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学び直しエンカレッジスクールの課題

2018.02.05 07:21

都立秋留台高校の視察に行ってきました。

東京都のエンカレッジ指定校2校のうち1校であるこちらの学校は、平成12年には生徒の半数近くであるである141名が転退学を選択していたのに、平成15年にエンカレッジスクールとして1クラス35名に対し担任二人制をとり、様々な学習支援や生活指導も行うことによってきめ細かい指導を続け、平成25年からは転退学者の数も20名前後で推移するという素晴らしい変化の結果を出し続けている学校です。


高校の入学試験には面接と小論文があり、試験受験時点の生徒さんの知識量や勉強の能力を測るよりも熱意ややる気を考慮して入学させて行く、ということですが、実際にこの学校を支えているのは何よりも先生方の熱意と献身的な指導であるということが足を運んでみてわかりました。これについては若く体力もある先生方がたくさんいらっしゃって、心強く頼もしく思える反面、一人一人の先生に課せられている重責の甚大さに、先生方の心身が心配になりました。


平成15年から20年の5年間で、のべ10数人の教員が病欠や病気休暇申請、また異動願いの提出を出されたそうです。

担任の先生方は昼休みも昼食をとることなく、生徒の生活指導に入ります。

生活指導と担当授業が続いた場合、お昼を取るのは16時ごろになるということです。

さらにそこから生徒さんの部活動指導などがあり、19時20時ごろから翌日の授業の準備をします。そのあと、22時半ごろに保護者対応などを(保護者の方からその時間を、と希望されて)行うこともあったといい、これが毎日のことであるとするならば、どんなに体力がありやる気のある先生でも体も心も疲れきってしまうのではないかと思います。


生活指導の先生や校長先生の話を聞いて感じたのは、このエンカレッジスクールが普通高校としてのあり方ではなく、特別な支援が必要な学校の範疇に入るということを想定して教員体制や外部人材配置の体制見直しを行っていくべきなのではないか、ということです。


週に一度だけ勤務されるスクールカウンセラーは朝から夕方まで隙間なく生徒からの相談を受け続けている状況で、フィードバックも十分にできていない。

生徒さんの中に学習障害や発達障害の診断をお持ちのお子さんもいるということでしたが、心理療法士や精神科医が常駐してくださってもいいくらいです、と生活指導の教員の方からの悲痛な訴えがありました。今現在は教員が一人ずつ、生徒さんの生活指導も行っている状況ですが、特別支援学校のように1クラス10人までの生徒さんの数ならまだしも、2名で35人では、対応が追いついていかないのが現状のようです。

また、夜間や土日に保護者訪問を行う教員の負担も非常に大きいという訴えがありました。教員の方に全てを担っていただくには、物理的に現実的に難しいという現状が伝わってきます。

生徒さんたちは、よく集中して取り組まれていました。

先生たちは、若く快活な方が多く、非常に力強い指導を行っていたように思います。


けれど、この学校が抱えている問題は教員の方だけで向き合うべき問題とは考えてはいけないものが多いようでした。例えば発達障害、と一言にいっても、広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥・多動性障害など症状と対策は多岐に渡り、診断には小児科や児童精神科などで行動観察や聞き取りも含め総合的に専門家が判断して行うということになっています。それに対する教育的療育も、例えば認知や言語に困難があると、コミュニケーションスキルや社会的スキルを伸ばして行くためにまずは生徒の周辺環境を整え、本人のみならず保護者の子供に対する適切な対処方法を指導して行くことが求められます。何が障害になり、何が障壁でその生徒さんがコミュニケーションに困難を感じているか、学習に難しさを感じているか、それは個々の違いがあり個別の対応が求められるということでもあり、そのニーズの大きさと多さを考えると、現在の体制ではとても教員の皆さんが納得のいく指導を全員に行き渡らせることはできないと考えておられるのです。


生徒さんの近くで指導を続ける教員の皆さんからの訴えは、非常に切実で深刻かつ急を要する事態であるということが伝わってくる内容でした。

一方、ベーシックという公文式の教室では、教員3名に学習支援員が2名で取り組んでいることもあり、わからないままに来てしまったところを改めて先生に聞いて行くことができる素晴らしい授業形態であるとも思いました。

秋留台高校にはここ数年で非常に安定した数の入学希望者が集まり、中にはスカイツリーのあたりから通っている生徒さんもいらっしゃるとのこと。


東京都の教育の画期的な取り組みの一つであるとも言える、このエンカレッジスクールのさらなる改善と充実のためにも、自分からも外部人材の活用や支援員の増員を求めてゆきたいところです。


都議会では第一回定例会や予算特別委員会に向けて、様々な準備が進んでいます。東京都全体で、全ての児童・生徒さんの学びが充実したものとなって行くように、取り組んで参りたいと思います。