山中市長へ、直接請求権否定発言撤回申し入れ
2018年2月9日
芦屋市長
山中 健 様
池上 義三
(若葉町在住/芦屋幼保市民の会事務局長)
市議会における直接請求制度を否定する市長発言を撤回し謝罪を求める抗議文
貴職は、地方自治法第12条、74条に基づき、市民の権利として、公立幼稚園における3年保育等条例制定を求める直接請求に対し、これを審議する臨時市議会(1月30日、2月5日)において、次のような発言をされました。
①市の計画については、サイレント・マジョリティーの市民が支持しているとし、直接請求に賛成できない。(1月30日本会議)
②直接請求は、9月市議会議決が怪しからんというものであり、議決に反することは、いかがのものかと強く思う。この度の直接請求は、議会制民主主義を否定するものではないか。よもや、市議の中で、この直接請求に賛成する議員はいないと思う。(2月5日民生文教常任委員会)
これらの発言は、自治体首長たるものが、日本国憲法(以下憲法)、地方自治法に定められた市民の権利を真向から否定するものであり看過できません。2月13日本会議において発言を撤回し、謝罪することを求めます。
そもそも、地方自治は戦前の中央集権的政治制度の反省に立ち、地方自治を憲法92条で定め、
その基本法である地方自治法において「日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の条例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く。)の制定又は改廃を請求する権利を有する」(地方自治法第12条)と直接民主制を市民の権利として保障しています。
国政と異なり、直接民主制が地方自治に存在することについては、「民主的な国政の基礎を形成するところにその存在理由がある」(法学セミナー 新基本法コンメタール 地方自治法 2011.11 14頁)とあります。すなわち、地域も限定されている地方自治において、市民の直接的政治参加を促し、そのことを通じて、国政においても国民が主権者たる政治形態を構築しようとするものです。
また、直接請求権は、むやみやたらに間接民主制の議論、議決に疑義を唱えることのないよう、高いハードルとして有権者の自筆、生年月日、印鑑を必要とし、今回の条例制定の場合、有権者の50分の1以上を必要数としています。(この度の署名数は有権者の約12分の1に近い数字)
これらのことから貴職が「サイレント・マジョリティー」の言葉を使い市民の直接的政治参加を見下す発言や「直接請求が議会制民主主義(間接的政治参加)に反する」主張の誤りは明らかです。
なお、誤解なきよう申し添えますが、貴職が直接請求内容に賛成しないことに抗議するものではありません。賛否以前の問題として憲法、地方自治法に則り地方政治を行うべき首長として今回の発言について真摯に向き合い、撤回と謝罪を求めるものです。
以上