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2018.02.03 19:44

黒軍抜けてすぐ


海に行こうという話になったのは

どちらからか覚えていない。


「海ってさ、実は初めてだよね。」


お前は慣れない三つ編みをして

可愛らしいワンピースを着ていた。


海岸線での散歩の最中にお前は言った。

オレは興味が無さそうな声で

相づちを打ってしまった。


おまえは水平線を眺めていた。


オレの居ない方向へ、ただ遠く。


あの辺に神様がいるのかなあと

呟いたのが聞こえた。


オレはいないな、とだけ返すと、


そうだよね。


とよくわからない笑みだけ返された。

お前は靴が煩わしくなったので裸足になると、

オレも真似して裸足になった。


砂が痛いだの楽しそうに

笑いながら言っているお前が

いつもよりも子供っぽくみえた。


「高校生になったら部隊とか決まるんだよね。」


「・・欠番が出たら今も部隊に入れるんじゃないか。」


「ひどーい。」


「しょうがないだろ。」


「そっか。そうだね。」


「オレが死んだら、そんな感じでいいからな」


「私も死んだら、そんな感じがいいかな。」


「そうか。」


「うん。・・死ぬかな。」


「・・死ぬかもなあ。」



オレは歩くのをやめて、座り込んだ。


お前は少し先まで歩いてから、

海の方へ歩き出した。

水に足をそっと伸ばして、


つめたー、と声を上げてこっちを振り返った。

オレはうんうんと首を上下に振るだけ。


お前は更に進んでいく。


どんどん、水平線に向かい、

それまで両手で掴んで持ち上げていた

スカートの裾をおろした。

スカートは容易く重力に従って

海水の中へ落ちた。

もっとお前は入る。


海が初めてだの高校の話だの、

もっとよく聞いておけばよかったと

かげろうがフラフラと

宙を漂う様に進むお前をみて思った。


膝より上のあたりに海面がある頃には、

オレの目からは手乗りの人形サイズになっていた。

そこでまたお前は振り返った。

何かするわけでもなく、

ただ振り返り、たっていた。


オレも立ち上がって、ゆっくりだが

お前のいるあたりまで歩いていった。


初夏の海水は生温かった。

海底の泥を足でかきわけながら、

お前の元へと向かった。


お前はオレを見上げて、

またさっきのように死ぬかなあと呟いた。

オレはお前の両手を絡めとり、

体を引き寄せて、額を合わせて言った。

死ぬかもなあ。

額を合わせながら、目を開いた。

オレの足下にはゆらゆらと揺れる

海面の中の自身とお前の足だった。

それはいつか消えてしまう一部の様にも

思えてならなかった。



きえていこうか。

ふたりならへいきだ。