同志社大学ラグビー部新主将に CTB山口修平選手!
平成30年2月4日、「2018年度 新体制のお知らせ」と題し、同志社大学ラグビー部の新年度の監督・学生幹部が同部公式HPに発表された。
監督の萩井好次氏の再任は当然として、新主将にCTBの山口選手が選出されたことは、過半の同志社ラグビーファンは驚きをもって受け止めた。正直、かく言う私にも想定外であった。何故なら公式(A)戦での実績がほとんどない選手だったからである。
過去の主将クラス抜擢者は、ほとんど例外なく1年か2年次よりバリバリのレギュラーを張っていた。しかも、昨年の関西リーグ6位と言う不名誉な実績を受け、再建が至上命令の非常事態下、新年度のリーダー役に託されたの任務は例年になく極めて重いはずなのに・・・。
確かに山口選手の入学前の前評判は高かった。高校代表候補にも選抜され、同志社香里高校ラグビー部出身の大型センターとして早期のレギュラー定着が期待された。ただ、1回生の時は、定かではないが怪我で出遅れた感が大きい。高校の時の怪我の持ち越し(リカバリー手術?)とかの噂も流れた。
私の記憶では、頭角を現して来たのは2回生の夏以降である。正直、同志社Aのセンターは、有望選手が目白押しでレギュラーの壁は厚かった。
ただ、スピードもあり、人にも強い山口選手は、久方に登場した大型センターとして、ファンにとって大いに魅力的な存在に映っていた。「何故、先発起用しないのか?」と前監督に迫ったら「もう少しラグビーを勉強する必要がある。」とのことだった。
私は、縦突進の馬力だけでなく、ポジショニングやラインへの連携等の目配りや声掛けが更に求められているのかなと受け止めた。結果として、2回生の秋シーズンは、Aのリザーブに甘んじる形となった。
その山口選手が大きく花開いたのは、3回生の春シーズン(平成29年)である。冬シーズンの鍛錬の成果か、更に大きく逞しく成長した山口選手は、4月のセブンズには先発レギュラーとして出場し、スピードと体力を活かした縦突進のみならず、前後左右へと機動力のあるところを見せ付けた。完全に一皮も二皮も剥けた印象を受けた。
論より証拠、5月4日に秩父の宮ラグビー場で行なわれた「第100回同志社・慶應定期戦」では、先発主力メンバーとして登場、同志社の誇る大学最強レベルのバックスラインの一員として勝利に貢献した。この試合で誰もが山口選手がチームの主力として2017同志社ラグビーの牽引役になるのは間違いないと確信した。
事実、春シーズンは、柔の永富、剛の山口として魅力的な全国屈指の強力CTBコンビとして活躍し、不動のレギュラーに定着した。秋シーズン(公式試合)に向け、突出した成長人材としてファンの期待は実に大きく、春シーズンから仕上げが遅かった同志社の頼もしいリーダー役の一人としてファンの誰もが意識した。
しかし、ううむ・・・、夏合宿に事件は起こった。私にとって事故と言うより正に事件であった。8月20日、網走で行なわれた東海大学との練習試合、開始直後、その「事件」は起こった。サイドライン脇で撮影していた私の目前5mで事件は起きたのだ。
試合開始のクックオフ早々、同志社大学は筑波大学に比べ、見た目もフィジカル面も全て劣後しているのがみて取れた。特に、スクラムや密集において体力負けは誰の目にも如実であった。スキルでかわす余裕もなく、パワーで完全に遅れを取っているのが素人目にも明らかだったのだ。同志社が実に“ひ弱く”見えた。
前半の5分にも満たない時間帯、苦し紛れに自陣10mからバックスに廻した同志社。ボールを受けたCTB山口選手③は、パワーで負けていなかった。琢磨しくも敵ディフェンス陣何人かをハンドオフでなぎ倒し、右ライン際を好走、敵バックスラインの裏に一人で出た。
ただ、集散の速い東海大は敵陣10mラインを超えて内に切れ込む山口選手を(確か)外人選手を含む3人が掛かりで押し倒した。如何せん、同志社のフォローがない。ノーットリリースの笛。
え・・、山口選手が起き上がらない・・・・。山口選手の惨状は誰の目にも明らかだった。山口トレーナーは、「骨は大丈夫でしょう。」と応えていたが、慰みの言葉でしかなかった。東海大学に大敗したことより、山口選手が怪我で戦列を離れたことの方が痛かった。
結果として、山口選手の2017年は終わった。何とか大学選手権までには・・とファンの誰もが熱望し、本人もリハビリに勤めたが、間に合わなかった。
秋シーズン深く、「大学選手権に出れないのは、山口君のせいだ。」と冗談交じりに本人に話したが、半分冗談、半分本気。それほど痛い欠場となった。
かくして、今般、公式試合でのさしたる実績もないまま、山口選手は新主将に選出された。聞くところによると監督の意向も強く、選手皆の納得づくでの選出だそうである。個人的な想像ではあるが、チーム再建と言う重要な局面に敢えて山口選手を起用したところに、萩井監督の並々ならぬ決意が感じられるのだ。
試合中、理論と実践を身を以って示した野中前主将とは少し異なり、やはり山口選手の怪我も厭わぬ突出したスピードと破壊力は実に魅力的である。決して逃げない。テクニックでかわすことなく、真向勝負を挑む!何事にも絶対に手抜きしない!
さして話はうまそうにないが、随所に見られる「気概溢れるプレー」に同志社ラグビーの指導者(監督)は、2018年を掛けたのではないか。
春シーズンの監督交代の遅れからか、チームの仕上りが最後まで遅れた昨シーズンの閉塞感から脱出し得るのは、この男のリーダーシップに他ならない。2018年度のリスタートは早いと聞いた。この前広島に行って来たから言うわけではないが、決して「過ちは繰り返してはならない」のである。
最後に・・・。勇猛果敢なプレーとは裏腹に、話してみるとファンにも実に丁寧で優しい選手である。ただし、「いつも凛として真正面を向いている」のが印象的な男である。
(文責:F)