北朝鮮の思うがままの世界 この状況をいかに打開していくか
平昌オリンピックが開幕したが、北朝鮮のアイスホッケー選手が韓国との合同チームを組み、応援団が韓国入りした話題で一色のオリンピックと化してしまった。「オリンピックは政治とは関係がない」この言葉はどこに行ってしまったのか、と思うほどの政治的なオリンピックだ。北朝鮮と韓国。この小さな朝鮮半島に振り回される国際社会は今後、どのような打開策を講じるべきだろうか。
韓国が現実に返った時がターニングポイント
オリンピック開会中は基本的に北朝鮮も静観しているだろう。選手やいわゆる「美女応援団」も参加させたオリンピックであること、その功績を残した「偉大な将軍様」が北朝鮮の歴史教科書に載るであろうから(皮肉をたくさん込めさせてもらう)開会中に下手な真似はしないはずである。
オリンピックが閉幕後、今の雰囲気と同じような「南北融和ムード」が続くはずが無い。韓国は「オリンピック」という「夢の世界」から現実の世界に返った時にそのことに気付くだろう。目が覚めたときには、北朝鮮と中国、そして日本・米国との板ばさみに苦しむことは目に見えているからである。
上の写真は演習キーリゾルブに参加する米戦略兵器核空母のジョン・ステニス
2月の初め、つまりオリンピックの開幕直前に北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は釘を刺していた。米韓が平昌冬季五輪後に軍事演習を実施すれば、北朝鮮は「静観」しないと、国連に威嚇していたのである。この軍事演習はご存知のように、オリンピック期間中は軍事演習を実施しないと米韓で合意した演習のことだ。
米国はこの米韓合同軍事演習「キーリゾルブ(KR)」「フォールイーグル(FE)」について、パラリンピック終了直後に再開する意向を繰り返し表明している。北朝鮮と軍事的に向き合っているのは韓国ではなく米国である。北朝鮮もそのことは自覚しているため、韓国ではなく、米国に直接メッセージを送るためにわざわざ国連に威嚇するのである。韓国は目を覚ましたら冷や汗しか出ないだろう。
北朝鮮の制裁破りはお手の物
それでも北朝鮮はあらゆる手段を使い、米国との戦争を回避し、うまく生き残る手段を見つけては北朝鮮国民を犠牲にしながら将軍様だけ太り続けるのだろう。
今では北朝鮮への監視が強くなっているので様々なところで北朝鮮の「悪事」が目立つようになってきた。誤解しないように釘を刺しておくが、北朝鮮の悪事は今まで「バレていなかっただけ」である。
例えば、ざっと挙げるだけで以下のようなことがあった。
・2017年1月から9月にかけて、国連の制裁を逃れて石炭や鉄、鉄鋼などを輸出し、2億ドル(約220億円)近い収入を得ていたこと
・国連安保理の専門家パネルは北朝鮮は「制裁決議で禁じられたほぼ全ての商品の輸出を継続していた」と報告
・在ベルリン大使館を通じ、核兵器やミサイル開発に必要な機材や技術を調達
・北朝鮮タンカーとベリーズ船籍のタンカーが東シナ海の公海上で横付け、瀬取りを行っていた
以上のことはほんの一部に過ぎない。したたかと言えばしたたかもしれないが、こうでもしないと生き残っていけない証拠である。制裁の意味の無さが目立つ結果になってしまっている。核開発・弾道ミサイル開発を止めさせるために制裁を行っていることは納得だが、こうして他国の利益を保証するのなら「制裁破り」も一部のビジネスとして成功するのだろう。
北朝鮮を信じるな、断固たる姿勢で臨むべき
北朝鮮は強行的な手段に出ることもあれば、一転して融和路線を取り、対話したがることもある。その手法は中東で活動するテロリストと同じである。テロ攻撃を繰り返すと思いきや一転して和平に持ち込んだりする手法だ。米国に言わせれば北朝鮮も「テロ国家」であることを忘れてはならない。
北朝鮮の「偉大な将軍様」(ここも大いに皮肉を込めさせてもらう)金委員長は選手団と応援団を受け入れた韓国に対して感謝しているらしい。「朝鮮民主主義人民共和国の代表団をとりわけ優先的に受け入れてくれた南側」の取り組みに感銘を受け、「感謝の意を述べた」らしいのだ。また、「和解と対話の温かな空気をさらに活発にする」ことが重要だと指摘し、関係改善に向けて「重要な指示」と「具体的な方法」を示したという。(引用:BBC http://www.bbc.com/japanese/43041091)
なんとも気持ちの悪いことである。そんなことは絶対に本心ではないだろう、というのが大多数の意見であろう。これをまとも信じる人はあまりいないだろうが、残念ながら韓国の大統領は喜んでいるに違いない。まだ「夢の中」だからである。
幸いに日本と米国はしっかりと連携し、北朝鮮との戦いを現実に向き合っている。ペンス副大統領は、「米国は北朝鮮と対話を行う用意があるが、北朝鮮の核放棄が条件になる」と明言し、さらに金正恩氏の妹の金与正氏と会話しなかったことについては、「独裁者の妹であるだけでなく、扇動活動の主導者でもある人物を容認したり注意を向けたりすることは、米国として適切ではないと考えた」と痛烈に批判した。
安倍首相も米国との連携を軸に、断固たる姿勢を示している。トランプ大統領との電話会談の後の記者会見にて、「今、この瞬間も北朝鮮は核・ミサイル開発を続けている。この現実を直視しなければなりません。対話のための対話では意味がありません。日本も米国も完全かつ検証可能、そして不可逆的な非核化を前提としない限り、意味ある対話はできないと考えています。そして、北朝鮮の側から対話を求めてくるよう、北朝鮮に対して最大限の圧力をかけ続けていく。こうした点でトランプ大統領と完全に一致いたしました」と述べた。
日本はこの路線で当面は間違いないと思う。韓国の夢が覚めたとき、朝鮮半島は再び緊張に包まれるのは必至の情勢だ。その時に備えることが先決で、現実を直視している日米は連携を密にして、対北朝鮮に向き合うべきだろう。それに乗り遅れる韓国はもう放っておけばいいのだから。
JIL編集長・Mitsuteru
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