ZIPANG-6 TOKIO 2020デザイン・色彩実践講座:5−2戦後の色彩から未来へ・・・【寄稿文】 林 英光
今 八月 本当の平和を考える時
レジリエンスとは 今起きている物事の原点に立ち戻り 未来へ向けて立ち上がることである そのスタートは古来より女性の力が大である
この色彩を先ずご覧あれ
左から頭髪の色、開襟シャツの色、タイトスカートの色、ハイヒールの色
漠然とした7歳児の記憶より、ずっと筆者の脳裏に刻み込まれた戦後の聖なる色彩の原点である。
ピンクの開襟シャツ 真っ青なタイトスカート 真っ赤なハイヒール 結い上げた茶髪のパーマ。これは小学生の筆者が見たショッキングな女性の姿。敗戦国日本の戦勝国アメリカ化の原点である。実はここに日本人の黒髪と肌の明るい小麦色が加わるのであるが。
それはつい前日まで、上下絣のモンペと手ぬぐいの鉢巻姿で、運動場でわら人形に見立てた「鬼畜米英」と吹き込まれ、竹槍で突き刺す教練を受けていた女性たちは、赤紙一枚で兵隊に取られた男手の代わりに、家族を守るため、多くの苦労を背負い、さらに敗戦と同時にやってきた27万人の進駐軍兵のもてなしなどで、やむ無く家族を養った女性たちの尊い姿の色彩であった。
戦後日本の復興の貴重な事実であり、あらゆる意味での戦後今に至る、日本の伝統文化の変遷に大きく影響したアメリカ化の原点の色彩である。
本当に平和を望むなら、以下の理解を深めよう
一:人間は同種の生き物同士が殺しあう稀有なDNAの生物であること
二:他国へ侵攻し大勢人を殺傷した者を英雄と賞賛する習慣があること
三:紛争を助長し戦争に誘導する巨大なネットワーク世界の経済活動があること
四:東アジアのデザイン・色彩の原点は中国5千年の「四神相応」にある
五:「日本の伝統文化の色彩環境の基本」は白・黒・グレー・自然素材色
四神相応とは
「理想的都市デザインの思想」であり、その日本での代表的適用例は以下の、平安京:京都市は日本の伝統文化の首都。尾張名古屋:名古屋市は産業首都。江戸:東京は政治経済首都として、何も暮らしのあらゆる場面で今も活きている。有史以来の伝統思想を活用した桓武天皇や徳川家康の未来への先見性を知ることが出来る。
日本の伝統文化の色彩環境の基本
現在日本人はともすると無秩序に色を使いたがる傾向がある。花の都パリでさえ、よく見るとグレーの屋根とベージュの石材の2色が景観全体を占めている。だから美しいのである。日本の白・黒・グレー・自然素材色は十分に美しいし、人や付属物の色や動くもの、部分の洒落た色の選択で全体を引き立てるのが、美しき伝統のデザイン・色彩である。過ぎたるは及ばざるが如し。
交通規則の赤・青・黄の人の安全を守る色彩を阻害する色を環境に平気で使う日本人はかなり野蛮で無知な民族なのかもしれない。
でも最近先進企業をはじめとし、黒をモダンな建物にしっかりと使う傾向が始まり、戦後76年にしてわが国の未来景観の調和に一縷の光が見えたように思う。
以上の人間と社会の問題の反省と改善なしに平和への道はなく、また有史以来の先人の磨き上げた風土伝統を大切に、心休まる未来をつくることが幸せな環境造りの基本である。
年間何百兆円の軍事費を世界の国民が税を支払い、必要とする人社会の仕組み。「我々は決してこの世から紛争をなくさない」と豪語する外国の何百社もある政府系のコンサルタントの言葉をTVで聞いたことがある。
筆者は1941年12月8日の太平洋戦争開始の1月前11月8日生まれである。以来幼時より、敗戦以降の日本の変遷を体感してきた。生まれ故郷の銚子の空襲の真っ赤な炎の夜のことや、その後無差別に爆撃され、入学した矢指村の小学校は、黒々とした移築の兵舎だったこと。
毎日の朝礼は運動場に児童が横一列にしゃがみ、バケツを持ちガラスの破片と錆びた釘拾いが日課であった
忘れた頃に毎年やってくる戦時の体験を思い起こす8月は、未来の子供達に伝えるべきは何かを思う。
今 八月は本当の平和を考える時
何百万人もの若者の死と、やがてかろうじて生き残り、ヨレヨレのカーキ色の軍服での、日本兵の帰還が南から西から北から続々と船で始まり、本土に近づくと荒廃し禿山になった故郷の景色を見て皆泣いたと聞いた。また散りじりになった肉親を探すため、毎日ラジオの「たずねびと」の放送にも聞き入った。
そして数年後朝鮮戦争が始まり、その間も無くベトナム戦争が、多くの人々を苦しめた。その戦争のための物質在庫整理と販売促進経済効果は、日本の復興とエコノミスト予測の世界第二の経済大国?にした。そして今度は2050年予測、「日本は世界で最も悲惨な国になる」?が日本を襲い始めたことに気付き目覚め、幸せな未来へのレジリエンスに取り掛かりたい。
今ウクライナ戦の実況放送を見て誰もが心を痛めるが、わが国が80年前に始めた太平洋戦争は、2発の原爆に至る無条件降伏までの数年間は、侵攻国内外での筆舌に尽くせない地獄絵の中に日本人の姿があった。
近隣と友好的で平和な江戸期の260年を捨て、富国強兵に全てをかけたわが国の、文明開花と物質文明の明治の総決算が、日本国中の都市を焼き尽くした高性能の焼い弾と、最後に物質文明の究極の成果である二発の核爆弾で無条件降伏に到り、以来75年、戦勝国のコントロール下に今の日本国があることを。
レジスタンスもゲリラもしない稀有な国民に、日本人は明治維新の間違いを反省もせず、それらを忘れるほどうまく統治され現代に至った。
筆者は太平洋戦争開戦の一月前に生まれ、幼時に米軍の無差別空爆の惨事も体験し、その後の日本の現代まで見て来たつもりである。
そして何ごとも目先の表層だけでなく、原点に戻ることで全てが未来につながると考え、デザイン・色彩に取り組んで来た。一言でそれを表すと「風土と伝統を生かして未来を創る」 トータルデザインに尽きる。
それはわが国が明治以降忘れて来た、互が助け合い自然を慈しむことであり、部分に拘り先進国にあるまじき混濁した世情と景観であることでわかる。それも敗戦国に都市計画など要らんと決めつけられ、国も建築家も総合的な都市デザインを忘れ、好き勝手な物造りの結果が文明国にあるまじき現代の日本の混迷した都市環境、色彩景観である。
縄文・弥生・奈良・平安・鎌倉・室町・江戸・明治そして現在に至ったが、それぞれの時代に様々な心のあり方や文化、色彩の特徴もあった。
そこで筆者としての課題は、現在にいたる敗戦後の状況と、それを未来にどう導いて行くべきであったのか、人の幸せの器である環境デザインのことである。
繰り返すが、環境が、幸せな人の心を作る元であり、無秩序に混乱した環境は人心も同様になる。個別に面白いもの良いものがあっても、全体のための共有文化、神話や伝統を忘れた国や民族は滅びると言う。それは2050年予測の要因の一つであり、取り組むべきレジリエンスの大事な心だと考えている。
次回に続く・・・
【寄稿文】林 英光
環境ディレクター
愛知県立芸術大学名誉教授
東京藝術大学卒業
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発行元責任者 鎹八咫烏(ZIPANG TOKIO 2020 編集局)
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ZIPANG-6 TOKIO 2020 色彩・デザイン実践講座 事例5 レジリエンス 日本の未来へのキーワード ・・・・・【寄稿文】 林 英光
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