【フ-3】BLACK & WHITE in COLOR(私的埋蔵文化財)
1977年アカデミー外国映画賞を受賞したコート・ディボワール=フランス合作映画。監督はジャン・ジャック・アノー、33歳で受賞したフランス人だ。この後、「セブン・イヤーズ・イン・チベット」「薔薇の名前」「スターリングラード」「愛人ラマン」などを観ることになった。
タイトルもパンフレットも記憶には残っているが、この映画の場合、作品の印象以外のもので心にとどまることになった。これは2022年7月29日に閉館になった東京・神田の岩波ホールで公開上映された「エキプ・ド・シネマ」の一本だ。
エキプ・ド・シネマは、私の年代の映画ファンにとっては忘れることのできない「映画の教養」に属する名作上映シリーズだった。滅多に入ってこない国の名画も発掘して上映にこぎつけ、30年にわたって名作を配給し続けた高野悦子さんは、私の中ではこれぞインテリ!と思える存在だった(2013年に亡くなった)。
正確を期するためにスマホ検索してびっくりしたのだが、これまで「二十歳の原点」の高野悦子と同姓同名であることに気づかなかった。と書いても、どちらも知らないという人が多くなっただろう、こちらは1969年を時代背景に、自死を選択した女子学生の日記が出版され、大ベストセラーになったものだ。
エキプ・ド・シネマでは1974年から2022年まで、274作品を公開したとある。その中の一本が、私には忘れられない「オレンジと太陽」である。この映画・本についてはここでは詳しく触れないが、児童移民について関心があれば、本も含めてぜひ調べてみてほしい。
私は「木陰の物語」の一作として「オレンジと太陽」と題したものを描いた。そしてそれをミニアルバムにして、ノッティンガム市(英国)の児童移民トラストを訪問した時、ご本人に手渡した。
エキプ・ド・シネマ公開作の興行収入トップ5を観ると、「宗家の三姉妹」「山の郵便配達」「八月の鯨」「眠る男」「父と暮らせば」。五本中三本観ているから、まずまずか(何が?)。
関西エキプ・ド・シネマというのがあって、大阪・フェスティバルホールの地下にあった中之島・SABホールにちょくちょく出かけていた。
「BLACK&WHITE in COLOR」公開の1978年といえば、私は31歳。33歳の監督がアカデミー外国映画賞を取ったことに、きっと心動いていたに違いない。だからこの若い監督の経歴の記憶が強く残ったのだろう。
結婚をして男児二人の父親になりながら、週末は福知山(京都府北部)から大阪にしょっちゅう出かけて、研究会や名画座通いをくりかえしていたのは、田舎で公務員である自分がどこか飲み込み切れていないところがあったように思う。ふらふらと留守がちの夫を、子育って真っ只中の妻は、文句も言わずに出してくれていたんだなぁと今頃になって気づいたりしている。