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シナリオの海

運命の輪~wheel of fortune~

2022.08.27 17:20

【はじめに】

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こちらは片摩廣様主催

ONLY ONEシナリオ2022の7月台本として投稿させていただきます

ある演者様にインスピレーションをいただきました。ありがとうございます

#ONLY ONEシナリオ2022


演者さま用人物紹介

<登場人物1>

アンドリュー(エミリア)

家族を助けるために男として生きる事を決め騎士になった

周りはアンドリューが女だという事は知らない

動物と話す事が出来る不思議な力を持つ

※高過ぎる女性声で無ければ無理に男性の声で演じる必要はありません


ルイ 

女騎士の事が気になっている青年

アンドリューと出会ってから森で毎日会うようになる

型にハマるのが苦手な破天荒なところがあるが頭はキレる

愛馬ジャンヌといつも一緒にいる


ランスロット

アンドリューとは幼少期からライバルの様な存在

アンドリューとは別の部隊を率いている騎士団の団長

実はアンドリューに想いを寄せていて…


<登場人物2>

出演のみ、セリフ無し

■ヴィー

森で怪我しているのをアンドリューが保護した

変わった形の鳥だと思われているが実は…


■ロイド

ランスロットとアンドリューの部下

ーーーーーーーーーーー

↓↓↓

上演の際にお使いください

「運命の輪」

作…七海あお

アンドリュー/エミリア:女

ランスロット:男

ルイ:男


参考:12683文字

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

↓ここから台本です


ー処刑場ー

■広場にて十字架に磔にされたアンドリュー、十字架の下には薪が並べられている


 

アンドリューM

俺はもうすぐここで処刑されるらしい

神様!

これがあなたの答えなのですか

こんな苦しい思いをするなら…いっそ出会わなければ良かった


ランスロットM

アンドリュー!

なんて事だ…

あの時、あいつに出会わなければ…

お前がこんな目に遭う事なんて無かったのに

全部…全部あいつのせいだ…


ルイM

ああ…友が目の前で磔(はりつけ)にされ、もうすぐ火炙りにされようとしている

これが本当に現実なのか?

出会った時にはもう既に決まっていたというのか

それとも…俺たちが出会ってしまったから

運命の歯車が狂ったとでもいうのだろうか…

ああ…出来る事なら

君を護れる男になりたかった…


アンドリュー

「運命の輪〜Wheel of fortune〜(ホイールオブフォーチューン)」



N(ランスロット)

なぜ俺の親友が今、目の前で処刑されそうになっているのか…

すべての始まりは1週間前の今日に遡(さかのぼ)る


<1週間前>

■王宮の裏庭

■ぼろぼろになって芝生に倒れている騎士3人と剣を構えたままの剣士一人

■圧倒的なオーラで剣を構えている一人の騎士


ー王宮の裏庭ー


アンドリュー

「もう終わりか?さっきまでの勢いはどうした

 口ほどにも無い奴らめ

 くだらないおしゃべりに使うほど時間を持て余しているのならなぁ

 もっと剣技と心身を磨け!!!!!

(ため息)

 もういい…

 今日のところは許してやる…ただ…次は無いと思え…

 失せろ!」


■アンドリューの迫力に負け、慌てて走り去っていく騎士達

■アンドリューを見かけ、走り寄るランスロット


ランスロット

「アンドリュー!こんな所にいたのか

 ん…?あれは確か…先の戦いで散ったウィルの部隊のやつか」


アンドリュー

「ああ。俺が自分よりも上の階級にいる事が気に食わないと、いきなり背後から斬りかかってきやがった

 騎士道の欠片も無いな。

 亡くなった奴の事を悪く言いたくは無いがまったく…ウィルはあいつらに一体何を教えていたんだ!」


ランスロット

「力こそ全て、勝った者だけが正義。弱者には何も語る資格は無い。

 だが…武器無き弱者には…愛を持って寄り添うべし…」


アンドリュー

「ああ

 剣を構えていない者に剣を向けるなど言語道断!

 それは剣技では無い!ただの暴力だ!

 力は振りかざす物でも、ましてや見せびらかす物でも無い…

 己を護るために

 大切な人、護るべき者を護るために致し方無く使う…

 本当はそうあるべきだ」


ランスロット

「力という物を履き違えているんだろうな

 先日隣国の部隊が、戦いの混乱に乗じて罪なき村人を蹂躙(じゅうりん)したという話も耳に入った

 嘆かわしい

 まるでその辺の荒くれ者と一緒じゃないか

 全く…同じ剣士として恥ずかしい…」


アンドリュー

「報告ではスパイとして疑わしく

 それを確かめるため致し方なく…という事だったな」


ランスロット

「ああ。諸外国では次々と女性が魔女の疑いをかけられ魔女狩りなんて馬鹿なものも流行っているらしい

 なんの証拠も無く人を殺めるなんて正気の沙汰じゃない…いったい何がどうなってるんだ…」


アンドリュー

「何か…黒い者の陰謀を感じるな…

 戦いとは別の何かが動いている様な…」


ランスロット

「ああ。アンドリュー、お前も用心しろよ」


アンドリュー

「どういう意味だ」


ランスロット

「お前は強くなり過ぎた…

 名と顔が売れるという事はそれだけ命を狙われる危険が増しているという事だ

 この世界はお前みたいに正直で筋が通った人間ばかりでは無いからな」


アンドリュー

「ランスロット

 その言葉、そっくりそのままお返しするよ

 

 夜道で奇襲をかけられたと聞いたぞ

 お前もじゅうぶん気をつけろよ

 お前は俺の親友だ…

 お前には生きていて欲しい…」


ランスロット

「アンドリュー

 ありがとな嬉しいよ

 ああ。お互い気をつけよう

 そうだ!飯まだだろ?一緒に食べに行かないか?」

 

アンドリュー

「悪りぃ!この後用事あるんだ

 じゃあ、またな!」


ランスロット

「え?おい!アンドリュー」


■アンドリューの姿が見えなくなって


ランスロット

(ためいき)

「親友…か」



ー森ー

■アンドリュー、あたりを確認し切り株に座る


アンドリュー

「よし!誰もいないな…いただきまーす

 うんまっ!この前よりも更に上手くなってる…俺もしかして天才なんじゃないか…

 

 森でこそこそ一人で食べるのは寂しいし…本当はランスロットにも食べさせてやりたいが…

 王宮でこんなもん作って食べてたら男らしく無いとみなに言われてしまうからな…

 いやー…それにしても本当に上手いなこのスコーン」


■何かの気配を感じて


アンドリュー

「…ん?何かが近づいてくる気配がする…

 なんだ?」


■馬がアンドリュー目掛けて走ってくる


アンドリュー

「!?

 馬か…ったくどっかの馬鹿が暴走させたな…」


■アンドリュー、息を大きく吸ったあと片方の手の平を馬に向けて叫ぶ


アンドリュー

「止まれ!!!」


■馬、慌てて止まる


アンドリュー

「よーしいい子だな。お座り!

 おーえらいえらい。なかなかに良い子じゃ無いか…

 毛並みも整っているし野良では無いな…

 お前のご主人様はどうしたんだ?ん?」


■走って追いかけてくる男


ルイ

(息を切らしながら)

「やっと追いついた!

 ジャンヌ!お前急に走り出してどうしたんだ…

 突然走り出したらびっくりするじゃないか!

 っと…もしかしてあなたが止めてくれたんですか!?

 本当に助かりました、心から感謝申し上げます

 私はルイと言います。あの…お名前は」


アンドリュー

「アンドリューです」


ルイ

「アンドリューありがとう。本当に助かりました…

 俺の相棒のジャンヌはとても賢いけど時々こうやって暴れるんですよ

 ったく…その度に走らされる俺の身にもなれっての…

 でもすごいな…ジャンヌが会ったばかりの人の言う事を聞くなんて初めてだ…」


アンドリュー

「ああ…それはたぶん…これかな」


ルイ

「え?それはスコーンかな」


アンドリュー

「そっ。これ、動物が食べられるように特殊な作り方をしているニンジン味のスコーンなんだ」


ルイ

「ニンジン味…通りで…ジャンヌはニンジンも甘い食べ物も大好きなんだ

 ジャンヌ…そういえばまだお座りしたままだな…そんなに食べたいのかい?

 全く…本当に君ってやつは…」


アンドリュー

 笑

「まだあるからもし良かったらジャンヌにあげてくれ」


ルイ

「良いんですか?ありがとうございます!良かったなジャンヌ」


アンドリュー

「ジャンヌ、うまいか?なら良かった…

 ん?鋭いな…確かにバスケットの中にはまだあるが…食べすぎると帰り道、ご主人を乗せて走れなくなるぞ」


ルイ

「君…ジャンヌの言葉がわかるの!?」


アンドリュー

「え?いや…あの…わかるっていうか…んー…なんとなくそんな風に言ってる気がする…かな」


ルイ

「すごい!俺もジャンヌの言葉がわかったらって思うんだけどまだまだなんだ…

 (お腹が鳴る音)

 あっ…やっべ…俺、朝食べたきり何も食べてなかった」


アンドリュー

「これ、人間用のもあるから良かったら食べるか?」


ルイ

「いや…初めて会ったばかりの者から施しなど…あっ…」


アンドリュー

「ん?また腹の虫が鳴いたようだが…そうかそうか

 では、俺は腹減ってるので失礼して

 …あぁおいしい…なあ?ジャンヌー?」


ルイ

(少し葛藤してから)

「俺にも…くれ…」


アンドリュー

 笑

「最初から意地張らなきゃ良いのに。はいどうぞ」


ルイ

「ありがとう。はむ…うまっ!?」


アンドリュー

「口に合ったようで何よりだ。良かったらイングリッシュティーも飲むか?」


ルイ

「アンドリュー。お前面白いしすっげーやつだな」


アンドリュー

「え…そうか?」


ルイ

「動物の言葉もわかる、スコーンも作れる、ジャンヌを止めた姿は実に勇ましかった」


アンドリュー

「…ありがとう…」


ルイ

「お前が気に入った!今日から毎日ここにくる!明日もここで会おう」


アンドリュー

「え?勝手にそんなこと決められても困る…」


■ケガをした鳥の様な生き物がふらふらと落ちてくる


アンドリュー

「…ん?危ない!!!っと…おい、お前大丈夫か?」

 

ルイ

「ん?変わった形だが…そいつは鳥か?」


アンドリュー

「おそらく…こいつ翼が折れてるみたいだ……悪ぃルイ。添え木に出来る様な小枝を拾って来てくれるか?」


ルイ

「小枝だな…わかった!」


アンドリュー

「怖かったなーもう大丈夫だぞ…

 傷だらけだな…これだいぶ痛いよな…今、手当してやるからな…

 ん?俺か?俺はアンドリューだ…お前に攻撃したりしないから安心しろ

 あー悪い。突然こんな事言われたら驚くよな…俺、お前らの言葉がわかるんだ…」


ルイ

「アンドリュー!小枝いくつか集めて来たけどこれで良いか?」


アンドリュー

「ああ、サンキュ…えっとー…この小枝がぴったりだな…あっ…クソっ」


ルイ

「…ん?どうした?」


アンドリュー

「いや…塗り薬はあるんだが包帯を切らしちまってた、何か布…」


ルイ

「(口で自分の服を破く)」


アンドリュー

「ルイ…お前なんで服破いて…」


ルイ

「布って…これで良いか?あっ…まだ足りないならもう少し破くけど」


アンドリュー

「いや…量は充分だ…使わせてもらうよありがとう…これでこうして巻いてっと

 …よしいい子だなぁ…大人しくしてて偉いぞ…」


ルイ

「…随分手際が良いな」


アンドリュー

「俺の仕事は怪我の手当は必須スキルだからな。ちょっとした応急処置なら一通り出来る」


ルイ

「すごいな…」


アンドリュー

「ここを結んでっとー…よし!こんなもんかな」


ルイ

「終わったか?」


アンドリュー

「ああ。ただしばらくは飛べないだろうから…ちゃんと治るまでは俺の家へ連れてくよ」


ルイ

「アンドリュー!何か俺にも出来る事は他にあるか?」


アンドリュー

「…んーそうだな…もし可能なら…包帯を少し分けてくれると…」


ルイ

「わかった!明日大量に持ってくる!」


アンドリュー

「明日!?…まあいいか

 じゃあまたなルイ…ジャンヌ…明日はちゃんとルイと来いよ?」


■森の影から笑い合う二人を見ているランスロット


ランスロット

「…ん?あいつ…誰だ?知らない顔だな…

 よく見えないけど…なんか楽しそうだ…

 俺の誘いを断った理由はこれか?アンドリュー…

 

 なんだこの感覚

 息苦しい…今まで感じた事が無い…

 胸が締め付けられるみたいだ…」



ー王宮の廊下ー


アンドリュー

「よし!夜の稽古も終わったし…早く部屋に入ってあいつを風呂に入れてやらないとな

 …あいつ寂しがって無いと良いけど…」


ランスロット

「アンドリュー!」


アンドリュー

「!?

 おう!ランスロット…ど、どうした」


ランスロット

「ん?お前、何慌ててんだ?お前こそどうした?」


アンドリュー

「いや…別になんでも無い。

 で?何か用か?」


ランスロット

「あーそうだった。最近昼はいつもどこか行っちまうからさ…明日こそはランチ付き合ってもらうぞ」


アンドリュー

「悪りぃ!明日もだけど…しばらくはちょっと用事があって無理そうなんだ」


ランスロット

「えっ…」


アンドリュー

「晩飯前の稽古には戻るから。悪りぃな」


ランスロット

(小声で)

「俺じゃ無くて、あいつと過ごすってわけか」


アンドリュー

「ん…?なんか言ったか?」


ランスロット

「いや…なんでも無い。もし王宮を出るなら最大限に用心しろよ?」


アンドリュー

「ああ!わかってる…じゃあまた明日な」


■アンドリューの姿が見えなくなって


ランスロット

「…なんだ…このもやもやした気持ちは…

 ああ!無性に腹が立つ!

 おい!お前!ちょっと稽古付き合え!

 はっ?うるさい!今すぐだ!さっさと準備しろ!」


ー森ー


ルイ

「!?

 アンドリュー!」


アンドリュー

「おールイ!早かったな…もう来たのか」


ルイ

「約束通り包帯持って来たぞ」


アンドリュー

「うわー。こんなにたくさん…サンキュ。ヴィーもきっと喜ぶよ」 


ルイ

「ん?ヴィー?」


アンドリュー

「あぁ。これからの俺たちの人生において勝利の女神になってくれたらなって。

 それでヴィーナスって呼ぶのは長いから略してヴィーって呼んでる」


ルイ

「勝利の女神のヴィーナスでヴィーか。なんか真っ直ぐなお前らしい発想だな」


アンドリュー

「そうかな…」


ルイ

「良かったな!良い名前もらえて…ん…?あれ?そういえば肝心のヴィーはどこだ?」


アンドリュー

「ああ。それならここに…」


■ヴィー、アンドリューが持っているバスケットの中で勢い良く飛び跳ねている


ルイ

「!?

 そんなとこにいたのかヴィー…すっげー飛び跳ねてるし…昨日よりも元気そうだな」


アンドリュー

「そうなんだよ…回復力すげーの!

 今朝見たら傷とかほとんど塞がってて…なあヴィー、お前本当に鳥なのか?」


ルイ

「一晩で!?

 まじか…確かに鳥っぽいっちゃ鳥っぽいけど…んー。まあとりあえず少しでも回復してるなら良かった」


アンドリュー

「この調子なら3日もかからずに元気に飛べるようになりそうだな」


ルイ

「ヴィー…ラッキーだったなぁ?心優しい俺達に拾われて」


アンドリュー

「お前それ自分で言うか?(笑)

 まあいいや…そうだ…今日はサンドイッチ作ってきたんだ…お前らとジャンヌはこっちなー」


ルイ

「アンドリューサンキュ。ジャンヌも良かったなー

 そうだ。これ!」


アンドリュー

「ん?これはなんだ…青い石?」


ルイ

「トルコ石っていうんだ。

 俺の故郷では邪悪なものから身を守り、災難を回避し、幸運をもたらす効果があるといわれている

  古くから、旅の安全を守る石として大切な友に渡したりするんだ…」


アンドリュー

「初めて知った」


ルイ

「アンドリューもらってくれないか?」


アンドリュー

「え?」


ルイ

「飯のお礼と友情の証に…あっ、でも迷惑なら…」


アンドリュー

「いや…大切にするよ

 ありがとうな、ルイ」


ルイM

アンドリューは毎回何かしら作って持ってきてくれた

そのどれもが美味しかった

ジャンヌも楽しそうだし

少しずつ元気になっていくヴィーを見ているのも嬉しかった

でもなにより…アンドリューに会える事自体が

俺にとっては1番の楽しみになっていた



アンドリューM

それから俺たちは、毎日森で会った

ヴィーも順調に回復していた

ルイは初めて会った時からすごく話しやすくて…

ランスロットといる時とはまた違った楽しさがあった

今まで感じた事の無いこの感覚に、俺は正直戸惑っていた…





ー王宮の廊下ー


ランスロット

「アンドリュー!…少し…良いか?」


アンドリュー

「ランスロット、なんだよ改まって」


ランスロット

「大事な話なんだ!俺の部屋に…来てくれるか?」


アンドリュー

「ああ。わかった」



ーランスロットの部屋ー


ランスロット

「散らかってて悪いな。あっ!そこのベッド座ってくれ」


アンドリュー

「ああ。じゃあ失礼して」


ランスロット

「これ…見てくれ」


■机の上に写真付きの資料を置くランスロット


アンドリュー

「ん?なんだ…?次の作戦に向けた敵国の機密情報か…!?」


ランスロット

「アンドリュー。お前、そこの男に見覚えあるよな?」


アンドリュー

「…俺は知らない…」


ランスロット

「そうか…なら話を変える…

 今後二度とそいつと会うな」


アンドリュー

「なんでお前にそんな事言われきゃなんないんだよ!お前、ルイの事なんにも知らないだろ!

 あっ…」


ランスロット

「ん?お前そいつの事知らないんだろ?ならなんでそんなにムキになってるんだ?」


アンドリュー

「…」


ランスロット

(ためいき)

「まあ良い。そいつがというより…

 その国がやばいんだ…魔女狩りの話は前したよな?」


アンドリュー

「ああ。罪の無い女性がいわれの無い罪を着せられ魔女と呼ばれ、次々に火炙りにされているっていう…」


ランスロット

「そうだ。その魔女狩りをしているのが、まさにこの国なんだ。

 諜報部隊から届いたその文書を読んで俺はこう考えている…魔女狩りで処刑されたのは罪の無い人間だ…

 だが…本物の魔女…いや…古の秘術を使う者がその国には確かに存在している」


アンドリュー

「!?

 なぜそう思う」


ランスロット

「その資料の2枚目以降を読んでくれ」


アンドリュー

「2枚目以降?

 …!?これは…こんな事が本当に?」


ランスロット

「な?その事件全て、到底人が成せる物では無いだろう?

 もしかしたら姿を変え、すでに我が国にも紛れ込んでいるかもしれない

 俺もあれから何度となく奇襲に合っているしな…」


アンドリュー

「ランスロット…」


ランスロット

「俺はお前が心配なんだアンドリュー!

 正直おまえが会っているこの男がどんな奴かはわからない…

 ただ…この国はやばい…もうあいつと会うのはやめろ!」


アンドリュー

「!?

 あいつ?

 ランスロット…お前まさか俺を尾けたのか?」


ランスロット

「!?

 そ…それは…」


アンドリュー

「俺がそんなに信用できないか!?

 俺は別にスパイでもなんでも無いぞ!!!」


ランスロット

「お前をスパイだと疑った事なんて一度も無い!

 ただ俺は…お前のことが心配なんだ…」


アンドリュー

「俺は王国騎士だぞ?常日頃、訓練をしている

 今まで一日たりとも鍛錬を怠った事など無い!!!!」


ランスロット

「ああ。わかっってるさ!けど…

 けど…お前は女だろ!

 !?

 いや…なんでも無い

 今のは口が滑っただけだ…悪い、忘れてくれ…」


アンドリュー

「…ランスロット…お前知っていたのか…

 確かに俺は生物学上は女だ…

 ただ、家族のためにあの日男として生きると誓ってからは、元の名前も捨て男として生きてきた!

 今までもこれからもそれは変わらない!」


ランスロット

「お前が家族のために騎士になった事も知ってる!

 誰よりも努力してるのを俺はずっとそばで見て来た!

 だからこそ…お前が心配なんだよアンドリュー」


アンドリュー

「何がだ…」


ランスロット

「お前は…人を簡単に信じ過ぎる…」


アンドリュー

(ためいき)

「ランスロット…心配してくれてありがとう

 情報は頭に入れて警戒はしておくが

 ルイはお前が心配する様なやつじゃないし…俺は大丈夫だ

 …とにかくお互い気をつけよう

 じゃあな…」


ランスロット

「アンドリュー」


アンドリュー

「ん?うわっ」


■ランスロット、そのままベッドにランスロットを押し倒し手首を押さえつける


ランスロット

「何が大丈夫だ…簡単に押し倒されてんじゃねぇか…」


アンドリュー

「おい!ランスロット何ふざけてんだ…掴んでる手を離せ…

 俺の上から退け」


ランスロット

「俺一人相手にこのザマか?

 なーにが大丈夫だ

 大勢に奇襲をかけられたらどうする?

 誰もがお前みたいに正々堂々剣を交えにくるものばかりでは無いんだぞ!」


アンドリュー

「ランスロット…」


ランスロット

「なあ?アンドリュー…あいつにはもう二度と会わないと約束してくれ!」


アンドリュー

「ランスロット…言いたいことはそれだけか?」


ランスロット

「ああ」


アンドリュー

「そうか…話が終わったらさっさと退いてくれ」


ランスロット

「アンドリュー…なんでわかってくれないんだ!

 俺はお前が心配なんだよ…」


アンドリュー

「んっ!!!」


ランスロット

「!?」


■急所を蹴り上げられ声が出ないランスロット


アンドリュー

「ランスロット…

 俺にとってお前は親友だ…

 だがな…いくら親友でもやって良い事と悪い事がある…

 俺の秘密を知っても黙っていてくれた事は感謝する

 ただ…俺は一方的に誰かに守られる様なお姫様じゃ無い!

 この王国の騎士団長だ!

 その身体の痛みと共によーく脳に刻みつけておくんだな!

 俺はもう帰る…じゃあな」


■アンドリューが部屋から出て行ったのを確認して


ランスロット

「っ!ってぇぇぇ…

あんの馬鹿!容赦なく人の急所を蹴りやがって…

ったく…


(息を整えてから)

 俺だってなんでこんなことになってんのか自分で自分がよくわかんねぇよ!

 お前が女なのはもうずっと前から知っていた…

 それでも…俺にとっては良きライバルでしかなかった…

 あいつが…現れるまではずっとそうだったし

 今まで通り、ただ一緒に稽古をしてそばにいられれば幸せだと思っていた…

 あいつが現れて、あいつと楽しそうにしているお前を見ていたら気づいてしまったんだ…

 なあ?アンドリュー。

 ならこう言ったらお前は行かずにいてくれたのか

 俺は心配なんだ…

 お前のことを女性として好きな自分に気づいてしまったのだから。と…」



アンドリューM

なんでこんなに心臓が早いんだ…

怖さからじゃない…

また別の感情が鼓動を高めている

あいつに掴まれた腕と俺を見つめる真剣な瞳が頭から離れない…

ランスロット…

いつの間にあんなに、逞しくなっていたんだ…


 

ー翌日、森の中ー


ルイ

「アンドリュー。いよいよだな」


アンドリュー

「あぁ。怪我は完全に治った

 もう飛べるはずだ…ヴィー!ほら…出てこい

 その翼を使って大空に羽ばたけ!」


■嬉しそうに大空を飛び回るヴィー


ルイ

「おおー。良かった。ちゃんと飛んでるな」

 それにしてもやっぱり見れば見るほどこいつ変わってるよなぁ…」


アンドリュー

「ああ

 鳥に見えなくは無いがな…翼も嘴(くちばし)もあるし

 なあヴィーよく聞け。俺もな…小さい時はよくいじめられた

 すっげー弱かったからな

 でも泣いてても誰も助けてはくれなかった

 …自分のことは結局自分で護るしか無いんだ

 だから俺は強くなった

 お前も強くなれ!

 今日でお別れだ…

 もうここに来るんじゃ無いぞ」


ルイ

「元気でなー」


■ヴィー、空へ飛んでいく


アンドリュー

「行っちまったか…なあルイ?

 あいつ…今度こそ強くなれると思うか?」


ルイ

「さあなー。まあでも…またいつか大きくなってどこかで会えたら良いなー」


アンドリュー

「だな…ん?雨粒?」


ルイ

「やばい!本格的に降ってきた…どっか近くで避難できる所…」


アンドリュー

「!?

 あーなんだロイドか…今日は非番だったか…

 え?この近くに小屋が?案内してくれるのか、サンキュ

 ルイー!この近くにどうやら小屋があるらしい…

 ひとまずそこに避難しよう!」


ルイ

「あぁ!わかった!」


■アンドリューたち、走って小屋へ避難する



ー森の小屋の中ー


ルイ

「うっわ…服絞れる…結構濡れたなぁ…さっび」


アンドリュー

「…」


ルイ

「…アンドリュー…どうした?

 服脱がないと風邪ひくぞ?」


アンドリュー

「いや…俺は大丈夫だ

 (くしゃみ)」


ルイ

「くしゃみしてるじゃないか…一体何を恥ずかしがって…別に裸ぐらい男同士なんだしいいだろ…」


アンドリュー

「…」


ルイ

「変なやつ…まあアンドリューがいいなら俺はいいけど…」


アンドリュー

「あー。ロイド、お前がここを教えてくれて本当に助かったよ

 休みの日なのに悪かったな…

 え?あたたかい紅茶を持ってきた?くれるのか?

 じゃあ…遠慮なくいただこうかな」


■ふーふーしてロイド(部下)の水筒から暖かい紅茶を飲む


アンドリュー

「おー。身体あったまるなぁ…ありがとうな

 !? 

 なんだ…頭が…ぼーっとしてきた…

 声が…頭の中に響いてくる…」


■強力な睡眠薬で頭がぼーっとしながらロイドの質問に答えてしまう


アンドリュー

「ん?…俺の秘密?

 俺の正体…秘密…隠している事…

 俺は…女だ…

 そして…この国の王国騎士だ…」


ルイ

「アンドリュー…急にどうした?

 何わけのわからない冗談を…」


アンドリュー

「冗談なんかじゃない…

 ほら…よーく見ろ…」


■アンドリュー、服を脱ぎ、さらしで巻かれた胸を見せる


ルイ

「アンドリュー…お前女だったのか…だから濡れても服を脱がなかったんだな…

 それは悪かった…

 でも何で急にそんな話…

 ん?どうしたアンドリュー

 焦点が合って無いぞ…

 おいお前!アンドリューに何を飲ませた!

 はっ?睡眠薬?何の為に?

 お前…一体何者だ!

!?

あ…頭がっ…ゔっ…」


■ロイドの呪文で操られるルイ

■アンドリューに近づき首を絞める


アンドリュー

「ロイド…お前ルイに何した…

 ルイ?おい!どうした

 やめろ!なんで首なんか絞め…

 ルイ…

 うっ…」


■気絶するアンドリュー


ルイ(操られている)

「首を締めた所でこいつは死なないだろう

  こいつは敵国の剣士…

 そして魔術を扱う魔女…

 生かしておいたら我が国は滅ぼされる

 魔女と疑わしいやつはみな…一人残らず火炙りにしなければならない…

 明日…こいつを魔女として処刑する」

 


<現在>

ー処刑場ー

■広場にて十字に磔にされたアンドリュー、十字の下には薪が並べられている


アンドリューM

気づいたら俺はここに磔(はりつけ)にされていた

なぜかわからないが声が全く出ないのだ

恐怖からだけでは無い

どんなに出そうとしても風の音さえ鳴らない

何が起きている…


ルイ

「みなの者よく聞け!こいつの名はエミリア!

 敵国ソレイユで男と偽り剣士として数々の命を葬ってきた

 そして…魔術を扱う魔女でもある…

 生かしておいたら我が国は滅ぼされる

 魔女と疑わしいやつはみな…一人残らず火炙りにしなければならない…

 我が国の平和のため、…こいつを魔女として処刑する!!!!!!」


アンドリューM

ルイの宣言に呼応する様に群衆の歓声が聞こえる

こんな終わりがあるのか?

俺は…自分の名前も、過去も捨て

女である事も捨て…男として、騎士として家族のために生きてきたのに…

戦地で戦いの最中に命を落とすならまだしも…

いわれも無い魔女の疑いをかけられ火炙りで処刑…

しかも…アンドリューではなく

捨てたはずのエミリアの名で最後を迎えるとはなんたる皮肉…

これが…これが俺の運命だとでもいうのか…

!?

あれは…

ランスロット。な訳無いか…

あの時お前の言葉に素直に耳を傾けていたらこんな事には…

本当にすまない…

せめて俺の作ったスコーンでも食わせてやりたかったなぁ…

王国の騎士団を頼んだぞ…

バカな俺を、どうか許してくれ…


<現在より少し前>


ー王宮ー


ランスロット

「あぁクソっ!

 あいつは一体どこに行ったんだ!

 城中探しても見つからないとは…

 だから一人で出歩くなと…

 あぁもう!!!!!!!」


■王宮の窓から中に飛び込んでくるヴィー


ランスロット

「!?鳥か?

 こら!ここは王宮だ!

 帰るところを間違えているぞ!

はっ?おい!止まれ!!!」


■ヴィー、王宮の廊下を飛んでアンドリューの部屋へ飛んでいく

■ランスロット、必死に追いかける


ランスロット

(息を整えて)

「お前、すばしっこいな…

 ん?ここは…アンドリューの部屋…

 

 こら!そんなに何度も嘴(くちばし)でつつくな!

 お前が怪我しちまうだろう…

 おいもうやめろ!嘴を痛めるぞ!ここにいったい何があるんだ…」


■ランスロット、ヴィーに気づいて


ランスロット

「!?お前…森でアンドリューと一緒にいた鳥か?

 もしかして…アンドリューになにかあったのか?

 わかった…

 許せアンドリュー!

今は一刻を争うこの扉叩き斬る

 はっ!」


■ランスロット、剣でドアを斬る

■そのまま部屋の中に入るヴィー

■部屋の中、光っている場所がある。ヴィーその上を旋回する


ランスロット

「!?

 なんだこの光は…

 これは…石?

 これを持てばいいんだな。わかった

 無くさないようにポケットにしまって…


 ん?おい!おまえ何して…

 もしかしてあいつがどこにいるのか知ってるのか?

 そうか…わかった!案内してくれ!

 アンドリュー…どうか無事でいてくれ!」



ー処刑場ー


■上空、大きな鳥に乗っているランスロット

■アンドリューからはまだ遠く見えない


アンドリューM(エミリア)

それにしても嫌味なぐらいに真っ青な空だなー

ん?幻聴か?

ランスロットの声が聞こえる様な…


ランスロット

「アンドリュー!!!!!!」


アンドリューM

 …?

 …!?

 大きな鳥に乗ったランスロットと…ヴィー?


ランスロット

「アンドリュー!

 良かった!無事…では無いが…とりあえず危機一髪ってところかな…

 今、その縄切ってやる!」


アンドリューM

ランスロット…

なんでここが…

俺、あんな事言ったのに来てくれたのか


ランスロット

「怖かったよな…

 怖さで声も出せないか?

 俺が来たからもう大丈夫だ!

 なんて言ったら…また俺はお姫様じゃないとか言って怒るんだろうな笑

 ん?なんだよ鳥…痛てぇからつつくなっつうの…

 そこに食いもんなんか入ってねぇぞ?」


アンドリューM

…?


ルイ

「!?

 もう一人増えたぞ!

 魔術を使って仲間を呼んだに違いない…

 弓矢用意…

 構え!」


ランスロット

「!?

 ここで弓矢なんて撃たれたらアンドリューが危ない…

 アンドリュー、少しだけ待っててくれ」


■広場の騎士、みな上空めがけて弓を構えている


ランスロット

「おーい!

 無能どもーどこ狙ってんだぁ?

 俺はここだぜ?」


ルイ

「こしゃくな…自ら的になるとは…

 面白い…

 狙いを修正…

 全員構え…

 放てぇぇぇぇぇ!!!!!!」


■飛んでくる弓矢を全て剣で落とすランスロット


ルイ

「なに!?

 弓矢を全剣で防いだ…だと…」


ランスロット

「防御こそ最大の攻撃ってな…

 覚えとけ…ソレイユの騎士はな…闘わねぇ!

 護るんだよ!大切な者を全力でな!!!!!!!!」


アンドリューM

ランスロット…

お前はやっぱり最高の騎士だな…


■ヴィー、何かを咥えた状態でアンドリューの元へ飛んでくる


アンドリューM

!?

ヴィー…お前それは…

俺の部屋から持ってきたのか?

あいつがくれたトルコ石なんて今見たくない…

はっ?

ルイが操られてる?

ヴィー…どういう事だ?


なるほど…そういう事だったのか…

俺としたことが友を一瞬でも疑うなんて

信じきれなかったなんて情けない…


■悔し泣きをするアンドリュー

■涙がトルコ石に落ちる

■トルコ石が光り広場中を照らす


ルイM

これはいったいなんなんだ…

俺は今何をしているんだ

…友を目の前で磔(はりつけ)にし、もうすぐ魔女として火炙りに…

これが本当に現実なのか?

アンドリュー、お前はなぜ否定をしないんだ?

出会った時にはもう決まっていたというのか

それとも…俺たちが出会ってしまったから

運命の歯車が狂ったとでもいうのだろうか…

ああ…出来る事なら

君を護れる男になりたかった…


アンドリュー

「!?

 今、ルイの心の声が聞こえた…

!?

俺の声…出る…

よし!今なら…」


■大きく息を吸い込んで叫ぶ


アンドリュー

「ランスロットー!!!!

俺が悪かった…

お前の言葉を無視してお前をこんな目に…すまない

助けに来てくれてありがとう!!!!!!」


ランスロット

「アンドリュー!」


アンドリュー

「ルイーーーーー!!!!!

俺はお前を疑ってしまった…

友情の証としてこんな素敵なプレゼントをしてくれたお前を…

信じきれずすまなかった…」


ルイ

「!?

 アンドリュー!?

 

!?

魔術が…解けた

身体が動く!

アンドリュー!俺の方こそすまなかった!

今助ける!!!!!!」


アンドリュー

「みなさん…

 私は魔女ではありません!

 確かに私が生まれた時の名前はエミリアです

 性別も女でした。

 でも、家族を護るため名前を捨て、男となり騎士となり今日まで生きてきました

 今までこの国では罪の無い女性が何人も魔女として処刑されてきたと聞いています

 どうか目を覚ましてください!

 真実を…見誤らないで…

 本当の敵は…別にいます!

 真の敵をみなで倒しましょう!!!!」



ーそして現代ー


エミリア(女)

「!?

 …私…生きてる?」


ランスロット

「俺たち…帰ってこれたのか?」


ルイ

「…さすがにこのVRリアル過ぎん?」


エミリア(女)

「本当にゲームだったんだよね?

 えっとー

 運命の輪のだっけ?

 普通に痛かったんだけど…

 あー生きてて良かった」


ランスロット

「エミリア!

 お前が王子と騎士に取り合われるかっこいい女騎士になりたいーとか言うからだぞ」


エミリア(女)

「だって…全女性の夢なんだよ?

 タイプの違う二人の男性に…

 しかも王子と騎士に奪い合われるなんてさ…」


ルイ

「奪い合いの規模がだいぶデカかったけどな…」


エミリア(女)

「まあでも楽しかったじゃん?

 滅多にできない経験できたし!怖かったし痛かったけど…」


ランスロット

「でもエミリア

 なんでお前女騎士なんだよ!

 奪い合われたいならお姫様とかのが良いだろ」


エミリア(女)

「えー?

女騎士かっこいいじゃん!

それに…私お姫様なんてキャラじゃないし?」


ランスロット

「ふーん

 まあでも…お前は別に強くなる必要なんかないよ」


エミリア(女)

「え?なんで?」


ランスロット

「そんなの…俺が護るからに決まってんだろ」


エミリア(女)

「…///」


ルイ

「おいランスロットーお前抜けがけすんなよ!

 俺だってエミリアを護れる様に毎日身体鍛えてんだからな!

 エミリア…好きだよ…」


エミリア(女)

「…///」


ランスロット

「あれ?耳まで赤いぞ?照れてる?」


ルイ

「ほんとだ…エミリアやっぱお前可愛いいな…」



エミリアM

うそでしょ?

突然の男友達二人からの告白

え?何この幸せなシチュ…

お願い…夢なら覚めないで…

END



忘れないで?あなたの運命を決めるのはいつだって自分だということを…

あなたへの幸運はもうきっとすぐそばに…