帝国の時代20-百貨店誕生
2022.08.30 11:30
1860年1月23日、突如皇帝ナポレオン3世の勅令によって英仏通商条約が締結された。フランスはルイ14世のコルベール以来の重商主義があり、外国製品に高関税をかけていた。議会にかければ議員達に反対されるに決まっている。そこで皇帝勅令として一気に関税引き下げを実施した。
この通商条約によって石炭、羊毛、綿花など原材料の関税は30%に引き下げられた。驚いた産業資本家に対して皇帝は、設備投資をする会社には、大規模な金融支援をすると約束して反対を抑えた。これによって関税と安い人件費にアグラをかいていた資本家は、こぞって近代化を行う。
設備投資と原材料安で、フランスは空前の好景気に沸きたち、イタリア戦争の重苦しいムードを一気にふりきり、皇帝万歳になり「帝国は平和である」というナポレオン3世のテーゼが再び確認された。世界の商品がパリに集まるその時代を象徴するのが百貨店である。
世界最古の本格的百貨店といわれるボン・マルシェは1853年に開店した。ネーミングは「安売り」であり高級とはほど遠い。しかしパリ万博をヒントに、ハデなショーウィンドウと安売りバーゲンで客寄せをして、百貨店のモデルとなった。エミール・ゾラは「消費信者のための消費のカテドラル」と呼んだ。