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金山知明税理士事務所・国際税務コンサルティングオフィス

国際課税勉強会21(移転価格税制 原価基準法)

2022.08.27 06:15

本日は、国際課税一角塾にオンライン参加し、平成22年1月27日大阪高裁判決(日本圧着端子事件)についての報告を聞きました。

この事件は、移転価格税制の適用が争点となったものですが、課税処分年度が最も新しいもので平成11年というかなり前の事案です。

圧着端子などの電子コネクタ製品を製造する原告法人が、シンガポールや香港にある子会社にそれら製品を輸出販売した際の販売価格が、適正価格(独立企業間価格)に満たないという理由で、課税庁から移転価格税制による課税を受け、それを不服として争った事件です。

課税庁は、原告法人の台湾(非関連法人)に対する輸出価格を比較対象取引(いわゆる内部コンパラブル)として「原価基準法」を適用して課税しましたが、原告法人は、その比較対象とされた製品や法人の単位、性質に関する不合理を挙げて不当な課税と主張しました。

しかし裁判所は、納税者が主張する比較対象取引と課税対象取引との差異についての立証が不十分で、課税庁が示した比較対象取引が、比較対象として不合理とはいえないとして、課税庁を支持しました。

原告法人の、子会社に対する販売価格が、他と比べてかなり低かったことは本当のようで、だからこそ課税処分を受けたわけですが、印象として、原告法人は販売段階でその販売価格が適正である根拠をきちんと用意していなかったのではないかと思います。

移転価格税制では、独立企業間価格の計算方法が色々あり、答えは一つではないので、不利な価格による課税を避ける意味で、少なくとも法人の販売段階で、その価格が独立企業間価格といえる根拠を明確に、できるだけ詳細に用意しておくことが大事になります。

また、課税庁が課税処分時に採用した原価基準法の土俵のうえでだけ争う必要性はなく、当然他の方法を主張する選択肢もあるので、例えば本件では、台湾の販売先がそれら製品を他に販売した金額と利益率に着目して、「再販売価格基準法」により有利な計算をして主張するなどの方法がなかったろうかと感じます。