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22時間半の旅

2022.08.16 10:00

愛し君へ


観測史上一番暑い夏になりそうな今日この頃いかがお過ごし?

台風の匂いがしてきたね。

君は思いつきで行動するタイプ?

今回は8月上旬に刈川が思いつきでしたプチ旅行についてラブレターを書くね。


-1日目-

8月某日20時30分 in 東京

仕事が終わり帰宅。着替え途中にパッとスケジュール帳を見ると、次の予定は明日の19時。

何だか急にどこか行きたくなって、脱ぎかけたズボンをまた履いて、

簡単な着替えを持って家を飛び出した。

駅について、行き先も方向も決めず、とりあえず最初に来る電車に乗った。

長野方面の電車だった。電車に乗るなりまずは携帯で泊まる場所を探す。

こーゆー時はホテルに泊まるより、24時間やっているスーパー銭湯の方が気楽だ。

検索すると山梨の石和温泉にあった。目指すは石和温泉だ。

夕食を済ましてなかったので、乗り換駅の構内にあった日高屋に入る。

この日高屋は店の中が真ん中で二つに分かれており、

ホームの人も外の人も入れる仕組み。ラーメン大盛りと半チャーハンと餃子を頼んだ。

そして生ビールも。駅で飲むビールは格別に美味い。

20分ほどで済ませると再び電車に乗った。高尾駅を過ぎると一気に人がいなくなる。

真っ暗闇の中を走る電車が好きだ。

ドアに車内の蛍光灯が反射して、電車の中が広く見える。

それが余計に孤独を感じる。何も見えないのに窓から景色を眺める。

こーゆー時間が必要だった。音楽も本も何も持っていかなかった。

久しぶりの手持ち無沙汰だ。


23時in石和温泉

駅に到着。観光地とは言え、この時間にホームに降りたのはさすがに刈川1人だった。

観光地の夜は早い。車なんかほとんど通っていない。

目的のスーパー銭湯までは徒歩で20分。盆地っぽい風を受けながら歩く。

国道沿いの、こうこうとした施設に着く。深夜料金を払い、さっそくお風呂へ。

3時間前まで家にいた事が不思議なくらい素晴らしい湯だった。

仮眠スペースにマットレス1つで眠りにつく。

上からかけるのは受付でもらったバスタオルだ。

知らない人たちと同じスペースで一晩明かす。不思議な気分だ。

こーゆー時は寝たもの勝ち。山梨限定の桃チューハイを飲み干した。


-2日目-

7時 in 石和温泉

おはようございます。ぐっすりとはいかないけど寝れました。

朝風呂に入り支度をする。スーパー銭湯で泊まるとビジネスホテルの約半額。

個室もあるけど、だったらホテルに泊まりたくなる乙女心。

昨日真っ暗だった道を引き返す。武田信玄ゆかりのものがそこら中にある。さすが山梨。

そして全国どこに行ってもタンクトップ姿で歩くオジサンがいるんだなぁと思う。

さて、ここからは腕の見せ所。残り時間と遊び時間を計算してちょうどいい目的地を探す。

甲府じゃ近すぎるし、清里だと車が無いと不便。

よし、思い切って松本まで行こう。

松本到着がだいたい9時半。帰りは特急で松本を15時50分発。6時間強滞在できる。

目的地までやる事もないので寝よう。


9時半 in 松本

到着。そもそも長野に電車で来ることなんてほとんどない。

とても新鮮な気持ちだった。まずは街ブラ。さすがに後で松本城には行かなくては。

15分くらい歩いてみて思ったのは、松本はとにかく喫茶店が多い。

これは予想だが、街のいたる所に湧き水がある。この水を使ってコーヒーを入れているんじゃなかろうか。モーニングがてら喫茶店に入る。テンガロンハットをかぶったマスターと、20歳くらいの男性店員。そして25歳くらいの女性店員。スタッフの会話が筒抜け。20歳くらいの男性店員に人生を教えているような会話。コーヒーにピッタリでした。

トースト50円。ハムエッグ100円。アラカルトで頼み、自作のハムエッグトーストを作って食べた。

次の行き先は決まっていた。松本市美術館だ。

松本が産んだ稀代の芸術家、草間彌生の作品が数多く展示されている。しかも企画展「草間彌生 版画の世界」がやっている。これは行かなくては。

約8年前。瀬戸内海に一人旅をした時に、直島で草間彌生の作品に初めて触れた。

この人の頭の中に、このカボチャが浮かんでいると思うと羨ましかった。

そこから草間彌生の本などを読んだ。ただ、松本を目的地にしたのは偶然だった。

10時半 in 松本市美術館

常設展を回り、企画展へ。

草間彌生の初期の作品から展示してある。

最初にあったカボチャの絵は、草間彌生らしさはあるものの、どこか大人しい印象だ。

それから何枚もカボチャが登場し、圧巻だったのはニューヨークに移ってから描かれたカボチャだった。カボチャにラメや光の装飾がふんだんにあしらわれている。

それはまるで化粧を覚えた女性のような煌めきだった。

この部屋に10分はいただろうか。

まるで花が開く瞬間を見ているようだった。

しかし、刈川をさらに驚かせたのは次の部屋だった。

ラメや光をあしらったカボチャから一転、白黒の絵しかない部屋だった。

化粧を覚えた女性が、スッピンを見せるような感じ。大人の女性だった。

さらに次の部屋はドットや線のみで描かれた絵が多数ある部屋。

細部へのこだわりを感じる絵。そしてすべての軌跡を辿り進化していくカボチャ。

常に挑戦する様に、真摯に取り組む情熱に、涙が止まらなかった。

美術館で初めて2周した。本当に来てよかった。

もっと書きたいけど、9月25日までやっているのでもしよかったら本物を見て欲しい。

お土産にカボチャのキーホルダーを買ったよ。


12時 in 松本城周辺

城下町はとても綺麗で、湧き水も美味しくて。

前を歩いていた地元民らしき人についていって、

見つけた蕎麦屋に入ったら信じられないくらい美味しくて。

松本城の中には入らず遠目で見て、本屋によったりして。

気付けば13時。このままブラブラしようか、どうしようか。

観光案内所で相談すると、バスで30分くらいの場所に浅間温泉らしきものがあるという事。

これは行くしかない。15時40分に戻ってくれば何とかなるだろう。

13時15分発のバスに乗る。しかし道は大渋滞。着いたのは14時00分。あれ?

15時00分のバスに乗ろうとしたが、

もし帰りも混んでいたら電車に間に合わないかもしれない。

そうなると一本早くて14時30分だ。大変だ、30分しかない。早速入るぜ。

幸いバス停の前に日帰り温泉施設があり、着替えの時間を差し引いて15分で入浴。

それでもこの15分はまるで時間が止まったかのような至福の時。

急いで着替えてバスに乗る。


松本駅についたのは15時10分。

どうしても食べたかった「山賊焼き(鳥の半身焼き)」をテイクアウトして、

バスターミナルで頬張る。お土産屋を回り、無事に電車へ。

乗ってからわかったのだが、間違えてグリーン車を買っていた。

まあこれはこれで良いか。

というわけで、無事に19時に間に合いましたとさ。

22時間半の旅だったけど、

「どこか行きたい!」という気持ち次第で色んなものを発見出来たよ。

思いつきも悪くないね。君もよかったらやってみてね。

デートの約束をしよう。

次会う日まで会えない時間を大切に。