CBX400F RSC
CBX400F RSC
CB400four に続く二代目の400 マルチとなったCBX400F 。先代のOHC4気筒のコンベンショナルなレイアウトから一新されたパワーユニットは、DOHC16バルブのハイメカ・モデルとなった。カムシャフトはレース経験で生かした高回転出力タイプ。軽量・コンパクトを開発のコンセプトとして重点に置き、ノーマルのまま、クラスにおいて最速のモデルに仕上がっている。シャープなエンジン特性と、軽量な車体にバランスさせて、サスペンションにも革新的なメカニズムを採用している。フロントにはアンチノーズ・ダイブ機構。リアには、エア調整で加減圧の図れるプロリンク・サスと、グレードの高い仕上がりが注目されていた。また、世界初のベンチレィテッド・インボード・ディスクと2 ポットキャリパーも特徴的な仕様として採用されている。ディスクは、一般的なステンレスとはせずに、
鋳鉄を採用してハードな効き味を持たせている。
レース用のモデルとしてもレベルは高く、当時のスーパーストリート400 では、カワサキKZ400(Z400GP) 、ヤマハXJ400 と壮絶な死闘を演じていた。鈴鹿4 時間耐久では、TT-㈽のレサーを相手にSS-400クラスのCBX400Fが上回る成績で上位を占める程だった。チューニングの基本的な方法を記述しておくが、あくまでもレース用としてのもので、ストリートでのセッティングの目安とはしないでおいてほしい。まずは、新鮮な空気の導入を図ること。吸入の抵抗を減らし、いかに多くの空気とガソリンをスムーズにシリンダー内に送り込むかである。キャブレターを、吸入抵抗の少ない内部構造をもつCRキャブ、或いはフラットバルブのFCR に変更。作動も確実な強制開閉が特徴で、アイドリング機構も組みこまれており、10% 前後のパワーアップが図れる。次にはハイカム、つまりハイリフトのカムアングルを持つシャフトの採用である。バルブの開閉間隔を多くすること、つまり、長い時間バルブを押し込んで、多くの混合気を吸い込み、同様に吐き出す量も増量してやらなければならない。また、両方のバルブが同時に開いているタイミング( オーバーラップ)も長くなるわけだ。RSC では、CBX400F 用のレース用カムも用意していたが、これは、クロスレシオのミッションや、レース用のエキゾーストシステムに変更して、初めて効果の出るもの。この組み合わせでは、4000rpm 以下では125cc 以下のパワーしか無く、ピーキーな出力特性となる。最高出力は55ps/12,000rpm、最大トルクは3.3kg-m/10,000rpm と、20% ほどのパワーアップが可能だった。更に、混合気の通過するインテーク・ポートやエキゾースト・ポートは、リューターで磨き上げ、流速効果を高める必要もある。但し、CBX の場合、ノーマルでも十分につめてあり、多少広めにして、丁寧に磨き上げだけで良い。あまりツルツルの鏡面ではなく、多少のザラ付き位に仕上げ、流速を大げさに変更することは避けたい。ただし、バルブ・システムは削り込めるだけ削り込んで、軽量化と動きのシャープさを追求した方が良さそうだ。圧縮に関してはRSC のキットでノーマルの9.8 →10.7まで高めることが可能。ハイコンプのピストンの変更やシリンダーヘッドの面研で行う。当然、ガスケット類も強度アップが図られたものを使用したい。ピストンヘッドの形状が変更されると言うことは、燃焼室の形状も一部変更されるということ。
通常は、ペントルーフ型と呼ばれる、F-1 マシンにも採用されている燃焼室形状がベストとされているが、必ずしもこのタイプが一番とも言い切れない。燃焼速度が早ければ低回転域ではトルクが出にくかったり、未燃焼ガスが溜まる傾向もある。これとは異なり、ピストンはノーマルでも、振動抵抗の少ないコスワース・タイプと呼ばれるものも採用されている。これは、イギリスの4 輪のチューニングで有名な「コスワース」が好んで使用していたもので、スカート部分が極端に狭く、ピストン・ピンと直角方向にだけ、わずかにシリンダーと接触するようになっている。CBX400Fには、RSC からのキットパーツで用意されているものを使用することを勧める。点火方式に関しては、CBX400F はフルトランジスタ点火を採用。ポイントが無く、トリガーと呼ばれるコイルがあり、そこに電磁気が生じ、タイミングを合わせた鉄の板などが電気的にタイミングを決める。ちょうどコンポのメインアンプのように電流を増幅して、点火コイルに電流を流し、点火するシステムだ。CDI と呼ばれるものは、コンデンサーに電気を貯めておいて、やはりトリガーでタイミングをとってサイリスタで電気的に流す方法。旧タイプのポイント式( バッテリー/ コイル) やフライホイール・マグネットよりも理想的( 高回転型になればなるほど) とされている。
RSC キットの組み込みでは、カムタイミングがかなりピーキーになることと、標準の点火プラグの熱価が高くなることから、一般路での使用は不可能と成る。さて、最期にエキゾースト系だが、CBX400F に採用されているのは、4into2のもの。スタンダードでも十分に効率の高いものではあるが、やはり4into1のタイプに変更したい。ヨシムラの「サイクロン」か、モリワキがベストとなる。標準装備のオイルクーラーも、レース使用となればやや役不足。大型のものへの交換も必要になる。 CBX400F 用にRSC で用意されていたものは、クロスの6 速ミッション、サスペンション・キット、バックステップ、ダウンハンドル、カウリング、シングル・シート等がフルセットと豊富な内容だった。