70年代ファンクの進化系【ROOT SOUL】
ベーシスト、あるいはサウンド・プロデューサーとして活動を続けているROOT SOUL。13年ぶりにリーダー作のアルバムをドロップ。コロナ禍によって呼び起こされた自己のサウンドへのクリエイションが聞こえてくる。
文 = クリススカル text = Sukaru Kurisu
写真 = 須古 恵 photo = Meg Suko
- ベースをはじめたきっかけを教えてもらえませんか。
RS はじめはギターだったんですよね。中学生のときに買って。高校に入る頃に、ブラック・ミュージックというかファンキーな音楽に影響を受けて。ベースがかっこよく思えたんですね。それでベースをやろうと思って、高校に入ったと同時にベースになったんです。
- ミュージシャンになろうと思ったのは?
RS 高校卒業が近づいてきて、音楽の道に進みたいって思ったんですね。そのためにはとりあえず東京に行くしかないやって。それで音楽の専門学校に入った。音楽理論的なことから楽器の特性までいろんなことを学べましたね。ジャズの基礎的なことも学べたし。
- いわゆるプロとしてのスタートはその頃なのですか。
RS 専門学校の先輩がクラブに連れて行ってくれて。90年代の半ばかな。ダンスミュージックが好きだったし、ヒップホップもその延長線上で聞いていた。もっともよく行ってたクラブが、渋谷のThe Roomだったんですよ。そしてThe Roomに入って、多くのDJも知り合ったし、CRO-MAGNONや犬式のメンバーともつながっていけた。
- 90年代のクラブは、カルチャー発信だけではなく、コミュニティを形成するという部分でも大切な場所でした。
RS そう思いますね。DJがかけている音で気になったのがあったら、そのレコードを貸してもらって。今はYouTubeなどで簡単に調べられるけど、当時は情報源が限られていたから。セッションもよくやったし、DJからも多くの影響を受けましたね。
- 2009年にROOT SOULでファースト・アルバムをリリースしました。どんな思いでROOT SOULというソロプロジェクト名にしたのですか。
RS ルーツ・ミュージックっていうイメージを持つ人が多いと思うんです。もちろんルーツ・ミュージックにリスペクトもあります。ルートって根音とも言って、和音を木に例えると一番下の音、つまりベースって意味なんです。ソウルも大好きなブラック・ミュージックだし、ソウル=魂っていうのはベタな感じもしていたけど、漠然とこのワードも使いたいと思っていた。
- ファーストアルバムはどんなコンセプトで?
RS 自分の根っこにあるのは70年代のソウル、ブギー、ジャズファンク。70年代の人種もジャンルもごちゃ混ぜになったカラフルな感じが好きなんですよね。音としてもファッションとしても。70年代のベーシックに、ハウス的な要素とか、ヒップホップ的な音作りをプラスししていって。
-6月にセカンドアルバムがリリースされました。ファーストから13年です。
RS この間に、沖野(修也)さんのアルバムをブギーに特化して生演奏した『DESTINY replayed by ROOT SOUL』を発表しているんですね。これではじめて生ドラムで録ることを挑戦した。ミックスも自分でやって。自分のなかではブギーアルバムはここでやりきった感もあって。
-2作目はいつ頃から作りはじめたのですか。
RS 曲のネタになっているのは2010年ぐらいのものもありますね。ギターもキーボードも入れて、曲の完成図をほぼほぼ自分で作る。それで納得してからじゃないと、ミュージシャンを呼んでの制作にはなかなか入れない。自分でやっていると、ゼロに戻すことができる。白紙に戻ってしまった音源ってずいぶんありますよ。
-それだと制作は時間がかかりますよね。
RS パソコンを開いてデータを聞くと、ここを直したいって必ず出てくる。アルバムをずっと出したいと思ってはいたんだけど、自分でここで完成という踏ん切りがつかなかった。でもコロナになって「やっぱりやりたいことをやらないとダメだな」って思って。自分で決心すると締め切りも決まりました(笑)。
-その意味では、コロナがもたらしてくれた時間は大きかった?
RS そうかもしれない。コロナ前はライブだったり他のアーティストのプロデュースだったり、いろいろやっていたから。でもコロナで自分でゆっくり録音ミックスする時間まで十分にありましたね。
- 70年代のファンクをベーシックにした音楽であるのに、新しさも感じられます。
RS それって常に意識しているところでもあるんですね。ファンクって、どうしても古臭くなりがちなんですよね。そのイナタさもいいところではあるんだけど、細かいところまで凝っているんです。レアグルーブやジャズが好きなテクノDJがリエディットするループさせる手法や、ミックスの仕方にも影響受けてます。パッと聞きはルーツ・ミュージックなんだけど、新鮮に聞かせるヒントみたいなものはいっぱい学びました。
-リリースに対して、ブーツィー・コリンズやビル・ラズウェルがコメントを寄せていますね。
RS 未だに信じられないですよ。特にブーツィーからはいろんな影響を受けています。上海のフェスでブーツィーを見たことがあるけど、スピリチュアルというか神がかっていたし。ブーツィーから「ファンクの精神を守り、伝統をつないでくれてありがとう」って言ってもらえただけで光栄です。
-最後に、自分自身に肩書きをつけるとしたら、どう名乗りますか。
RS 70年代のソウル、ブギー、ファンクが核にあるプロデューサー、トラックメイカー、ベーシスト。ちょっと長いけど言葉にしたらこれですかね。
『FREAKY POWER』
ベーシスト、作曲家、サウンド・プロデューサー、池田憲一のプロジェクト。2009年にファースト・アルバム『ROOT SOUL』でデビュー。2022年6月、13年ぶりとなるセカンドアルバム『FREAKY POWER』を発表。その翌月に開催されたフジロックでは前夜祭に出演。直前までラインナップは発表されていなかったものの、多くのフジロック・ファンに強烈な印象を残した。朝霧JAMへの出演も発表された。https://ameblo.jp/rootsoul/
ROOT SOUL LIVE SCHEDULE
9月9日(金)@THE ROOM(東京・渋谷)
10月8日(土)〜9日(日)@朝霧JAM '22(静岡・富士宮)
12月24日(土)The Room 30th Anniversary Party@リキッドルーム(東京・恵比寿)