絵本『6600万年前…ぼくは恐竜だったかもしれない』
2022.08.28 00:00
これまでの恐竜絵本とは一線を画した深く考えさせられる作品です。始まりはドラコレックスの親子が食べ物を求めて移動している最中に隕石が地球に衝突し、恐竜が絶滅するテーマのこの物語は恐竜の父親が妻と子を必死で守る家族愛の内容です。
この物語をいろいろな切り口から見方を変え考えてみましょう。例えば地球の環境破壊やウクライナの戦火で妻や子供家族のために国を守るために国留まる人々、天災や事故から人命救助にあたる人々、家族の病気や健康を祈り行動する人々などに置き換えて作品を深読みすることができます。
この本を読んでいると親子の絆の強さや揺るぎない愛情の深さを感じると共に、現代に置き換えて考えると人間の浅はかさや愚かさ、無力さをCANさんの水墨画のような絵の迫力にハッとさせられ、今何をすべきなのか立ち止まり地に足がついているのか考えさせられます。
どのようなことが起ころうとも「とうさんが、まもるからな」という台詞は、この絵本を読み動揺する子供たちに安堵感を与えてくれます。
6600万年もの壮大で壮絶な出来事から今生きている家族の姿に着地点を見出しこの物語は、恐竜の世界にとどまらず現代のわたしたちがより深く心に刻み込まなければならない人間らしさに立ち戻してくれる作品です。シンプルに人間が大事にしなければならないものとは何であろうか。常にそのピースを忘れないようにこの絵本を読み返し、子供たちの心にはめ込んでほしいと思います。