「機転が利く人・空気が読める人でないとイイゾンビにはなれないんですよ(笑)」オバケン:吉澤正悟さんインタビュー!
↑オバケン事務所前はお寺なんです
――まず「オバケン」さんはどんなことをやってらっしゃるんでしょうか。
吉澤)オバケンは「今までにないおばけ屋敷を作ろう」がキッカケなんです。古来から続く従来のウォークスルー型ではなく、もっといろんなタイプのお化け屋敷があっても良いのではないかって。今は方南町にオバケ屋敷とホラーテイストな脱出ゲームと忍者屋敷、港区にもお化け屋敷が一件、那須ハイランドパークの中にも1軒と、福岡の方にタイトーさんとやらせていただいているくらやみ遊園地という施設がありまして、これらが常設になります。今年の夏には大好評の「ゾンビキャンプ」※が再開します。他にも単発イベントを多数開催しております。
――吉澤さんは「ホラープランナー」という職業ですが具体的な業務内容といいますと。
吉澤)そもそもホラープランナーという職業名は「台場怪奇学校」を手掛けてらっしゃる斎藤ゾンビさんと平野ユーレイさんが考えた職業名なんですよ。基本的には企画・製作・演出・出演まで全部やるんです。我々はオバケ屋敷の先人にもちゃんと挨拶もしてこの職業名を使わせてもらってます。本当にまわりからもびっくりされるぐらいなんでもやります。キービジュアルもCMも自分たちで作りますし、施工や塗装、最近では3Dプリンターで装飾や小道具も作ってます。企画書で終わりじゃなくて運営マニュアルも作りますし、運営管理やバランス調整、本当に全部をプロデュースするのがホラープランナーです。
――いろんな業種に形ばかりのプロデューサー、プランナーって増えましたもんね(笑)なぜこのイベント、事業を始めたんでしょうか。
吉澤)僕と代表の日比が立ち上げたんですけど、昔から心霊・廃墟に興味があって、学生のころ心霊スポットとかにもお互い行ってました。この会社に入ってしばらくした頃、親会社の社長から「方南町の物件があるから何かやらないか?」ってことで声を掛けていただいたんです。ならやっぱり好きなことをやりたい、誰もやってないことがやりたいと思ってオバケ屋敷をやらせてもらいました。当時は小学生が300円、大人500円で。もともと映像の仕事をやってたので、コントロールルームで映像を制作しつつ、お客さんがきたら脅かしに行くみたいな。そこから面白いことをやってるってメディアの方が取り上げてくださって。オバケ屋敷といえば遊園地、だったところ町中にあると。
――そのウォークスルー型との違いといいますと?
吉澤)「順路」が決められてないので映画やロールプレイングゲームの主人公になったような動き、自分から動いて考えて進むというホラー体験ができます。
いわゆる「脱出ゲーム」の方が数年早かったと思うんですけど、まだホラーを前面に押し出しているというのは当時無かったですし、脱出というよりはミッションをクリアしていくっていうオバケ屋敷って感じでしたね。
―女性のお客様が多いとお聞きしましたがそれも大きな特徴ですね。
吉澤)確かに。6:4ぐらいで女性のお客様の方が多いですね。女性だけのチーム、男女カップルで参加されたりは非常に多いですね。ただ、シンガポールにオバケ屋敷を作りにいったときは男性だけの来場が多かったですね。国や地域の特徴なんでしょうね。
――どのような想いで制作されていますか。
吉澤)最近のケースで言いますと女性受けを狙ったことは無いんですけど実態として女性客が多い、だったら女性向けに制作してみようと、イケメン執事たちが接客してくれるというコンカフェとコラボした案件はもの凄く好評ですね。
――ドラマティックで悲しい結末で・・・とか想像します。
吉澤)舞台も神楽坂にあるお洒落な洋館の邸宅レストランで、そのオーナーさんが実際イベントにも参加もしてくださってて我々オバケンのことを応援してくださってる方なんです。これはもう一回目から大盛況で、既に第三弾まで決まってます。ホラー界の中のイケメン市場です(笑)
――やはりリピーターさんが多いですか?
吉澤)リピーターさん、ありがたいことに多いですね。毎回新鮮に楽しめるように、ストーリーも1章から4章まで選べるようになってますから、一度来て面白かったらまた通ってもらえるようにって工夫しています。ただ最近ではコロナの影響もあって新規のお客様は来にくかったとは思うんですが少しづつ新規のお客さんも増えてきてますね。
――それは友達も誘いやすいですね。
吉澤)ここ方南町は地下鉄丸ノ内線の終点なので足を運ぼうと思ってもらうには新宿とかターミナル駅に比べてハードルが高いんです。楽しかったねで終わらずまたこの町に来てもらいたいですから、他ではやってないような何個もストーリーがあるという形にしました。
――しかも機械を使ったマシンギミックではなく実際に人(ヒト)が怖がらせてるという。
吉澤)マシンも使ってないわけではないですけど、ほぼほぼ人でやってます。人の良さって状況判断ができるってことで、お客さんに合わせて驚かせ方を変えられるんですよね。『あ、来る来る』って思ってる人にはタイミング遅らせるとか。正面に出るのか、横からか、それとも通り過ぎた後で背後からか、とか人が空気を読んで演出していけますよね。
――勘のニブい人だとゾンビは出来ませんね(笑)
吉澤)ゾンビにもいろいろいるんです。一回死んで蘇ったのが「こてこてのゾンビ」で、狂犬病的な「ビーストゾンビ」は最近だとヒト型でないやつもいますし。僕が好きなのはぐわっと向かってくるアグレッシブな「ビーストゾンビ」なんですよ。現場に「ゾンビ指導員」として入ることもあります。
――ゾンビ先生!(笑)
吉澤)端から見ると何も考えてない塊が動いてるようにみえますとけど、ゾンビって結構難しいんです。「ここで!」「ここは!」って機転が利く人・空気が読める人でないと「良いゾンビ」にはなれないんですよ(笑)やっぱり常に見られてる意識、リアリティがないと。
――確かに「今日もええ仕事できたわ~」ってベンチで休んでるゾンビは冷めますね(笑)
吉澤)目の色無くすために全眼のコンタクト付けたりもしますけど、あれってぶっちゃけめちゃくちゃ目痛いんですよ!でもこっちに向かって来ながら「痛い痛い痛い痛い!」って声上げてまばたきしてるゾンビってイヤですよね(笑)
――イヤです(笑)ゾンビたちはその回、その場のお客さんの空気感を敏感に察知して怖がらせるんですね。
吉澤)だから皆さんそれぞれの体験にも差があって、それが面白くなってまたこの町に来てくれるんだと思います。
――この町に貢献できた、社会貢献できたという事例などあればぜひ。
吉澤)ちょうど空き家の問題とかメディアで取り上げられ初めたころ、オバケンのお化け屋敷物件は2件とも再建築不可物件ですし、そういった点でも空き家再生という観点でTV番組「所さん事件ですよ」や「TVタックル」でも取り上げてくださいました。
――都会といわれる地域でも空き家問題、深刻ですもんね。
吉澤)オバケンを始めて10年ですから、町の人たち、商店街の人たちの我々を見る目も変わってきたなと感じてます。最初は「オバケ屋敷なんてやめて欲しい」って方もいらっしゃいました。我々の親会社の社長は「商店街全体を盛り上げていきたい」という想いから「方南町遊園地化計画」を提唱してますし。「ベビーカーおろすんジャー(地下鉄方南町駅でベビーカーを下ろすお手伝い活動をするヒーロー)」が出動してたり、系列店のイタリアン「アキッチョ」では「超巨大ピザオークション」とか。あ、雨の日1000円位で落札されちゃったことあります(笑)
――怖がらせたりお助けしたり(笑)
吉澤)それこそ、念願かなって今年の2月に「方南町おばけまつり」も実施させてもらって。おばけの映えスポットで写真撮ってもらったり、スタンプラリーで商店街をめぐってもらったり、おばけ屋敷は大人用・子供用に分けて小さなお子さんでも楽しめるようにしました。他にも駅前のコインパーキングを貸し切って「おばけプロレス」や、極めつきは【ゾンビ100体VSヒーロー100人】の対決映画を撮影したり(笑)
――詰め込みますね~(笑)
吉澤)ほんとに大勢の方に来場していただいて、ようやくおばけ屋敷のある町って認められたなって感じましたね。町全体で楽しめるおばけのお祭りを成功させることができて、町としてもとしても大きな一歩だっと思います。地域住民のみなさん全員に納得してもらったかどうかは分かりませんが、理解を深めながら毎年やりたいですね。
――方南町にとどまらずいろんな地域でやれそうですね。
吉澤)今までも鹿島サッカースタジアムでは「鹿島ゾンビスタジアム」をやらせてもらいましたし、実は花園ラグビー場でもホラーイベントやります!しばらくやれなかったスタジアムクラスの最恐ホラーイベント、大規模な人数で一斉に恐怖体験するってなかなか無いですしお客さんの一体感も素晴らしいんですよ!イベント後もみなさん近隣のお店で打ち上げなんかやってもらえたらそれこそ地域が盛り上がると思います!ぜひご参加ください!
――やりたいことをやってるようでいて、町おこしまで考えてらっしゃるのがほんと素晴らしいと思います!本日はありがとうございました!
(事務所を出て)
――あ、端っこのデスクの方にお騒がせしてすみませんでしたとお伝えください。
吉澤)いえ、今日僕1人ですよ・・・
――え・・・
立ち尽くすおじさん二人。外はいつの間にか雨が降っておりました。おばけ屋敷のある町「方南町」、ひょっとしたら皆さんにも不思議な体験が待ってるかも・・・。
※「オバケン ゾンビキャンプ」
静岡県の廃キャンプ場「へんな村」で行われる宿泊型のホラーイベント。2014年にスタ―トし過去12回平均3万円という高価格帯にも関わらず全てソールドアウト。計1,000名以上がゾンビキャンプを体験している。
<イベント情報>
この秋、大阪にて"異色"のホラーイベント「花園怪奇スタジアム」開催!
【名称】花園怪奇スタジアム
https://obaken-event.wixsite.com/hanazono-kaiki
【日時】2022.10.1[土], 10.2[日]
14:00スタート / 16:00スタート / 18:00スタート
1公演につき定員300名, 約80分の体験時間となります。
本イベントは各日3公演の全6公演開催です。
【場所】大阪府東大阪市花園ラグビー場
〒578-0923 東大阪市松原南1丁目1-1
(聞き手:スレンダー川口 https://twitter.com/slender_kg)