名目GDP拡大⇒財政健全化|令和四年度『経済財政白書』
【経済・財政報道】 内閣府(総理:岸田文雄)は、令和四年七月二十九日に本年度「経済財政白書」を公表した。既報。
第三節『財政の現状と課題/第一章「経済財政の動向と課題」』では、経済成長の実現・持続可能な社会保障の構築・財政健全化の一体的推進が重要、とした。日本経済の重要箇所なので報じる。
<名目GDPの重要性>
「名目GDPの拡大は、税収増を通じてPBの改善に寄与し、更に分母の拡大を通じて債務残高対GDP比の安定化に繋がってきた。経済あっての財政であり、経済をしっかり立て直し、名目GDP成長率を高めつつ、財政健全化を進めていく事が重要である。」と実質GDPではなく、名目GDPから論じている。
これは名目GDP拡大⇒財政健全化の順番であり、報道府の主張に一致。
「(名目GDPの)成長力を高めていく為には、これまで低い寄与に留まってきた資本の伸びを高めると共に、今後、一層の人口減少と少子高齢化の進展が見込まれる中で、労働力の確保と質の向上が必要である。」と、資本と労働力(量・質)に着眼。
資本の伸び
先ず前者の資本の伸びから。「資本の伸びを高めていく為には、これまで低調に留まってきた民間投資を如何に促進していくかが課題となる。特にGXやDX、そしてそれらを支える人材育成には長期に亘る投資が求められる。
政府がこれらの分野への投資拡大に継続的に取組むという姿勢を示すと共に、民間の予見可能性を高める事により、民間投資を誘発していく事が重要である。」とB2G優先を記す。
欧米を例に「米国やEUでは中長期的な視点からインフラ投資、環境投資等に係る多年度の投資計画を策定し、成長分野への投資を進めており、財源を同時に確保しているケースもある。我が国でも、こうした海外の取組みも参考としながら、必要な財源を確保しつつ、官民が計画的に重点分野に投資する事が可能となる経済財政運営を中長期的に行っていく必要がある。」と岸田内閣は参照。
労働力(質・量)
後者の労働力では「労働力の質を高めていく上では、岸田内閣が重点課題として掲げる人への投資が鍵を握る。また、労働力の量を確保していく上で社会保障制度が果たす役割は大きい。予防・健康づくりを推進し、希望する者が何時までも働ける環境を整備すると共に、働き方の多様化に対応した制度を構築し、多様な主体の活躍を促していく事が重要である。」と、質=人への政府投資、量=社保制度の改善とした。
「また、これまでの社会保障に係る負担増の多くは現役世代が担ってきた。現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、能力に応じて皆が支え合う事を基本とする全世代型社会保障制度を構築し、現役世代の活力を高めていく事も重要な課題である。」と安倍・菅内閣と同様にシニア優遇を認め、是正する姿勢。安倍内閣より以前の内閣は、現役世代の負担増を認めなかった。その為、現在の若者・若手は厳しい。未だ是正の端緒。
末尾に「この様に経済と財政、社会保障に関する取組みは、それぞれが相互に影響を及ぼすものである事から、一体的に推進していく必要がある。」と括った。
『経済・財政・社保』の連関
この点は若者・若手が政治を考える際に覚えられたい。『経済・財政・社保』の三大要素はイコールの関係でないものの、連関している。
「経済を良くしたい」「財政を良くしたい」「社保を良くしたい」をバラバラに考えては、最適解に辿り着かない。氷河期世代以上の主権者と専門家は、バラバラに考えて主張している為、実現しても部分最適となり、全体最適とはならなかった。
これが正に日本の経済財政の課題である。若者・若手が学ぶべきは「経済(経営・技術)」「財政(簿記・投資財務)」「社保(医療・年金)」の順番となる。世界第三位の経済大国であるならば、その課題難度は世界三位である。
最適解に辿り着けるのは、氷河期世代・後期以降の主権者であろう。特にゆとり世代に期待したい。相当な頭脳(エリート)が求められている。
画像:第3節 財政の現状と課題、第4節 本章のまとめ/内閣府