ピノイ・サンデー
ピノイ・サンデー
Pinoy Sunday
2005年10月25日 NHKみんなのふれあいホールにて
(2009年:台湾=NHK=フィリピン=フランス:84分:監督 ウィ・ディン・ホー)
第10回NHKアジア フィルム フェスティバル
この映画のウィ・ディン・ホー監督は、この映画は台北という街を見せたかった・・・ということを強調されていました。
この映画を観ていて思い出したのは、リチャード・レスター監督の『ナック』です。
『ナック』では、大きな中古のベッドを買ったものの運べないから、と3人の若者たちが、ロンドンの街のなかをごろごろベッドを転がしていく。
それが、見事にロンドンという街を見せる・・ということになっていました。
この映画では、赤いソファです。
ピノイ・サンデーというのは「フィリピン人の日曜日」という意味だそうです。
台北にフィリピンから出稼ぎに来ている外国人労働者のダドとマヌエル。
何か、問題を起こせば即、強制送還という厳しい条件のもと、自転車工場で働き、寮くらし。寮もなかなか門限が厳しく、そうそう夜遊び歩くこともできない。
マヌエルは、独身者で、お気楽で女の子のお尻を追いかけてばかりいる軽い若者。
ダドは、フィリピンに家族を置いての出稼ぎ。でも、台北ではメイドとしてやはり家族をおいてきて働きにきているアナという女の子とつきあってもいます。
さて、仕事が終わった後の2人の楽しみは、寮の屋上でビールを飲むこと。
マヌエルが、殺風景な屋上に、せめて、ソファがあればいいなぁ~~~などという。そう、ソファだったら赤がいいね・・・・ダドの妄想はなかなかなものですが、このソファの妄想シーンになると、音楽が急にドビュッシーの「月の光」になるところがおかしい。そして妄想が切れると、「月の光」もぷち、と切れる。
さて、日曜日、教会のミサに行った帰り・・・・・・道路に・・・・・あ、赤いソファがある・・・・これはラッキーだ・・・・なんとか寮に持ち帰ろうよ。
ところが、車を借りようとしても、お金がかかる・・・2人で、ソファを持って歩いていくことに・・・・
この映画は、外国人労働者を主人公にしていますが、差別とか、厳しい条件とか、低い賃金だとか・・・・そういう深刻なこともあるのでしょうが、映画の雰囲気はとにかく楽天的。
2人は、けんかしながら、協力しながら・・・・ソファを担いでいきますが、すぐにむくれるまじめなマヌエルに対して、ダドは、楽天的に、「ソファがあったら、いいだろ?いいだろ?いいだろ?????」ぺらぺらぺらぺら
この2人はフィリピンのコメディアンだそうで、その会話のテンポを楽しむ映画です。
ソファで、ビールを飲む・・・なんてささやかな夢もなかなかかなわない。でも、楽天的にどうにかなるさ、どうにかしようよ・・・・ダメだったら次があるもんねー、です。めげないぞ、この2人。
コメディタッチですが、会話のタイミングなどとてもうまいですね。
マヌエルは、アナという女の子とつきあうのは、やはり家族・・・を思うと・・・と別れ話を言いだすと、アナは「なんで、よりによって私の誕生日にそういうこと言いだすのよっ!!!」とキィ~~~~~~と怒り出した瞬間に「はっぴ・ばーすで」と小さく言ってしまう・・・ますます怒る女の子、キィ~~~とか。
会話の呼吸のタイミングがとてもうまい映画ですね。
軽口ばかりたたく、ダドが、「俺だって・・・」としょぼん・・・としてしまうところも、会話のテンポが良かったからこその哀愁感効果です。