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藤村邦&渡辺俊之の日々

2008年

2022.07.30 08:52

 村上春樹の短編小説に「トニー滝谷」がある。2008年に映画化されて坂本龍一が音楽担当している。この映画は何回も見たし、音楽も何度も聞いた。トニー滝谷という孤独な男の物語である。トニー滝谷は彼女に出会うまでは「孤独」という言葉は知らなかった。しかし、彼女は死んでしまう。一度「愛」を知った人は「孤独」が耐えられなくなる…というような話しである。

 「なんで自分はトニー滝谷にはまったのだろう」と思い返すと、母が亡くなったのがこの年の2月であった。

 それから思い出しはじめた2008年という年

  2008年に「希望のケア学」という本を執筆していて、それは明石書店から2009年に刊行されているが、なぜか「自分の手もとにない」のである。良い本だと言われることもあるが、どうも、当時を振り返りたくないという「抵抗」が働いているのであろう。母親への死別感情の昇華で書いたような内容だからもしれない。

 しかし10年以上経っても読んでくれてる人はいるようだ。先月、山口県臨床心理士会で呼ばれオンライン講義をやったが、主催者は「希望のケア学」を読んでくれていた。

 今日の午後、群馬の家の草むしりをひさしぶりにした。なんだか「草むしり」と母の思い出が繋がっているのだろう。部屋に転がっていた村上春樹を手に取って「トニー滝谷」を読み、動画を見た。うーん、やはいこの映画は悲しい。そして坂本龍一の曲は淋しくて美しい。そういえば坂本龍一もがんサバイバーだった。長生きしよう。