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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

南北戦争7-無条件降伏のグラント

2022.09.02 11:12

南軍勝利で、リンカーンは北軍再編まで時間稼ぎをせざるを得ず、奴隷制のことを口に出さなくなる。批判されたとき「奴隷を一人も自由にせず連邦を救えるなら私はそうする」とまで語るのだ。実際北部にも奴隷制を維持している州があり、南部は「神よりもケンタッキー州を味方につけろ」と揶揄した。

そのケンタッキー州西部に准将がやってくる。その名こそやがて北軍に勝利をもたらすユリシーズ・グラントである。彼は河川を使った水陸両面作戦を考案する。ちょうど北軍は、「アナコンダ作戦」という南部海岸からミシシッピー川までの長大すぎる海河封鎖計画をつくっていた。

1862年2月6日、ケンタッキー州のすぐ南のテネシー州、テネシー川沿いのヘンリー要塞に攻撃をかけた。なんとヘンリー砦は、陸軍の進軍を待たず、艦船砲撃だけであっさり降伏した。続いて北軍はその東のカンバーランド川流域のドネルトン要塞に攻撃をかける。

この要塞は堅固で、要塞からの砲撃で艦船は後退を余儀なくされた。南軍は北軍の包囲を突破しようと試みて激戦になるが、グラントがそれを許さない。要塞の中では悲観論が支配するようになり、2月16日に無条件降伏した。この成功で、北軍は南軍の河川補給を遮断し、グラントは「無条件降伏のグランド」と呼ばれる。