「左利き」で見るパルL
突然ですが、私は左利きです。特にサッカーでは左足オンリーで、右で蹴ろうとするとフォームからして出来ないレベルです。
世の中は左利きが少数派で、ドアノブや改札など左利きには生きるのが辛いことがあふれています。
Wikiの記述を見ると
1977年の統計では成人人口の8%から15%が左利きである。また、わずかながら女性よりも男性の方が左利きが多いという統計結果もある。この割合は古今東西を問わずほぼ一定である。
だそうで、女性の方が左利きの確率は少ないみたいです。
パルセイロレディースの2017年シーズンの所属選手で、左利きは3人いました。
GKの林﨑選手、左SBの小泉選手、そして途中加入の中野選手です。
GKに関しては、シュートストップ時の得意な方向が逆になったりはするものの、それほどのメリット・デメリットはありません。
DFに関しては、利き足の影響が大きいです。特にCBよりSB。サイドに関しては、攻撃側のポジションでは利き足と逆サイドに配置されるのがトレンドの一つ(左に置かれるクリロナ、右に置かれるロッベン、本田など)ですが、守備側に関しては利き足と同じサイドに配置される(左利きなら左SB)のが一般的です。
というのも、サイドバックはマルセロなどの例外を除き、攻撃参加時はドリブルで内に入ってリスクを冒すことはあまりせず、サイドを突破して形はどうあれ中央にボールを供給し、守備に戻るか再度のサイド攻撃(ダジャレではありません)に備えます。タテに走っている状態でクロスやグラウンダーのボールを蹴るには、やはり利き足と同サイドにいた方が圧倒的に都合が良いのです。前述の「逆足サイドアタッカー」の選手たちは、一度止まって守備者と対峙したりすることが多く、利き足でない側が不得意な選手ほど、持ち替えて切り返したり、タテに抜けられてもクロスは上げず利き足でマイナスに戻したりすることが多いです。その代わり、巻いて逆サイドを狙えるという大きなアドバンテージを得ることになります。
また、戻りながらの守備の時、同サイドに配置された選手の方が外にクリアし易いという利点があります。オーバーヘッドや飛びつきながらの無理な体制でクリアする時、右利きの左SBの場合、後ろ向きだと右にサイドライン、蹴るのも右足で、人間の体のつくりの都合上、体の内側=ピッチ内にボールを飛ばしてしまう確率が増えます。クリアという点では危険です。左利きの左SBの場合、後ろ向きだと右にサイドライン、蹴るのは左足で、外に逃げ易くなります。逆サイドだと全く逆になるので、どちらにしても利き足と同サイドの方が守備者としては適性が高いといえます。同様の理由で、「ポジショニングでサイドに追い込み、タテも切って奪う」という過程も利き足と同サイドの方がスムーズです。
話が脱線しましたが、左サイドバックは特に左利きが有利であり、その点で大卒新加入の小泉選手が2017年シーズン公式戦を全試合出場することになったのは、守備的ポジションの選手で唯一の左利きだという必然性があったのかもしれません。
そして、もう一人の左利き、中野選手。
彼女について、本田監督はリーグ戦後のインタビューで「変幻自在の選手」と評し、周りの選手がこれを活かすことができなかったという話をされていました。どうしても、レンタル移籍した横山選手のプレースタイルと重ねてしまい、中野選手本来の良さがチームの中で出せなかった。これは夏場から秋にかけて、苦しんでいた時期のパルLを観戦した方なら、少なからず誰もが感じたことではないでしょうか。
様々な要素のひとつとして、中野選手の「左利き」があるのかなと思います。本来、中央の選手で左利きというのは守備者も不慣れであり、俗説とはいえ良く言われる「左利き独特の」感性はメリットになるはずのものです。ただ、ボールの受け手と出し手という関係で考えると、右利き相手のパスに慣れている選手は、左利きの選手に対してもいつもの感覚でパスを出します。出し手も受け手もノープレッシャーのぬるい状況は中盤ではなかなかないので、パスはずれます。ずれることを気を付けた時、無意識の内に「右利きの選手がコントロールしやすい」右足の前方にパスが届くようになると思います。しかし、受け手の「左利きの選手」にとっては、そこは軸足の前方であり、右足でコントロールした後左に持ち替えたり、半身に捻って左足でトラップするなどの一工夫をする必要が出てきます。そのわずかな時間を守備者に利用されてしまう・・・。という仮説。如何でしょうか。
なぜこんなことを考えていたかというと、パルセイロレディースは前年の2016シーズン、左利きは林﨑選手のみでした。つまりフィールドプレイヤー全員が右利きだったということです。相手と対峙する機会の方が多く、またボールを貰う形も自分から見て右からボールを受けるパターンが圧倒的に多いサイドバックと違い、様々な体勢、シチュエーションでボールを受けなければならない中盤前~セカンドトップ、中野選手が担ったポジションで、味方にとっては年単位で経験していなかった「左利きという異分子」が置かれた形になったのではないかという仮説です。
プレーしている選手にとっては気にも留めないことかもしれませんが、端から見ていた側として、そんなこともあるのかなあ程度の話でした。