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偉人『ジャック・ホーナー』

2022.09.02 00:00

偉人として取り上げてきた錚々たる偉人の中にご存命のジャック・ホーナー氏を取り上げていいのか一応悩んだのだが、やはり恐竜といえばアメリカの古生物学者の第一人者であり、ジュラシック・パーク全作品のテクニカルアドバイザーを務め、主人公アラン・グランド博士のモデルでもある彼しかいないとの考えに至ったのである。

1946年6月15日アメリカのモンタナ州生まれの彼は、実はディスレクシアである。文字を読み書きすることができない障害を抱え、優秀な父からは「お前の人生は終わっている」と蔑まれ、学校では同級生から「のろまだ、怠け者だ」と言われ彼を理解しようとする教師も少なかったというのだ。このような扱いを受けていたにもかかわらず彼を見放すことなく支えたのが母親であった。8歳で母と共に訪れた採掘場で自ら採掘した恐竜の骨に興奮し、持ち帰った骨を調べるために図鑑を手に実物の骨を図鑑の絵や写真と照らし合わせ、やがて知識を得るために図鑑内容を理解しようと努め恐竜の骨格構造を覚えていったのである。

彼は初めて好きなものを見つけ自分の居場所だと感じる恐竜の世界にのめり込んだ。読み書きは知識を得るための良質な手段であるが、それを断たれた場合であっても彼は視覚情報を最大限に使い好きな世界を広げたのである。想像してほしい。学校で文字が読めないことで長い間苦しんだ彼が、恐竜の研究が現代のように進んでおらず写真や図解が少なく文字が多くを占める図鑑を開き、理解しようとすることは容易なことではなく相当な努力が必要であったであろう。

しかしその困難を乗り越えることができたのは、やはり困難に対する苦しみを上回る夢中になれる恐竜の世界を見つけたことにあり、その機会を母が設けたこと、そして何より自らの努力によって科学コンテストに優勝し自信をつけたことにある。

やがて好きだと自覚し夢中になったこの恐竜の世界は、人生のライフワークとなり生活の糧を得ながら好きな事に熱中し、アメリカで有名な古生物学者とまで言われるようになったのである。

ホーナー氏は自らの言葉で自分自身の能力についてこう語っている。

「私の歩みはとてもゆっくりで時間がかかる。コンテストでは準備に相当な時間をかけ、他者が考え付かないようなことを考えようとしていた。」

この言葉に彼の歩んできた道が健常者とは異なり、発想も常識に囚われていないことがわかる。彼だからこそマイアサウラという新種の恐竜が子育てをしていたという集団営巣地の発見で恐竜の社会性が明確となったのである。

このような活躍が認められモンタナ大学への入学が許可されたが、つまるところ失読症の障がいが足枷となり、知識を深めることはできても全ての科目で落第となり卒業には至らなかった。学位がなければ研究者になれないことから他大学での採掘の職を得たのである。その採掘で彼の発見の代名詞になる恐竜の子育ての発見に至るのである。

一時は恐竜の研究者としての道が閉ざされれてしまったかのようであったが、この世紀の発見により再度研究の道に戻ることができたのである。

彼の人生から子育てについて考えてみよう。

子供にとって夢中になれるものを見つけてあげるこが必要であると常日頃思うのであるが、それには多くの経験をさせることで子供の選択肢の裾野を広げておくことや興味を持ったことを掘り下げる機会を与えることで子供自身の中で化学反応が起こると考える。勿論個性の持つ子供については将来の糧を得るためのことも考えておく必要がある。現代社会は職業の選択肢が広がり新しい職業も誕生している。そう考えるとジャック・ホーナー氏のような人に人と異なる考えや発想を活かし、行動すると自分自身を最大限に活かす人生が待っているかもしれない。

恐竜好きな子供たちが必ず見ている映画『ジュラシックパーク』は鶏の卵に恐竜の胚を遺伝子操作することで蘇った恐竜たちが世界中で大暴れするという映画である。一人の障がいを持つ古生物学者の監修でよりリアルな恐竜の世界が表現されているかということを知れば、一人の人物が見えて、知り得なかった事実や職業を知り、1つのことに夢中になることの素晴らしさが見えてくる。そのような視点で『ジュラシックパーク』シリーズの完結編『ジュラシック・ワールド  新たなる支配者』を鑑賞し、登場する古生物学者グラント博士の奥にいるジャック・ホーナー氏に興味を持ってくれると、単なる恐竜映画の裏に隠れている新たな視点でのものの見方ができる。これもまた人とは異なる映画鑑賞の道を開拓した事になるのではないだろうか。ホーナー氏の語る『人とは異なること』の扉を開けてほしいと思うのである。