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藤村邦&渡辺俊之の日々

反精神医学

2022.08.14 01:17

 私が大学生頃にアパートで読む耽ったのがレインの「引き裂かれた自己」である。みずず書房から出ていた本を何気なく手にとったら、後ろの写真に惹かれたからだ。ロナルド・レインは、かつては英国の精神分析医だった。レインは恵まれていた環境で育っていない。家族には精神障害者がいたし苦労もした。

 彼の言いたいことを単純化するならば「患者」だけが悪いのではない。患者に落とし込んでいく家族の問題に目を向けるべきで、問題を「患者」だけにしていく「家族の方が問題」だと文脈を変えた。私が専門とする家族療法の祖の一人でもあるが、今は、誰もそれを語らない。20代で名著を書き、詩人としても活躍し、そして30代に精神医学に失望したと失踪する。医師・患者の前に「人と人」だという思想は「境界線がない」などという誤解を生んだ。「患者に手を出した」という噂も流れた。かつて70年安保の時に読んだ諸先輩方も大勢いると聞く。

 私は多くの本をPDF化したが、赤線だらけでぼろぼろの「引き裂かれた自己」は、書棚に置いてある。そこには、大学時代の思いが詰まっている。

 私は良いことなのか悪いことなのか「医者らしくない」と言われる。それを良いととるか悪いととるかは患者さんしだいだが、幼い頃から、近くに精神障害者がいた私は、人としての部分が出てしまう。

 盆になり祖父母や両親や叔父叔母が近くにいるのであろう。「渡辺医院」という名前は守っています。