は宝」である。国の将来を担うのは間違いなく今を生きる子供たちである。世界で活躍する大きな人物が輩出できるよう、教育の改革は今後も続けていくべきだろう。
編集長・Mitsuteru