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Gloria Life

腸と免疫 腸脳微生物相関

2018.02.12 00:34

元をたどれば、腸を大事にすることが健康を維持します。


腸内フローラの乱れは免疫異常を招く


免疫異常は、全身の慢性炎症を引き起こし、自己免疫疾患をはじめとしたさまざまな疾患につながる。 

 


マーティン・J・ブレイザー教授の失われてゆく、我々の内なる細菌によると、マイクロバイオームの異常は、さまざまなアレルギーや自己免疫性疾患の原因と考えられるようになってきています。

腸内細菌の乱れというと、単なる食習慣の不摂生が原因だと考えられがちです。確かにある種のプレバイオティクス、プロバイオティクスが効果的だとする専門家もいますが、問題の本質は、そう単純な話ではなさそうです。

人類ははるか昔から、体内のさまざまな微生物と共存してきました。そのため、わたしたちの免疫システムも微生物の存在ありきで正しく機能するように成り立っています。

健康な腸内細菌は出産時に親から子へと受け継がれ、幼少期の生育環境によって、体内に取り入れられていき、免疫の獲得や脳の発達などにも影響を及ぼすと言われています。

幼いころに多様な細菌にさらされると、さまざまな微生物に寛容で、敵味方を賢く見分ける免疫系が育まれます。

しかし、子どものころに清潔すぎる環境で育つと、異物に対して極端な反応を示し、敵と味方の区別があいまいな免疫系になってしまいます。

その結果として、本来敵ではないものに過剰に反応するのがアレルギーであり、味方を敵と誤認してしまうのが自己免疫性疾患です。

自己免疫性疾患には、たとえば先ほど慢性疲労症候群の腸内細菌の状態と似ているとされていたクローン病や潰瘍性大腸炎のほか、多発性硬化症やエリテマトーデスなど多種多様な病気が含まれています。

「自己免疫性脳疾患」としての慢性疲労症候群

このブログで取り上げている発達障害や、今回の記事の研究の慢性疲労症候群も、脳の疾患でありながら、腸内のマイクロバイオームの異常との関係が注目されている問題に含まれています。

単に、胃腸の問題か脳の問題か、という二択ではなく、「腸脳相関」という概念が示すように、腸と脳は密接に連動して働いている器官だと言われています。腸はセロトニンなど感情に関係する神経伝達物質の生成とも深く関わっています。

腸内環境は「腸脳相関」によって脳の病気に関連している

腸内環境は「腸脳相関」によって脳の病気に関連している 

腸内常在菌は、脳の神経伝達物質やエネルギー代謝に影響しているそうです

 すでに述べたように、腸内のマイクロバイオームの多様性は、免疫システムの成長に大きな影響を及ぼしますが、免疫システムは全身の炎症を制御するものです。

自閉症や慢性疲労症候群は、脳の慢性炎症との関係が示唆されていますが、腸内細菌の多様性の低下のため、正常に機能する免疫システムが発達しなかったことが、これらの慢性炎症の原因となっている可能性があります。

自閉症や慢性疲労症候群の脳の炎症は細菌などの不在がもたらした?―寄生虫療法・糞便移植で治療

自閉症や慢性疲労症候群の脳の炎症は細菌などの不在がもたらした?―寄生虫療法・糞便移植で治療 

感染症の減少と同時に増加してきているアレルギー、自己免疫疾患、自閉症。その背後には、抗生物質の乱用や衛生改革がもたらした、微生物の生態系のバランスの崩壊による人体の免疫異常がある

興味深いことに、近年、慢性疲労症候群は「自己免疫性脳疾患」という概念と結び付けられているそうです。

鹿児島大学大学院の髙嶋 博教授は、雑誌「神経治療学」2016年No1「特集 自己免疫性脳症の診断・病態・治療」でこう述べていました

“ 

それでは自己免疫性脳症・脳炎の頻度はどのくらいなのかということを考えてみると、日本人は気管支喘息 、アトピー性皮膚炎 、鼻アレルギーのようなアレルギー性の疾患に十万、百万の単位の患者が罹患 している。

では脳には 、高頻度のアレルギー性の疾患はないのであろうか 。その 答 えが、橋本脳症であり、慢性疲労症候群であり、さらには線維筋痛症ではと私は思っている。

…慢性疲労症候群の患者が疲労のみならず記憶障害や筋力低下を起こすのは脳疾患であるからであろう。(p8)

この特集では、慢性疲労症候群や線維筋痛症をはじめ、従来身体表現性障害とみなされてきた患者の多くが免疫治療に反応することから、こうした身体症状は「自己免疫性肝脳炎」であるとみなされています。(p10)

こうした自己免疫性の免疫応答による脳の慢性炎症の原因が何であるかは、今後解明されていく必要があるでしょうが、一つの要因として、社会の衛生革命や抗生物質乱用に伴う、現代人のマイクロバイオームの多様性の低下が関係している可能性がありそうです。

自己免疫疾患やアレルギーは、抗生物質や清潔志向に伴って減少した感染症とは反比例して増加していることが知られており、慢性疲労症候群や自閉症も似たような増加傾向を見せています。

Natureに載せられた国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 免疫研究部の研究によると、腸内細菌は炎症を抑制し、自己免疫性脳炎を防いでいることが示唆されています。