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紅く色づく季節

秋の帰り道

2022.08.09 10:14

【詳細】

比率:男1:女1

現代・ラブストーリー

時間:約10分


【あらすじ】

急に寒くなってきた秋の夜の帰り道。

久々のラーメンを堪能した二人は、女子の食欲について語ります。

秋って美味しいものがいっぱいありますよね。


【登場人物】

めい:20代。

   健斗と同じ職場に勤めている。

   職場では、お淑やかで面倒見のいい女性。

   でも、普段は結構大雑把な性格で……


健斗:(けんと)

   20代。

   めいと同じ職場に勤めている。

   職場と家での彼女の変貌ぶりを微笑ましいと思いながら見ている。

   焼き芋とアイスが好き。


●夜

   ラーメン屋さんから出て


健斗:ご馳走様でした

めい:ご馳走様でした~!


   扉を閉める


めい:いや~、食った食った~

健斗:おい、めい

めい:ん~? 何?

健斗:お前、女子だろう?

めい:え? 急にどうしたのよ?

健斗:いや、言葉遣いよ

めい:え? 今更?

健斗:今更だけども、突っ込みたくなった

めい:いいじゃん。今は健斗しかいないんだし

健斗:そうだけど

めい:だって、プライベートまでお淑やかなお姉さん演じるのめんどくさ~い

健斗:おいおい

めい:職場で頑張ってるんだし、いいじゃん

健斗:バイトの子が今のお前見たら卒倒するな

めい:え?

健斗:いつも穏やかで、女子のお手本とも言える接客の女神・本条めいさんが!って

めい:(笑いながら)なにそれ?

健斗:あれ? お前知らなかったの? バイトの子たちに裏でそう呼ばれてるんだぜ?

めい:マジで?

健斗:マジで

めい:え~

健斗:おいおい、女神様なんてめちゃくちゃ良く言われてんのに不満なのかよ?

めい:不満です

健斗:なんで?

めい:だって、普段のハードルが上がる!

健斗:あぁ……

めい:ただでさえイメージ崩さないように頑張ってるのに!

健斗:まぁまぁ、それもほどほどにな

めい:あれ? ほどほどでいいの?

健斗:俺としてはどっちのめいもめいだから、お前が楽な方でいたらいいと思うぞ

めい:本当に?

健斗:彼氏としてはな

めい:同じ店で働くスタッフとしては?

健斗:お前の女神っぷりにいつも助けられております

めい:(笑う)

健斗:まぁ、でも本当にほどほどにな

めい:は~い

健斗:おぉ、いい返事。それにしても、今日もおいしかったな

めい:うん! 久々の豚骨ラーメン、おいしゅうございました!

健斗:久々にお前のいい食いっぷりが見られたしな

めい:そう?

健斗:おぅ。大盛りラーメンにプチチャーシュー丼を食える女子は俺の周りじゃお前くらいだよ

めい:そうかな? みんな食べようと思えばいけると思うよ?

健斗:いやいやいや

めい:あのね、女の子の胃袋の容量を甘く見ちゃいけないのよ

健斗:そうか?

めい:そうよ! お店でもそんな女性よく見てるでしょ? はい、デザートは?

健斗:別腹

めい:そう! つまり、女の子の胃袋はいっぱい入るのよ!

健斗:いや、あれはものの例えだろう?

めい:本当にそう思う?

健斗:……

めい:ほら、否定できないでしょ?

健斗:……まぁ

めい:女の子なんてそんなもんです


   急に強い風が吹く


健斗:おっと

めい:寒っ!

健斗:急に冬になって来たもんな~

めい:秋通り越しって感じだよね

健斗:だな

めい:秋を返せって感じだよね! あぁ、もう、寒い!

健斗:(苦笑しながらめいに向かって手を出す)ほれ

めい:ん?

健斗:流石に秋は返してあげられんけど、温かくはしてあげられるよ?

めい:……

健斗:めい?

めい:(照れて俯きながら健斗の手に自分の手を重ねる)……ん

健斗:(微笑みながら)おぅおぅ。照れてる照れてる

めい:……うるさい!

健斗:でも、手は離さないんだな

めい:寒いから!

健斗:はいはい。そういうところはずっと変わらないよな

めい:……いや?

健斗:いや、可愛くていいと思うぞ

めい:……うっさい

健斗:可愛い

めい:そ、そういう健斗だって!

健斗:俺だって?

めい:そうやって私のこと甘やかすの変わらないじゃん!

健斗:そりゃ、好きな人ですから

めい:……仕事中でも?

健斗:あぁ……バレた?

めい:バレバレです!

健斗:誰にも気付かれない程度にしといたんだけどな~

めい:わかります~

健斗:マジか~

めい:まぁ、他の子たちは気付いてないからいいけど……

健斗:めいは気付いてくれたんだ?

めい:当たり前でしょ?

健斗:当たり前なの?

めい:あっ!

健斗:(ニヤニヤしながら)なんでかな~?

めい:知らない!

健斗:おい、めい

めい:知らないから!

健斗:(腕をギュッと引っ張る)ダ~メ

めい:わっ! 

健斗:急に走り出すと危ないからね

めい:きゅ、急に腕を引っ張る方が危ないから!

健斗:それは大丈夫

めい:なんでよ!

健斗:俺がちゃんと支えるから

めい:……っ……

健斗:め~い

めい:何よ?

健斗:好きだよ?

めい:……

健斗:め~い?

めい:……知らない……

健斗:(優しく微笑んで)どうしたら機嫌直してくれる?

めい:……焼き芋……

健斗:ん?

めい:帰り道の公園に止まってる焼き芋屋さんで焼き芋買ってくれたら許す!

健斗:えぇ、まだ食べるの?

めい:デザートは別腹!

健斗:焼き芋はデザートなの?

めい:デザート!

健斗:(微笑みながら)そうですか。でも、あの焼き芋屋さん、今日もいるとは限らないよ?

めい:聞いたもん

健斗:え?

めい:おじさんにあの公園にくる予定聞いた

健斗:めい、本当にあそこの焼き芋好きなんだね

めい:だって、今年まだあの焼き芋屋さんの食べてないもん

健斗:そうだね

めい:……健斗もあそこの焼き芋好きでしょ?

健斗:え?

めい:だから、半分こしよ。この機会を逃したら、二人で揃ってあそこの焼き芋食べるの、来年まで待たなきゃかもだもん

健斗:そうだね。じゃあ、半分こしよっか

めい:うん!

健斗:めいは本当に素敵な彼女さんだね

めい:……うるさい……

健斗:ごめんごめん。じゃあ、公園まで行きましょうか

めい:うん

健斗:あ、でももし今日焼き芋屋さんいなかったらどうする?

めい:おじさん、居るって言ってたもん

健斗:でも、必ずじゃないかもしれないじゃん。もちろん、居てくれたら嬉しいけどさ

めい:う~ん……そしたら、コンビニで季節限定のアイス買って帰る。それで今日のデザートは我慢する

健斗:もう……めい……


   健斗、めいを抱きしめる


健斗:ありがとう、大好きだよ



―幕―




2020.10.26 ボイコネにて投稿

2022.08.09 加筆修正・HP投稿

お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)