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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

帝国の時代17-デュナンと国際赤十字

2022.07.30 11:37

両軍で4万近い死傷者が出たソルフェリーノの戦いは「国際赤十字」結成の契機となった。ナポレオン3世に会うためその場に遭遇したアンリ・デュナンは、その後1週間、地元の人々と共に敵味方なく救援活動にあたった。なぜ敵を助けるのか、という問いに彼は「人類皆兄弟」と答えた。

デュナンは、スイスの名士の子として厳格なカルヴァン派の教育を受けて育った。銀行員として働くが、アルジェリアで現地人の差別と貧困にショックを受け、退職しそれまでも行ってきた慈善活動に身を捧げ、1855年にはYMCA世界同盟設立に尽力した。皇帝に会おうとしたのもアルジェリアの事業のためである。

1862年にデュナンは、「ソルフェリーノの思い出」という本を出版し、その中で戦争負傷者を救助する国際的な組織と法律の必要性を提案した。この呼びかけにユゴーやディケンズも共感し、そして63年2月に「国際負傷軍救護常置委員会(五人委員会)」が生まれ、16カ国が参加して国際赤十字が生まれた。

しかしそれからデュナンは事業に失敗して破産し、20年間消息不明となった。95年スイスのハイデンに居たデュナンを新聞が書いたことで、再び思い出され、1901年彼は第1回ノーベル平和賞を受賞した。しかし賞金は使わず没後寄付した。赤十字平和宣言には「各国民が団結して良心に従って行動するならば戦争は避けることができる」という彼の言葉が記されている。