第07回 リライトを書く
リライトを書く
いよいよ実践です。むかし話やイソップなどの原話を自分なりに作りかえてみることをお勧めします。始めと終わりだけを原話のままで、中間をアレンジすることを「リライト」といいます。
「よくばりな犬」
ある日、肉をくわえた犬があるいていました。すると、カラスがやってきていいました。
「おいしそうな肉ですね」
「おまえなんかに、わけてやらないぞ」
犬は、するどいキバをチラリとみせながらいいました。
「とんでもない、あなたの肉をちょうだいしようなんて。わたしはあなたをそんけいしているんですよ。あなたほど、ゆうかんな犬はいませんからねえ」
カラスにいわれて、犬はまんざらでもありません。
「でも……わたしはさきほど、もっと大きな肉をくわえた犬を見かけましたよ」
「なんだと……」
犬はおもわず立ちどまりました。
「ほんとうか?」
「ほんとうですとも。このさきの、大きなカシの木を左にまがったところにある川のそばに行ってごらんなさい」
犬は、自分がくわえている肉よりももっと大きな肉がほしくて、カラスのいわれたとおりの道をすすんでいきました。
犬は大きなカシの木にたどりつきました。
カシの木を左にまがっていくと、丸木橋がみえました。
「肉をくわえた犬はどこだ?」
丸木橋をわたりばがら、ふと下を見ると、川面に自分よりも大きな肉をくわえている犬を見つけました。
(ようし、うばってやる)
犬はひくい声でいうなりながら、川面に映った犬をにらみつけました。
「ウー、ウー、ワン!」
犬がいきおいよく吠えたので、くわえた肉が、ポチャン――
落ちてしまった肉がゆれながら沈みかけました。ふいにカラスがあらわれて、ひょいと肉をくわえると、どこかにどんでいきました。
(立原えりか童話塾課題作品より)
むかしの作品なので、削除と訂正をしました。この原話は「欲ばるな、欲ばると肉を落とす」という単純な教訓ではありません。もっと深いものです。肉は愛の象徴で、過去の愛や栄光に振りむかずに、新しい愛をつかんだらそれだけに集中しなさいという忠告でもあります。好きな名作童話を八百字以内で書いてみて下さい。
浜尾