英雄サラディン5-エルサレム軍撃破す
2018.02.06 14:10
なんのこたないエジプトのシャワールにまんまと嵌められただけのシールクーフは、さっそく第2次エジプト遠征を上奏し、ヌールッディーンも自分の精鋭を与えて援助する。シャワールは本格的にエルサレムと同盟を組もうとした。しかしエルサレム王アモーリーは、シャワールは信用できないので、カイロまで押し掛けた。
当時のエジプトは、バグダードが混乱に陥ってから、貿易ルートが紅海のアデン(イエメン)から、ナイル川を通り、アレクサンドリアで、イタリアへ輸出するように変わり、繁栄を極めていた。物品は胡椒、香料、陶器等である。ということで、栄華を見せつけるため、王宮では、鯛やヒラメの舞い踊りじゃないが、ともかく華麗なパーティをやった。
ところが、アモーリーは意に介せず、直接カリフ自身が誓えと要求、絹の手袋も脱ぎ、素手で誓え、と言った。王宮は騒然としたが、シャワールは「なんせ田舎侍なもんで」ととりなし、との通りとなり、ともかく異教徒同盟がひとまず成立した。
シールクーフは、勇んで戦さに出発。依然として気のすすまないサラディンも主命により同行した。シールクーフはわざと迂回して、疲れきった様を見せ、エルサレム軍をおびき寄せ、1167年3月、アル=バーバイン近郊で戦闘、サラディン率いる中央軍が退却したように見せかけ、深入りするところを、左右両翼で包み込んでせん滅した。アモーリーは辛くも、カイロに逃れた。
下はギュスターブ・ドレ作「エジプト遠征」