消費税とインボイス
8月の終わり、暑すぎた夏がようやく去ろうとしています(とはいえまだ神戸は暑いですが)。大学の研究室は海辺なので街なかよりは若干涼しく感じる気もします。
現在、税理士会(日税連)の国際税務情報研究会の一専門委員として、諸外国の付加価値税(VAT)や物品サービス税(GST)の研究をしています。日本でもいよいよ来年10月からEUと似たインボイス制度が始まるのでタイムリーなトピックです。
その日本型インボイスを含む消費税制を諸外国(特にEU)と比べてみると、いろいろとまだ未成熟ともいえる部分があると感じます。日本でインボイスはまだ始まってもいないので当然といえば当然ですが。
例としては、免税事業者/課税事業者の区別とインボイス登録事業者との関係があります。インボイス登録が本来、消費税を転嫁するライセンス登録のようなものであるとすれば、インボイス登録をしない事業者は消費税を転嫁できないとする方向に行くのが自然のように思います。
実際、EUではそのような制度になっているようです。VAT登録しない事業者は、VATを転嫁する権利をもたないというシンプルな構図です。しかし日本では、インボイス登録事業者でなくても消費税を転嫁すること自体はできるので、結果として、免税事業者はインボイスを発行することはできないけど顧客に消費税を請求することはできます。
さらに、日本ではインボイス登録事業者と課税事業者の地位が対応していないので、課税事業者であってもインボイス登録をしていない事業者もあり得ることになります。そうなると、免税事業者や、インボイス登録をしていない課税事業者が顧客に転嫁する消費税は、いずれも控除サイクルから外れることになり、それは消費税制の趣旨に合わないのでは、という疑問がわきます。
このほかにも、日本の消費税制が課税事業者や簡易課税の選択・取りやめについて前課税期間末までの届出を義務付ける「事前届出制」を採用していることが事業者や税理士にとって大きなリスクになっている点も、届出を柔軟化することによって改善されるべきだと思います。
ほかにも言いたいことが色々ありますがとにかくは研究会委員としての務めを果たせるように精一杯取り組むつもりです。